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穴の中の履歴書(ショートショートnote杯)

私は三人の履歴書を庭先に置いた。庭の蟻達は巣穴からぞろぞろと這い出てくる。

私がプロデュースするアイドルオーディションも遂に三人まで絞り込んだ。ここから誰を選ぶかで事務所の未来、そして私の未来が決まると言っても良い。

蟻達は三枚の履歴書を這い回り、経歴や趣味などの文字に群がり始めた。最初に蟻が集まったのは『男性と付き合った事がありません』の文字だった。確かあの子は清純そうだったが、あれは嘘だったか。甘い言葉には気をつけなければならない。そして『苺の国から来ました』『プロデューサーの事を尊敬してます』『死に物狂いで頑張ります』などの文字はどんどん蟻達に巣穴へ運ばれていった。しばらくすると三枚のうち二枚の履歴書は真っ白になっていた。

しかし一枚だけ履歴書に文字が残った。私はその子に『これからの人生を私に預けて欲しい、必ず責任を取る』という熱い想いの手紙を書いた。

書き終わった手紙に大量の蟻が群がったが、慌てて払いのけた。

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