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"The LEPLI" ARCHIVE 97/ 『ひらかわ版”雑感、東コレ’13'14A/W/”Conny Groenewegen”版 』

文責/平川武治:
初稿/2013年3月18日:

 今回は東京までわざわざやってきて、東京のコレクションに参加した外国人デザイナーの一人について論じよう。

 その主人公は”Conny Groenewegen”である。
失礼だが、パリでも知らなかったデザイナーだ。
 そして、その内容は残念ながら、見せて頂いたショーからは未だ、
助走中のデザイナーレベルであるが、
典型的な、”ダッチ・クラフトデザイナー”タイプだ。 

 オランダは”モンドリアンファウンデーション”というのがあり、
彼女のような、芸術やデザイン、クラフトそして建築の若い人たちを
バックアップする国家構造がある。
 
 彼女の一方の主翼が”テキスタイル作家”であるための
クラフトマンが持ち得る重さがあり、
もう一方の主翼の”ファッションデザイナー”のバランスを崩しがちである。
そして、この二つ合わせると、
典型的な”ダッチスタイル”のデザイナーでもある。

 この手のデザイナーは同じオランダでも
V&Rたちをはじめとする”6人組”生み出たした
“Arnhem"系とは対称に位置する、
寧ろ,クラッシックで地味なタイプである。

 プロファイルに出身学校が明記されていなかったので本人に聞いたが、
案の定”ロッテルダム”の工芸性が強い学校の出身である。
ここには日本人も時折入学している学校でもある。

 しかし、工芸性が強いこの國の、この系列のデザイナーたちが憧れ、
創成される産業工業的背景が此の国には未だ強く存在している。
それは伝統を引き継ぐクラフトマンマインドたちの
紡織やフェルト工房が利用出来るとこであり
又、良き先輩作家、”Claudy Jongstra”たちが活躍しているからである。
 
 現実の日本ファッションデザイナー志望の輩たちは、
残念ながらこの構造が激少化している。
多くが、「新・自由主義者」の自分たちの未熟なる人間性と世界観で
プレゼンテーションする世界。
結果、不勉強で浅学、変わらず、”デザイナーぶる”事に煩わされ、
巴里のトレンドを追随する輩となる。
又、その方向性を日本メディアや業界が消費社会目線のみで
カッコいいと持ち上げて来た
ここ20年来の、”偏った白人コンプレックス”の現状結果であろう。
 
 余談になるが、彼女、Connyの前を走っているのが、
”Iris van Herpen”だ。
僕はこの間、巴里で再会し少し、インタビューをして来た。
(このインタビューは後日、報告をする。)
 彼女、Irisは同じダッチ出身のクチュールデザイナーである。
先シーズン、1月の巴里オートクチュールコレクションで
アメリカの3Dプリンター会社とソフトCD会社の協賛コラボレーションで、
彼らたちの製品ソフトと”3D-PRINTERE"を使って
完全なるコスチュームを構成創造し、発表したデザイナーだ。

 Irisはアーネム工科大を卒業。僕はこの時、審査委員をさせて頂いた。
卒業後、Claudy Jongstraのところでインターンシップその後、
ロンドンの”Lee Alexander McQUEEN”のところでも
インターンシップを行い、彼の元で”3Dデザイン”を学び、
オランダの伝統的工芸技術を使った皮素材を中心に製作し、
独立後は既に、’10年来から”3D−デザイン”に、
世界を先駆けてチャレンジしている
今後、注目すべき若き、クリエーターの一人である。

 なぜならば、彼女、Irisは、以前から僕が提唱している
『縫わないでいい衣服』の時代への先駆けを今後への新しさと考え、
自分の世界観として実戦しているからである。

 このIrisとConnyの共通点が面白い。
それは、共に、自分たちの國の良き時代からの
伝統あるクラフトマンシップが生き続く世界へ
先ず、興味を持って技術とそこでしか身に付かない”美意識”を学び、
それらを自分たちのクリエーションの根幹として
それぞれの世界観を築きながら、
それぞれが望む方法で社会へコミットしている事である。
 即ち、伝統工芸技術や工房システムや職人とクラフトマンシップを
交流させながらそして、その世界を守りながら
彼女たちが求める新たな世界観を独立させている事である。

 この二人のダッチスタイルの女性デザイナーたちに共感出来る事は、
Connyも発言していた事であるが、
「伝統工芸の手法を学び、コンピュータリングによるソフトウエアーリングに委ねる事で出来上がる世界そのモノに興味がある。」と云う事である。
 ”真の新しさ”とは、この覚悟ある世界観からしか生まれない。
 
 極論すれば、『20世紀のハードウエアーと、
21世紀のコンピューターソフトウエアー
そして、持ち得たそれぞれのヒューマンソフトウエアーとの
コラボレーションによるディレクションである。』

 ここに本来のデザインの役割が有り、それによって時代や生活環境、
生活者たちへの新たな生活様式を豊かにする事が
デザイナーと云う役割の仕事である。

 ここで、日本のデザイン教育者たちの遅れた考えを修正統べきである。
表層の持ち得た教養も才能も低レベルな個人の夢を
成就させるだけでは國のためには
もう、決してならない事に気が付くべきである。
 この様な豊かさを知ってしまった世代と時代への
新たな眼差しを持った時代観ある教育が
日本の教育現場では遅れ過ぎた。
 
 それ以外はファションの世界も
今後は、コンシューマーデカダンスに委ねた
“アーカイブから只、モノのバリエーション”の世界でしかなくなる。
 しかし、今の若者は作り手もメディア側もほとんど、
“アーカイブス”を知らなすぎる。

 彼女、Connyのショーから何を読むか?
それなりのお金を使ってのこの手の試みであるからには、
僕たちの國への現実に何か本質的なる根幹を読み取るべきである。
 それぞれの國が持ち得た産業構造と
そのフローのスローさが一つの”差異”であり
そこに何か今後、大切にしなければならない
僕たちが嘗てに、捨てて来てしまった大事な産業構造への
インフラの見直しと実行が考えられれば、
今回、東コレでの彼女のショーが為された目的があろう。
 
 興味を持ったアイテムは、
ショーの半ばに出て来た”ウールニットレギンズ”。
編立てを前後で変える事で装飾にしたデザインのレギンズは好きだった。
このタイプの発想をもっと広げ、
”ボディーウエアー”を熟考してマスターピース化すれば
新たな日常着としての”キュアーアイテム/CURE ITEMS”への
提案になり、インダストリアル化する事で
社会へコミット出来るだろう。

文責/平川武治。
初稿/初稿/2013年3月18日。

 参考/
Claudy Jongstraのサイト:
https://en.wikipedia.org/wiki/Claudy_Jongstra

Iris van Herpenのサイト:
http://www.irisvanherpen.com/

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