分岐の先は違う人生なのか、また同じ人生に戻るのか
誰しも過去を振り返って「あの時、別の行動をしてたらどうなってたんだろう」と考えることはあると思う。
そこまで大きなことでなくても「あの時、あの返事を返してたら」とか「あのカバンを拾ってたら」とか「足を滑らせてたら」とか、そういうちょっとした分岐の先のこと。
私もいくつかある。
そのうちのひとつは「あの金パクってたらどうなってたんだろう」である。
10年以上前に大阪の天王寺から出ている路面電車に1人で乗っていた時のこと。
車内はガラガラで、目の前に完全に泥酔したおじさんが寝ていた。
ふと見ると、おじさんのズボンの後ろポケットから札束が漏れ出していた。
むき出しの1万円札が、多分3~40枚くらい。
それで私は、おじさんに声をかけて起こし「お金が出てますよ」と言ったんだけども、おじさんはなかなか目を覚まさなかった。
しばらくして目を覚ましたおじさんは、不明瞭に返事をして、札束をおしりのポケットに押し込んで、また寝た。
今も「あれ、完全にパクれてたよな…」と思う。
パクってたらどうなってたんだろう。
チンチン電車だから車内にカメラもないし、現金だから証拠もないだろうし、すぐ降りたら捕まらなかったんじゃないかな。
でもなぁ…それ分かってても怖くてパクらなかったんだろうな私は。
もうひとつは、ライブの帰りに声掛けてきたエラい金持ちそうな爺さんのこと。
その日は難波でライブがあって、終わってから1人で「ライブ最高やったわぁ…」と思いながらフラフラ帰っていた。
すると、明らかに身なりの良い小柄なお爺さんに声をかけられた。
最初、道に迷ったのかと思ったけど、そうではなくナンパだった。
お爺さんは、小さめのオヒョイさんみたいな品のいい人で、歩き続ける私の前に回って必死に「お願い!ほんとに!」とか「アパレル関係の人かな?アパレル?」とか「少しだけお話しませんか?」とか言ってて、その合間に「すごいねぇ!すごいねぇ!」とずっと言っていた。
私の顔を見たまま斜め歩きでめちゃくちゃ長距離ついてくるので「転ぶんじゃないか」と思った。
進行方向見ないまま、信号も渡ってた。
で、よく見ると、我々を心配そうに見守るガタイのいいスーツの男性が2人、遠巻きについてきていた。
「このお爺さん、こんな強そうなの2人も連れてるんだ…え、怖っわ」と思った。
でまぁ、普通に危機管理能力あるしライブの余韻に浸りたかったのでそのまま帰ったわけだけども、あとから考えると、多分あのお爺さんめちゃくちゃお金持ちだったんだろうな…て。
あのお金持ちの爺さんについて行ってたら、どうなってたんだろう。
まず私は間違いなくお妾さんにはならないだろうけど、間違いなく良い店で良いものは頂けたんだろうな。
なんか面白い話が聞けたりしたんだろうか。
凄いチャンスが掴めたりしたかもしれない。
それとも、私の想像できないような怖いことになったんだろうか。
今また同じことが起きたら、金は盗まないけど金持ちの爺さんとは飲みに行くかもなぁ…。
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