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写し描きーー「奇跡の人間」ではないのですね。現在地。

今日は遅起きをして、高野文子さんの漫画『黄色い本』を開いた。満を辞して写し描き。

『黄色い本』の中の「マヨネーズ」という読み切りが大好き。トーンの濃い部分から黒、緑、黄色と変化させてみた。

昼過ぎに歯医者さんへ小一時間行った以外は家にいて、休みながらほとんど写し描きをしていた。
写し描きしてみて思ったことを少し羅列してみる。

◉線の太さ、どのペンを使うか迷う。
〈ピグマ〉という水性ペンの0.03、0.05、0.1、1、BR(ブラシ)の5種類のペンをどう使い分けるか少し考える時があった。2ページくらい描いて、細いペンの方が力を載せて描ける(太いと線がプルプルした)と思ったし、その分、手の動作の自由度が上がる感じがした。

◉ゆっくり描くか、サッと描くか
写し描きだから丁寧に写したいんだけど、高野さんのラフな感じの線をゆっくりなぞるのはちょっと違うものになってしまうなぁと悩ましく感じた。

◉なにが正解か、間違いか
「丁寧に写したい」というような感覚は、「この作業を(意味のある)ものにしたい」という思いに変換されているような気が途中でした。「丁寧でなければ意味がない」と自分の中の誰かが私に向かって言っている気がして、それが誰なのか、なんとなく漫画界の重鎮のイメージだったけど、いや漫画のことなんか全く、もうなんっっっにも知らない私が浮かべる重鎮って何やねんと思った。「丁寧でなければ意味がない」とか、「何か掴まなければ」とかいつの間にか思っているような気がして、「なぞる」より一段自分の側にペンを引き寄せて、あくまでも自分で「描く」楽しさ気持ちよさを感じていられる範囲でやりたいと思った。
わりとすぐ、そういう思考に突入していることに気づいて、結構、致命的だと思った。

かれこれ10年、男性社員の中に一人オンナ、という職場で働いてきた。
今年の春に9年勤めたその職場を辞めて他府県に引っ越したというのに、凝りもせずまた同じ「初の女性社員」という職場にいる。
私が父子家庭で育ったことが関係するのか、男性社会というものがそうさせるのか、今の私には言語化できないけど、窮屈さを抱えている。

私が自由になることができれば、そのとき周りの人もまた自由なのだと言い聞かせて、振る舞いを模索しながら働いているのだけど、色々とキツさもあるし、模索がピークを迎えているようにも思う。毎日なにかを得ては試すその手さぐりが、「限界」を知るところまで来ているような気がする。ついに「私の世界」が一つの完結を遂げて、一段外から俯瞰できるようなところまで来ているーー、そうだといいなという感じである。

今はまだ「自転車操業」というところ。
「まわりの自由のために」なんて思っていた当初(夏)からすれば、今はもう私のためでしかない。
私が探しているものが終わりを見せるというのは、私の行為が私の心のためでしかないのだということを、分かり始めているということなのかもしれないと、今、思った。それでいいのだと、私はそろそろ気づくのかもしれない。

「自転車操業」というのは、その日得たヒントから翌日の振る舞いを決めるというその作業の追いつかなさを指している。
夏には、不自由に見える上司(男)に自由を知らせたいと奮闘していたのだった。そうして、「まわりを自由にしたい」という私の理想のために私は他者に働きかけていた。きっと実を結んでみんなが働きやすくなるんだと信じた。
そのうち、その日の言動を日記に振り返り、感じたことをメモして過ごすなど、自分と向き合うことを余儀なくされ、「理想」と「現実」の隙間がなくなってきたように思う。

理想というのはクッション(言い訳)のようなもので、それがどんどん無くなってくると、残るのはただこの身一つの現実で、この身がいかに無力かを突きつけられる。

盾にするものがなく、一日の終わりに振り返って残るのは自分のか細さ。「この不自由な上司から見ると私はただのお荷物」そういう自分なんだと少しずつ思うようになってきた。それを認めたくなくて、ずっと模索していたんだ。お荷物ではなく奇跡の人間なんだと言い聞かせて。それを手放してしまえば私の頑張りは上司からは見えなくなると思ったーー。これが現実なのか。

そのか細い、至らない身のまま、装備するものがないまま、起きて働きに行かねばならない。それを「自転車操業」と感じている。なんの方針も立っておらず明日がとても怖いけど、底をついても今の状態があるんだと思う。今が底辺なんだと思うと、そうかと思う。「あなたを自由にする」という大義名分を手放したということは、私は自分で自分の不自由を手放すしかないということだと思う。自分を責めることをやめなければならない。怖いけど、泣きたいけど、それが私の現在地かと思う。

長々と書いてしまった。
けど、いい時間になった。



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