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新橋アスティル

通勤経路だった事もあって都内のサウナでは一番愛用している。洒落腐ったサウナが増加している昨今であるが、オールドスクールな癒しを与える丁度良さが本当に心地良い。

特にサウナ室の何分かに一回オートでロウリュが行われるイベントは非常に好みである。電気が消え、サウナストーブ部分だけがUFOのように点滅し、神聖な儀式の様に執り行われるあの幻想的な空間は立ち合いたくなってしまう。テレビもなくオルゴール調のJPOPしか流れないストロングスタイルも誇り高いものを感じる。

そして水風呂のあの壁面に流れる滝のような冷水は非常に心地良く、深さの塩梅も丁度いい。良いサウナというのは水風呂で全てが決まる。サウナなんて水風呂のための壮大なフリでしかない。如何に心拍数を乱高下させ、脳を欺き生存する事に対する脳汁を出すかの勝負である。

また争奪戦が必死である2隻しかないラグジュアリーなテルマベッドも素晴らしい。あそこに鎮座出来るだけで浴場を制覇するような圧倒的な心地良さがある。しかし、その席を狙う多くの羨望の眼差しは若干ノイズになる事もあり、結局は入り口横のシャワー室との間に存在するビアガーデンの椅子が実は1番の勝利の座席であると個人的には思っている。

「カジュアル」と称される館内着もオシャレとかダサいを超越した、楽に過ごす目的でしか考えられてないところも素敵過ぎる。あの重みがほぼない緑の短パンは全ての人間を休息へと導いていくし、上着の足拭きマットみたいな素材も相まって、ディズニーランドでコスプレチックなカチューシャを付ける女性の気持ちが理解出来てしまう。我々はアスティルにサウナのコスプレをしに来ているのだ。空間に調和するというのは非常に心地よい連帯感を産む。

個人的に最高に好きなのが喫煙所がフローリングになっていて、座ってタバコを吸えるとこである。サウナ上がりにアルコールを流し込み壁に寄りかかり、あぐらを掻きながら喫煙できる空間をここ以外知らない。喫煙所として圧倒的に向かない床材を用いる尖りの姿勢も堪らない。

コロナ禍以前に宿泊するとボクサーブリーフと靴下を貰えるというのも地味な魅力であった。我が家にはアスティル産のパンツが数枚在庫としてレギュラーメンバー入りしている。パンツというのは増えて損する事は全くないし、茶色の足袋のようなペラい靴下は部屋の隅やカバンの奥底から発掘されるたびにアスティルの事を思い出してエモくなる。

風呂も通常・ミルキーバス・水風呂の3種類しかない王道であり、捻ることなく機能としての水行に勤めることができるし、「冷やしシャンプー」という髪質を犠牲に爽快感を得れる頭皮盤クラックのようなぶっ飛びアイテムや、パーティーグッズみたいなシェービングクリームのファンシーなムースもお菓子の世界みたいで素敵である。宿泊して朝風呂からの出社という行事は月に一回ぐらいはしたくなる。ビジホに無意味に泊まる以上のワクワクが補給できる都内でも有数のサウナ施設である。

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