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丹沢・葛葉川本谷(セルフレスキュー訓練)

所属山岳会では、年2回春と秋にセルフレスキュー訓練を実施している。今春は3月17日(日)に表丹沢での訓練となったため、早朝の小田急秦野駅に降り立った。駅からは近くに用事があったという会員の車に便乗して、葛葉の泉へと向かう。

先ずは足慣らし-板立の滝まで葛葉川本谷を遡行する

葛葉の泉前で身支度を整え、全体ブリーフィングの後2班に分かれて葛葉の泉を出発。まずは葛葉川本谷を遡行する。直近では2020年の3月に体験山行の希望者を連れて三ノ塔まで遡行したが、それ以来の葛葉川である。首都圏では初心者向けの沢として人気は高いが、ヤマビルの生息域なので暖かい時期には行きたくない。訓練実施日も暖かくなる予報で戦々恐々で参加したが、結果的に気温はさほど上がらずヒルの被害を受けた参加者はいなかった模様。

ぞろぞろと下流部の小滝を登る
他班が途中の河原で行っていた徒手搬送の実習を横目に先へと進む
せっせと滝を越えて上流へ

1時間ほど足慣らしとウォーミング・アップを兼ねての遡行の後、板立ノ滝と呼ばれる8mほどの滝の下に到着。
リーダーがこの辺りで訓練を実施すると宣言したので、一旦荷物を降ろす。

板立ノ滝にとうちゃこ。さあ、訓練本番の始まりだ。

リーダーレスキュー~セルフブレーキおよびディスタンスブレーキ

実習は滝の水流右の岩壁で行ってもよかったが、初級者の多い班でもあったため、安全を期して滝の少し下流の斜面を使うこととした。

まず、ロープワークの復習を手早く行う。ロープの扱いは初級者もだいぶ手馴れてきたようだ。レスキュー訓練では多用するラビット・ノットなども確認して、本日の"実技講習")に取り入れてみた。

続いて、リーダーレスキューの流れを実地に行う。リーダーがトップで登攀中に行動不能(滑落・落石等)となったため、セカンドがリーダーを下まで降ろすという想定である。
セカンドはビレイ態勢から自己脱出をした後、上部に支点を取って懸垂下降で要救助者のところまで降り、振り分け救助システムによって開始点まで要救助者と一緒に下降するという流れが基本だ。セルフブレーキの場合は下降のコントロールを救助者自身が行うので、理屈の上では2人でも何とか救助が行えるシステムである。これを救助者・要救助者の役割を全員で交代して実施する。
今回は介助懸垂での訓練としたが、要救助者を背負って下降する練習もした方がいいので、次回以降には是非初級者も体験してほしいところだ。

滑落して行動不能デス
しっかりせよ抱き起して、斜面下の河原まで運び降ろす。

次のディスタンスブレーキだが、こちらは下降のコントロールを第三者が行う。そのため実施には2名以上の救助要員が必要だ。
ひとりが介助懸垂あるいは背負い懸垂で要救助者を直接降ろし、もうひとりが要救助者と救助者が繋がれたロープを操作して二人を安全に下降させる、という役割分担になる。こちらのシステムも、全員で役割を交代して実習した。

想定が限定的な訓練ではあるが、基本を確実に身に着けて、あとはいかに現場で応用できるかがキモなので、基本的な動きを確実に身に着けることは重要だ。

引き上げシステム(ライジング・システム)

午後からは引き上げシステムの確認・実習を行う。
要救助者を引き上げる必要がある場合や荷揚げの際に使う想定であるが、そもそも現場ではあまり使わないよね~ということもあり、ついつい流してしまいがちではある。だが、引き出しを増やすという意味でも基本的なかたちは確実に覚えることが必要である。
毎回の訓練時は、1/2、1/3を取り扱うことが多いが、今回は1/5システムの紹介が担当者よりあった。

1/2、1/3は比較的単純で覚えやすいが、1/5だとか1/6だとかは少々複雑でもあり、またいくつかのバリエーションもあるので、覚えにくく忘れやすいという感じだ。そのため、訓練の度に確認を怠らないようにしたい。

引き上げシステムは実地に構築して覚えるという過程が絶対に必要

また、同じ1/2、1/3でもカラビナのみで構築した場合と、プーリーを使った場合の違いも実際に比べて実感してもらった。

空中懸垂と登り返し

最後は、今回の担当者が空中懸垂の実習と登り返しは是非やりたいということだったので、その熱意に押されて時間もだいぶ押しているが太平橋のところで空中懸垂と登り返しを実施した。板立ノ滝から15分ほど遡ると、表丹沢林道の橋が架かっているがそこが太平橋である。

橋からの空中懸垂は訓練の際に時々やってはみるが、空中に出るまでがちょっと怖い。橋の欄干を跨ぎ越してから懸垂下降の態勢になるまで(メインロープにテンションが懸かるまで)は結構勇気が必要である。
最初にtn氏が下降。続いて、待っているとドキドキしてくるのが嫌なので、ぼくが下降したが、後続を上でサポートするため再度橋の上まで上がった。
続いて2人が無事下降し、最後に熱意ある担当者の番になるが、一番怖がっていてなかなか降りられない。欄干にシュリンゲを巻き付けてバックアップとするが、バックアップを怖がって放さないので、いつまでも降りられないんじゃないかと思ったが、最終的には何とか勇気を振り絞ったようだ。
テンションがかかってぶら下がってしまえば、制動をかけながら降りて行くだけなので全然平気なんだけどね。今回の橋は高さも7~8mだし。

橋から降りま~す!
欄干にシュリンゲを結んでバックアップを取りつつ、下降の準備をする
ぶら下がってしまえば全然怖くはないのだけれどね。

登り返しは、もう1班は4人ほどがチャレンジしていたが、ぼくらの班は時間もなかったので、橋の下でシステムのセッティングだけ確認して3mほど上がってみて終了。

登り返しのシステムを確認する

まとめ

毎回、いろいろと反省のある訓練山行だが、今回は初級会員もだいぶ慣れてきているのでスムーズに訓練を進めることができたように思う。
個人的に苦手なところや不確実なところは、今後山行を繰り返す中で確実にしていくことが安全な山行に繋がっていくものと考えている。


  • 日程:2024年3月17日(日)

  • 天候:曇のち晴

  • メンバー:wr(L)、tn(SL)、hm、it、tapiola

  • 地形図:秦野

  • コースタイム:葛葉の泉(9:00)-板立の滝(10:05/14:55)-大平橋(15:10/16:48)-葛葉の泉(17:13)

※今回は訓練山行なので、特に遡行図は取っていません。

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