見出し画像

一次救命処置(BLS:Basic Life Support)


はじめに

皆様は実際に蘇生の現場に遭遇したことはあるでしょうか?
職場や自動車学校などで講習を受けた方も多いと思います。医療従事者では新年度の春先に講習会を行うところが多いです。
心臓が原因となる心停止は令和4年度で約2万8000人であり、そのうち市民による心肺蘇生が行われたのは1万7000人ほどです。AEDを使用した傷病者数はより少なく1300人でした(総務省「令和5年版 救急・救助の現況」より)。
市民による心肺蘇生は傷病者の救命率に寄与します。施行しなかった場合の1か月生存率は6.6%であったのに対して、施行した場合では12.8%と約2倍です。AED実施した場合には50.3%とさらに高くなります。
今回は心肺蘇生におけるポイントをまとめてみました。

安全の確保・反応の確認

目の前で倒れたひとがいたら安全を確保します。
倒れた場所が危険な場所(交通のある道路など)にいた場合は、まず安全な場所に移動します。
肩などをたたいて呼びかけをし、反応がなければここで応援要請します。

応援要請

応援要請では4つのことを要請します
119番通報(救急要請)、AED、ほかの協力者です。
この際に服の特徴を言いながら声掛けをするとよいです。
また最後に要請を完遂したら戻ってくるように言いましょう。
119番通報してから救急車が到着するまでの平均時間は10分ほどといわれています。一秒でも早く要請しましょう。
AEDはコンビニや大型の商業施設、公共施設にあることが多いです。
AEDマップというアプリもありますので、緊急時には参考になります(日本全国AEDマップ:https://aedm.jp/)。
救急車が来る10分間、胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ)を行うのはかなりの負担がかかります。疲労は胸骨圧迫の質も低下させるため、複数のひとで行うのがおすすめです。

東京駅周辺 AEDマップより

もし一人しかいない状況では、119番通報、そのまま通信司令員の指示に従い心肺蘇生を行います。
近年のスマートフォンではスピーカー機能がついており、通話しながらの蘇生が可能です。

呼吸の確認

応援要請後に呼吸の確認をします。
胸部と腹部の動きを10秒ほど確認します。普段と違う呼吸であれば心停止と判断してください。
あえぐような呼吸の場合は死戦期呼吸の場合があります。迷ったら胸骨圧迫を開始してください。
脈の確認は難しいため、医療従事者でなければ行う必要はありません。行う場合も呼吸とともに確認し10秒以内で判断します。

胸骨圧迫

胸骨圧迫は「胸の真ん中を強く、速く、絶え間なく、圧迫解除を忘れない」、この4つのポイントを押さえて行います。
強く:5-6㎝ほど深く押します。通常のかたであれば6cmを超えて押すことはできませんので、かなりの力が必要と思ってもらってよいです。
速く:100-120回/分のテンポで続けます。私はポニョのテーマが120回/分ほどといわれるのでそのテンポを超えないくらいと教えています。
絶え間なく:中断時間を最小に10秒は絶対あけないように続けます。
圧迫解除:胸骨圧迫では押すのと同様に元の位置に戻すことも大事です。一回一回元の位置に戻っているか意識しましょう。

文字だけ見てもイメージをつかむのは難しいと思います。定期的に講習会に参加することをお勧めします。

AED

AEDを持ってきたらまず電源をつけます。
あとはAEDが指示してくれますので、そのまま従いましょう。
パッドは傷病者の右肩と左側腹部に貼ります。地肌に直接貼ります。
このときに多くの人がいれば見えないように壁をつくるとよいです(傷病者への配慮のため)。
金属があったら外すようにします。電気ショックをかけることがあるからです。また海や川から救出した場合には体をふくとよいです。
装着で来たらAEDが自動で心電図を解析して、ショックが必要な場合には指示がでます。
ショックする際にはほかの人が触れていないことを確認しボタンを押します。
ショックは一回きりではなく何度も行うこともあり、またAEDの解析の記録が後程参考になるのでつけたままでいましょう。

救急隊が来たら

到着したら心肺蘇生を交代します。以下のことを救急隊に伝えてもらえると非常に助かります。
・目の前で倒れたか、すでに倒れていたか(+発見時の状況)
・およそ何分ほど蘇生をしていたか
・AEDは使ったか
この情報によって搬送中の治療が変わります。すぐに帰らずに教えていたきたいです。

終わりに

今回は一次救命処置、BLSについて触れました。
最初にも触れましたが、欧米に比較すると市民の蘇生率はまだ低く、救命率も悪いのが現状です。特にAEDの使用率が低いことが課題とされています。
1人でも多くのひとがBLSを知り、日々の備えておくことが救命率向上につながります。
蘇生行為を躊躇う理由に法的な問題があげられますが、蘇生行為には民事・刑事の免責が認められるとされています(こちらのHPが参考になります:https://inoti-aed.com/)。
この記事を読んで少しでも多くの人がBLSを知ってもらえれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?