見出し画像

s.u.n.d.a.y.s. #2




みどりちゃんは小さな子供たちと遊んでいる。
みどりちゃんは週に四日ほど、公園の向こうの保育園でお手伝いをしている。
それは一応仕事なのだけど、仕事ではないようなもので、みどりちゃんにとって子供たちと遊ぶことは、自分の体の延長にあるものだった。
みんながバラバラに好き勝手にしていても、それは一枚の大きな布のようになめらかな動きを作り出す。
その様子はとても自然で、まるでひとつの大きな美しい生き物のように見える。

みどりちゃんは小さい頃、とても体が弱かった。
中学生になる頃には毎日のように熱を出して寝込んでは、二階の部屋のベッドに横たわって窓から空を見ていた。
近くの小学校から子供たちが遊ぶ声が聞こえる。
ぬるくなったおでこのタオルをひっくり返しながら、熱でぼんやりした頭でよくその声を聞いていた。
窓の外にはいつだって空が、どこまでも広がっていた。
ベッドの上で寝ているみどりちゃんと世界との間には境目が無く、代わりにそこには誰も知らない安心と安全があった。

みどりちゃんの目は角度によって少しだけ緑がかって見える。
その不思議な色の目で見る世界を、みどりちゃんは大人になっても失うことはなかった。
周りの人たちに、あの子はちょっと変わっている、おかしな子だと仲間外れにされたり、意地悪をされることは時々あったけれど、そんなときはただ黙って空を見ていた。
私は、大丈夫。
だって私には、大好きなものがたくさんあるから。
本も、音楽も、花も、草木も、犬も、猫も、空も、雲も、雨も、風も、太陽も、雨も、大好きだから。
そして子供たちのことが大好きし、何より私は私のかみさまが、大好きだから。

今日も公園でみどりちゃんと子供たちは遊んでいる。
つないだ手のひらの、ぴったりとくっついた肌の、汗ばんで熱くて鬱陶しくてたまらなくいとおしい体温の、その体と体の僅かなすきまを、たかひろくんのカレーの香りがスッと通りすぎていく。






より良い表現ができるように励みます。ありがとうございます🌷