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#小説

『幕が上がる』平田オリザ

私たち二人は、いま芝居の話なら、明日の朝まででも続けられそうだ。普通の女子高生が、ファッションやアイドルの話を延々と続けられるように、他人が見たら不思議に思えるくらい会話が途切れない。私たちは演劇の話をしながらハムサンドを頬張り、ぬるくなったアイスカフェオレを飲み干し、それをゴミ箱に捨てるときもずっと話し続けていた。 こういう描写にグッとくる。『幕が上がる』は地方の高校演劇を舞台にした青春小説。劇作家であり演出家の平田オリザが書いた初めての小説です。 演劇の奥深い世界を描

『逆ソクラテス』伊坂幸太郎

久しぶりにハードカバーの本を買いました。 本のタイトルは「逆ソクラテス」。著者は伊坂幸太郎。小学生を主人公にした5編からなるアンソロジーです。 伊坂幸太郎の作品が好きです。デビュー作から読み直してみようと思い立ったのが今年の初め。「ゴールデンスランバー」まで読み終わり一段落ついてふと目についたのが新刊で発売されたばかりの「逆ソクラテス」。次に何を読もうか思案の最中だったこともあり新作に手を伸ばしました。帯に書かれたキャッチコピーに強く惹かれたからです。   敵は、先入観