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ツチガエルのように生きる

ツチガエルは栃木県では絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。水中の泥の中で越冬し、オタマも一部は同様に水中で越冬するので、1年中水がある場所でないと生きていけない。田圃から水が抜かれるようになってからは居場所を失い、どんどん数を減らしている。

我が家の池に棲みついているやつ(左上はトウキョウダルマガエル)

亡くなった親父(20代は中学の理科教師だった)に言わせると「昔は道端などにいっぱいいたけど、今は見ないねえ」だそうで、田舎に住んでいても意識していないと「見たことがない」と答える人が多いんじゃないだろうか。

昨年(2022年)、岩手県南部から関東地方、中部地方の一部(山梨・長野)までの地域にいるツチガエルは、遺伝的に他の地域のツチガエルと明らかに違っていて「ムカシツチガエル」という名前で新種発表された。
外見上はツチガエルとムカシツチガエルはほとんど同じで、区別するのは難しい。
オタマの腹面に分布する腺の数が少ないというのだが、ツチガエルのオタマの腹をしげしげと見ることなんて、普通はまずないもんねえ。

↑上図はすべて愛知教育大学サイトで公開されているプレスリリースより


↑小さなビニールプールを埋めた池(丸池)に棲みついたやつ
↑↓プランターを埋めただけの池(ミニ池)にいるやつ。右はトウキョウダルマガエル
↑これはまた別の池(への字形に掘った「ヘ池」)にいたやつ

我が家の敷地内にいるツチガエルたちはムカシツチガエルなのか?
ムカシツチガエルを新種発表した愛知教育大学島田知彦准教授らが作成した「ムカシツチガエル」の分布図を見ると、我が家は境界線の近くに位置している。

棲み分けの境界線付近でも雑種は見つかっていないというが、どうなんだろう。混在している場所もあるのではないか?
そもそも生息数が少ないので、正確な分布図を作るのは困難だと思うのだが……。

新種といっても、今まで区別していなかったツチガエルの中に実は別種がいたという発見であって、種としては他のツチガエルより古い起源をもつらしい。

我が家の周りにいるツチガエルがムカシツチガエルなのかどうかは調べようがない。
うちの子たちを捕まえてゲノム分析とかしてほしくないしね。

そもそも今まで誰も気にしなかった。ツチガエルはツチガエルだということで済んでいたのに、姿は同じでも違うのだ!ということになってしまった。
人間には「人類みな兄弟」だのLGBTだのと言ってて、他の生物は徹底的に切り刻んでゲノムレベルで分類しまくるというのも、なんだか変な話だとも思う。
国立環境研究所の「侵入生物データベース」では、北海道や伊豆諸島のツチガエルは「侵入生物」だとして、

侵入した本種による問題点は特に指摘されていないが,もし高密度に達した場合には昆虫やクモ類等の小動物に影響が及ぶと考えられる.体表の粘液には悪臭があり,カエル食のヘビ類が本種を嫌うことから,侵入先でも捕食されにくく,増殖しやすいことが考えられる.国外ではハワイ諸島に導入され定着している.

……なんて書いてる。
何が「問題点」なのかね。
「侵入先でも捕食されにくく,増殖しやすいことが考えられる」「繁殖期を中心に水辺を見回り,成体や卵塊,幼生を取り除くことが現実的」 ←って、アホちゃうか。
この場合の「侵入先」というのは北海道や伊豆諸島(大島,新島,三宅島)のことなのだが、なぜそこにわずかに生息しているツチガエルを目の仇にするのか。
心配すべきは絶滅のほうでしょうに。思考硬直の典型でしょ。
ちなみに、現在北海道にいるのがツチガエルなのかムカシツチガエルなのかは不明だが、ムカシツチガエルだとしたら、将来、本州のムカシツチガエルが絶滅して、北海道に渡った子孫だけ生き延びているという可能性も大いにある。
なんか人間って、こんなこと一生懸命やっている割に、自分たち人類のことを何も分かっていない愚かな種だと思う。

で、考えてみると、福島市で生まれ、東京都、川崎市、福島県川内村、日光市……と移住してきた私は、このムカシツチガエルの棲息域のギリギリ内側を移動していたことになる。
そんなことも含めて、これからはもっとツチガエルを大切に思おう。

で、ヤブヤンマもそうなのだが(池ではヤブヤンマのヤゴが毎年育つ)、我が家の池環境はツチガエルに向いているのかもしれない。
毎年少しずつ見る数が増えている。他のカエルは減っているのに。

で、ふと気がついた。
俺はツチガエルなのかなあ……と。

地味で目立たず、誰からも注目されない絶滅危惧種。
モリアオガエルみたいな派手な繁殖の仕方もできないし、木に登ったりすることもない。
シュレーゲルアオガエルのように美形でシュッとした外見とは対極で、「クソガエル」なんて呼ばれたりする。
アマガエルみたいに群れて大声を発し、付和雷同的に行動することもない。
すぐそばにいても地面と同化して見つけられず、存在感がまるでない。
冬はじっと泥の中で眠る。

我が家の環境がツチガエルに向いているなら、自分もツチガエルのように生きればいいのか、と。
無理してモリアオやシュレになろうとすることはない。LET IT BE.だ。
そう思ったらなんだか急に気持ちが楽になった。
気持ちが楽になって、この日はずっと滞っていた『神は成長する』の原稿も書き進めることができた。
よかったよかった。
ありがとうよ、ツッチー。

先日ポチしてみた。今日発送されたというので楽しみだわ
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北関東から東北にかけて生息するカエルの図鑑


こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。