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グローバル社会の限界と幻想

第7回ぷちぷちサミットより抜粋(6)

吾狼: 僕が分からないのは、今行われている人口削減計画というのは、対象がほとんどランダムというか、区別していないですよね。遺伝子注射にしても武力紛争にしても、優秀な人材は生き残らせるというような仕組みはなさそうです。人種も年齢層も職業も、全部平均的に間引かれていくような気がするんですが、それって雑すぎませんか?

幽大: 優秀な人材だけ残すと、自分たちの力が脅かされるからではないのかな。今の世界を彼らは操っている。一部の優秀な人間が作り出すハイテク機器や生命工学の技術を利用できている。この構成のまま、人口だけを減らせればいいということじゃろ。

イシ: なるほど、そうかもしれませんね。あとは、実験中ということではないですかね。
 遺伝子製剤注射を打った人間の中にも、わりと平気でいる人たちがいっぱいいますよね。今のところは、ですが。
 人間の身体は複雑だから、同じようなリスクを与えても生死を分ける要素は複雑に絡み合っていて簡単には計算できない。どんな条件なら生き残るのかと見ているのかもしれません。

幽大: あとは、これもまた遺伝子の淘汰なのではないかな。強い種だけ生き残っていけばいいというような。

イシ: そういう考え方もできますね。彼らは最終的には出生も死も自在にコントロールしようとしているでしょうから、人工授精や遺伝子操作を繰り返しても耐えられるような個体を残そうとしている、とも考えられますね。

吾狼: 殺すのはいつでもできるから、ですか? 怖ろしい……。

幽大: 彼らにとっては自分たち以外の人間はすべて資源であり材料にすぎないんだから、そう考えるのは自然じゃろ。農業や畜産と同じ考え方じゃな。病虫害や冷害に生き残った個体を選び出し、掛け合わせて、強い品種を作ろうとか、そういう発想だわな。

吾狼: それで穫れすぎて価値が落ちたら捨てればいい、とか……。

イシ: 特定の農薬に反応する品種を作るとか、そういうことだね。自分たちの思い通りに動く人間を増やすために、娯楽や性癖も管理しやすくする。多様性社会を謳いながら、実は根底では単純な刺激に反応するように調教する。芸術や哲学も単純化させていく。

幽大: すでにそういう世界になってきておるな。
 しかし、そう簡単にいくかね。
 生き残った人間の中には、簡単には瞞されない者たちが多く含まれていそうだがな。そうした者たちとの戦いが待っているんじゃないか?

吾狼: 幽大さんの予言ではどうなるんですか? 人口が減った後の世界で、そうした戦いがあるんでしょうか。

幽大: 余輩にはそこまでは見通せんな。最近は霊力も衰えているのか、未来世界に人間が見えんのじゃよ。

吾狼: 人類が滅亡しているからですか?

幽大: いや、どうなんじゃろ。余輩が最近感じるのは、地震や津波のような天変地異の気配じゃな。かなり近いかもしれん。早ければ今年の春……まさに今じゃが、夏が来る前、桜と一緒に地が揺れるような予感がある。

吾狼: ええ~! やめてくださいよぉ。

幽大: そうした大地の幻影や海の幻影はときどき浮かぶんじゃが、その絵の中に人間の姿が見えてこないんだな。なぜかは分からんが。
 ただ、空中にキラキラした細かい塵のようなものが漂っているような感覚に包まれることがある。

イシ: 空中にキラキラした塵ですか。気になりますね。火山灰とかではなくて?

幽大: そんな具体的なものではないな。目では見えない塵とでもいうか、おそらく今こうして話している我々も、その塵の中にいるんだろうと感じる。

吾狼: 霊的なものですか?

幽大: う~む、そうともいえるかな。
 その塵は様々な色で、同じ種類ではない。無数の個性を持っておる。それが重なり合っている、とでもいうか……。

イシ: 分かる気がします。量子の世界ですかね。その本来見えない塵が集まって世界を形成している……。

幽大: そんなところかもしれんな。
 つまりだ。世界というのは一つではない。余輩が見ている世界と、イシコフさんや吾狼くんが見ている世界は別のものなんだ。それが重なり合っている。重なり合っている部分は共通して見ている世界だから、我々は同じ世界にいると思っている。しかし、本当は別々の世界に生きておるんだ
 同じことが世界中の人間や生物にもいえる。犬のポチが見ている世界は、飼い主が見ている世界とはまったく違う世界なんじゃが、両者の世界は重なっているので、その重なりの部分においてはやりとりができる。餌をもらったり、命令を受けたり、甘えたりといったやりとり、交流がな。

イシ: 分かります分かります。すごくよく分かります、それ。

吾狼: イシコフさんもそういう話、よくしてますよね。

イシ: うん、そうなんだよね。私の世界観と同じだね。

幽大: 余輩のような予言者は、重なっていない部分がときどき垣間見えるんじゃな。そこは時間も空間も重なっていないから、この世界がたどるであろう未来のことが見えてしまうことがある。
 長い間生きてきて、余輩はおのれの個性をそんな風に理解するようになった。と同時に、若いときの霊感は、今はもう枯れ果ててしまったようじゃがな。

イシ: いいんじゃないですか、それで。未来が見えたまま死ぬのもなんだか辛いでしょう。

幽大: そうじゃな。若いときより今のほうが楽だよ。
 それで思うのは、ゲイツやシュワブには、こうした重ね合わせのような世界は見えていないだろうということだな。
 見えないのはもちろんのこと、考えたこともないじゃろ。連中にとっては、世界は一つしかない。一つしかないから、自分たちで操れると思っておる。
 世界はそんな単純なものではないのだがな。

吾狼: なんかすごい話になってきましたね。幽大さんはやっぱりすごいや。

幽大: なんだ、今頃分かったのか?

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『新釈・クレムナの予言 タラビッチが見た2025年』
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こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。