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10年以上前に書いた小説が……ショック

新コロや倭苦珍のことは心ある医師や研究者に情報発信を任せて、自分はやはりエンターテインメントとしての文章を書こう。
そう思って、ここのところずっと「森水学園」に集中していた。
「用務員・杜用治さんのノート」「そして私も石になった」という新シリーズを追加していたのだが、書いていて、そういえばだいぶ前に書いた小説でも扱っていたテーマだよなあと思い出し、古い原稿のファイルを引っぱり出した。

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↑2009年の年末頃に書き上げて、2010年2月には電子書籍で発表していた。その後、Kindle版も出して、今出ているのは2013年バージョン。2019年にはオンデマンドの紙の本としても出している

この小説、全体的な内容はもちろん覚えているのだが、拾い読みしていると、細かい部分はすっかり忘れていて、まるで他人が書いている文章に初めて触れるかのような気持ちになる。ミステリードラマの犯人を忘れて何回も楽しめるみたいなものだ。
ここまで忘れていたとは……呆れるのを通り越して怖い。
しかも、あちこちに、まるで今の社会を予告しているかのような、かなりドンピシャなことが書いてあるではないか。
例えば……↓

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読んでいてドキッとした。
現在の状況とまったく同じではないか!

ここに出てくる「新型インフルエンザ」というのは、2009年夏に騒がれたやつのことだ。
当初、ギリアドサイエンシス社とラムズフェルドの関係とか、いろいろ騒がれたけれど、大きなパンデミックには至らなかったので、その後はみんな忘れてしまった(と思う)。
私自身、ここまで書いていて忘れていたくらいだから(ボケ老人のあたしとみなさんを比較してはいけないが……)、今しっかり思い出せる人は少ないのでは?
小説の中の登場人物もこう言っている↓

「~~
 ただ……まあ、人間ってそういうものなんだろうな、と思うんですよ。
 理詰めで生きているわけじゃない。毎日、起きて、ご飯食べて、金のために肉体と知力を使って、はたから見ればどうでもいいようなことに夢中になったり、ちょっとしたことで気分がよくなったり悪くなったりする。正確無比な機械のように動いているわけじゃないんです。
 人類とは何かといった根源的な問題への興味よりも、ああ、今無性にメロンパンが食いたいなという刹那的欲求のほうがずっと大きかったりする。それがいいとか悪いとかじゃなくて、人間とはそういうものだってことですよ」

10年以上前に書いたこの小説の中で自分が書いていたことが、まさに今、現在進行形で加速している……事実は小説よりも奇なり?
しかし、小説の内容があまりにも今の世界状況と一致していることよりも、13年前の自分が、今より「娯楽作品」をずっとしっかり書いていたということを知ってガックリきてしまった。
このところ毎日コツコツと何度も書き直しながら書いていた「用治さんのノート」よりうまく書けている。文章から伝わってくる熱量みたいなものも明らかに今より大きい。
同じような内容を書くのに、今の自分はどれだけていねいに書いても、13年前の自分に負けている。ああああ~!(絶望の絶叫)
今の自分の脳がここ10年でどれだけ劣化したかを思い知らされたことがショックなのだ。この老いの恐怖に比べたら新コロなんてなんでもない。
ああ~、もうやだ! あとはもう、ヘラヘラしながら死んでいくしかないのか。

というわけで、「そして私も石になった」は一昨日の第10回で止まってしまっている。
明日から続きを書く元気が出るかどうか……。

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↑Kindle版はAmazonで180円

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↑紙の本(オンデマンドブック)は1408円

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↑↓紙の本はB6版 256ページ 巻末に注釈付き

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(22/02/07 追記:気を取り直して「そして私も石になった」の続きは再開してます。今の時代、今の自分が書くとどう変わるのか、ということで)





こんなご時世ですが、残りの人生、やれる限り何か意味のあることを残したいと思って執筆・創作活動を続けています。応援していただければこの上ない喜びです。