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友人とおじいさんと僕と〜大阪の中心地で起こった奇跡〜

土曜日に結婚式があり、その翌日友人と梅田をブラブラしていました。その時この奇跡のストーリーが始まりました。

「天王寺まで何キロありますか?」


と80歳くらいのお爺さんから声をかけられました。

ピカピカの革靴を履き、パリパリのシャツにネクタイを綺麗に締め、金のネクタイピンを付け、書類を入れるケースのようなものだけを持っていました。そのケースには英字新聞が入っていました。

iPhoneのナビを立ち上げ、「8キロくらいありますねえ」と伝えました。

そこで少し立ち話になり、

・イギリスの大学病院で30年働いていた脳外科医
・京大の研究室に呼ばれ30年ぶりに帰ってきた。
・関西で家を探しに大阪にきた

と教えてくれました。かなりのエリートの方だと。

そして、
「さっき置引にあって携帯、財布などが入ったカバンが盗まれてしまった」
と教えてくれました。

さらに、
「天王寺に貸金庫があり、翌日(月曜日)の朝の9時から営業しているから、今日は野宿し翌日に天王寺(8キロ)まで歩いて取りに行かなあかん」と言い出しました。

「いや、ヤバすぎやろその状況」

と僕と友人は思いました。


まずお水を自販機で買い、お爺さんにあげました。ペットボトルをあけるのも難しそうな様子で、

「いや、もう熱中症なってるんちゃん、大丈夫か、死ぬ可能性あるぞ」

と僕と友人は思いました。

友人と僕は製薬会社で働いており、そのことをお爺さんに伝えると、
「君らはプロパーか?昔営業の人はすごかったねえ」と確かに医者にしかわからないような話で少し盛り上がりました。

どうやら、この人が言ってることは嘘ではなさそうだなと。

15分くらい話したところで、改めてこれからどうするかを聞くと、
「道で時間を明日の朝まで時間を潰し、天王寺まで歩く」
と、、、

「いや、夏やで、まず80歳くらいやろ、ほんまに熱中症で死にまっせ」

と思った我々は、

「お金、、、貸しましょうか?」

とこちらから提案しました。

全ての話に矛盾はなく、医者と聞き親近感がでてた我々から出てしまった言葉です。あとはめちゃくちゃ疲れられてたので、純粋に心配な気持ちがかなりありました。


「疑ってるわけではないですが、名前と電話番号教えてもらってもいいですか?名刺かなんかあります?」
「名前はSで、電話番号はわからん、携帯もなくて、名刺も鞄の中だ」

「そうなんですね、住所とかあります?」
「イギリスから帰ってきて、まだ決まってない」

「知り合いの人の番号とかあります?電話貸しましょうか?」
「携帯ないから電話番号だれもわからない、、」
「そうですよね、、、」


皆さんだったらどうしますか?

手に入れた情報は名前のみ。その辺の消費者金融でも個人情報は絶対に必要だと思います。昨今ではただカラオケに行くだけでも、本人確認が必要だったりします。

しかし我々は名前のみ、その大黒柱を信じ、
「じゃあ5000円ずつ10000円貸しますね」と。

この友人と私は金銭感覚が近く、あればあるだけ使うタイプであり、何の相談もなく何の躊躇もなく、5000円ずつをお貸ししました。

「ほんまにありがとう、ホテル泊まらせてもらって、明日貸金庫いきます。明日の午前中に必ず電話するから」と。
我々は電話番号をお教えしました。

「月に2回くらいは東京行く用事あるから、お礼させてくれ、2倍でも3倍にしてでも返すから、ほんまにありがとう。なんか君らとは長い付き合いになる気がする」

ここで我々も新幹線に乗るため、この場を後にしました。
最後、お爺さんのお辞儀はイギリス生活が長かったとは思えないほど美しかったです。


帰りの新幹線では、とにかくこの話題で盛り上がりました。

「とりあえずこれ2、3回は寿司奢ってもらえるやろ」
と5000円の投資で高級寿司を複数回奢ってもらうところまでは完璧に想像しておりました。

帰りの新幹線では色々調べました。
『名前 脳外科医』
『名前 イギリス 医者』
『ロンドン 医者 日本人』

出てきたのは、大昔の医学部の博士課程をとった際の論文のみ。

「大学で研究してるんやったら、もっと名前とか出てきそうやけどなあ、、、」

551の豚まんを食べながら、我々に不安が走りました。

検索ワードも、
『梅田 詐欺師 おじいちゃん』
『天王寺 貸金庫 営業時間』
『熱中症 詐欺 お爺ちゃん』
『認知症 詐欺 置き引き』
と変化をしていきました。

ただ、
「明日の午前に電話くれるって言うてたし、まぁ待とう。嘘ついてるようには見えんかったし、紳士的な感じやったし、ええ人っぽかったから待つだけやな。」

と話し、我々は解散しました。

そして今このノートを書いてる時間は、13時45分です。

「電話ないねんけど〜〜〜午前中終わってもうてんけど〜〜お爺さんやしめちゃくちゃ朝早いかな思って、電話きたら音鳴るようにして寝ててんけど〜〜」


という状況です。

ただ、5000円で本当に楽しませてもらってます。嘘をついてる顔ではなかったと今でも思ってます。
また、我々に全く後悔はありません。今も信じてます。

Sさん!!僕らずっとずっと電話待ってるからね!!

続報があれば、また書かせていただきます。

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