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リスキリングってなんだ

リスキリングという言葉を目にしない日はないくらい、バズワードになっているが、その意味は?狙いは?

少し前の某新聞に、「中高年のデジタル人材化」という見出しの記事があって、リスキリングという言葉が使われていた。
今までITに触れてこなかった人たち、しかも中高年に学ばせてどこまでやれるの?ITパスポート取ったって何もできないよ?って思うし、それってリスキリングなの?なにが「リ」なの?
業務に生かせるならともかく、転職向けの職業訓練の文脈で使われてるなら、やめとけ、中高年でそれは地獄が待ってるぞ、とか思っちゃう。

最新動向に追いつくために学ぶことは中高年だろうと若手だろうと必要だけど、やる人はいつだってやってるわけで、リスキリングというには違和感がある。
学びたがらない人を学ばせたるための、便利な言葉として使われているのかもしれない。

女性向けのキャリア雑誌を読んでても、これまで語られてきた、語学や資格取得などの自己研鑽がリスキリングと呼び方を変えただけだったり、趣味の教室に通うのがリスキリングって、それは違うでしょう。

わが社でも「リスキリング施策」なるものができ、おお何か学ばせてくれるのか?と期待したのも束の間、有望な若手を抜擢してAIとか学ばせるというものであった。なんか違う。

文句ばかり多い人みたいになってしまいました。

結局、リスキリングってなんだ?わからん。
どれも違う気がするし、いや根っこは同じで、どれも正解なのかもしれない。
謎を解明すべく、2冊の本を買って読んでみた。
(結論からいうと、2冊目の方で、結構しっくりきた)

1『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』光文社新書/小林 祐児 パーソル総合研究所
2『仕事のアンラーニング 働き方を学びほぐす』同文館出版/松尾 睦

1の本は、新書でとっつきやすいと思いきや、研究論文的で、正直私にはちょっと難しかった。でも、なるほど、と思うこともあった。

日本人は、”中動態”的である。つまり、能動的でも受動的でもない。
働き続けたいわけでもないし、転職もしたくない。
主体的に学ばなくても、配属後の研修や昇格訓練、目標管理などによりそこそこ能動的にやれてしまう。

ああ、私はまさにそうだな。
運命に任せるタイプ、とかいって、ただ与えられる機会を「試練」と捉えて乗り越えてきたつもりでいるけれど、考えようによっては、ただなんとなく学んでいるだけの人かもしれない。

2の本は、リスキリングという言葉は使われていないのだが、1の本で少し触れられていた「アンラーニング」という言葉がひっかかっていて、たまたま本屋で見つけてタイトルに惹かれて手に取ってみた。リスキリングとは、アンラーニングなんじゃないか?いや、リスキリングの前に、アンラーニングか?などと考えていた時のこと。

そもそもアンラーニングとは何か?
日本語に訳すと「学びほぐし」というらしく、硬直した知識・スキルを「ほぐし」て、新しく組み立てなおす、ということのようだ。

なるほど。時代の変化が激しい今だからこそ、より求められる考え方なのだと思う。これをしないと成長が止まってしまう。時代遅れになって、自分が使い物にならなくなってしまう。

印象的だった内容としては、

  • 得意な形に逃げない(羽生善治さんの言葉)

  • 異動や昇進などがきっかけで、自分の仕事の進め方が「機能しなくなった」と感じたら、意識的に変革すべき。

  • 知識、経験を積んで自分が第一人者となったときに充実感を味わえるが、責任範囲が広がって部下も増えると、いつまでもこの快感に浸っていられない。この快感を、いかに部下に味あわせるか?を考えてチームをつくることが任務となる。(これは1つの例として述べられていることだが、要は、職位や役割の変化に応じて、これまでの特技を捨てて権限委譲すべし、それが部下やチームの動機付けにもつながる、ということ。だと思う。)

私が常々感じていた、自分自身のスキルや経験に関する危機感、部下やメンバーの意識に対する不満、チームの育て方の難しさ・・・これらの根本が言語化されており、はっとする瞬間がいくつかあった。

結局、最近巷で乱用されている「リスキリング」という言葉の使われ方が正しいのかは分からないが、個人レベルでは普遍的に存在していた概念であると思う。しかし、日本の労働人口不足や、加速度的な技術革新を背景に、企業レベル、国レベルでも待ったなしの状況なのだと理解した。

加えて、働き方改革やエンゲージメントが問われる昨今、社員の動機付けとしても必要な要素だということ。

最後にもう1冊ご紹介。
『世界で活躍する人が大切にしている小さな心がけ』日経BP社/石倉 洋子
これは8年くらい前に発行された本で、初代デジタル監でもあった石倉さんの著書。個人的にファンであります。

私の昔の読書ノート(今はやめてしまったのだけど・・)に、印象的だった箇所がひとつだけメモしてあった。

「自己評価において大事なのは、時間の流れのなかで、また広い視点から客観的に自分の力や活動を評価することです。たとえば自分では力があると思っていても、周囲の進捗が速く、自分の相対的地位が下がってくることがあります」

ああ、石倉さんも、常にアンラーニングとリスキリングを繰り返しているのだな、と感じた。いくつになっても活躍できる人というのは、こういう意識なのだな。

読書ノートをとっておくと、ふとしたときに、点と点がつながることがあるな、と感じたおまけつき。







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