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『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』刊行記念トークイベント 古賀史健×田中泰延×二重作拓也「『言葉の身体性』とは何か?」に参加して

 『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』刊行記念トークイベント 古賀史健×田中泰延×二重作拓也「『言葉の身体性』とは何か?」に参加してきた。忘れてしまう感覚を文章にしておくことの重要性を、今日のイベントで古賀さんが語られていた。そこでさっそくメモの文字起こしをした。

 今回のイベントは田中さんが司会進行にぎやかしを担当し、古賀さんと二重作さんが内容を深めていく感じだった。話の内容を拾うとある程度真面目になってしまうが、明らかに田中さんが面白かったのでそこを知りたい方はイベントの録画を見てほしい(笑)以降、イベント内容の『可能性にアクセスするパフォーマンス医学』に言及した部分などを抜粋し、読みやすくするため敬称を省略する。

田中 どうしてこの本を書こうと思ったのか。

二重作 知られていないことがもったいないなと思う知識があった。体の構造を理解しておいたほうがいい。肩を脱臼するには特定の動きがある。それを知っておけば脱臼は防げるのに同じ事故は絶えない。

古賀 その知識というので思い出した話がある。嘉納治五郎先生が柔道を創立した経緯を調べこんだことがある。柔術を二つの場所で学んでいたが、若い体力筋力が充実した体でも年老いた先生に無茶苦茶投げられた。理由を聞いても見て学べと言われ、なかなか取り合ってもらえなかった。そこを研究していった結果、重心を崩してから投げると人が飛んでいくことが分かった。そこを中心に深めていった結果、たくさんの技が生まれ、結果世界的スポーツになった。

二重作 三角形の面積を求めるとき、垂線を引く。今はだれもが知る知識だが、その垂線を引くという知識は誰かが生み出したものだ。人体の理解にも垂線にあたるものがあり、それを知ることで自分の臨む運動をすることができる。

途中省略

二重作 言葉の選定にはこだわりがある。学問として出来上がっているもの、自分が経験した患者さんのこと、自分の考えたことを明確に分けている。

古賀 眼鏡屋で勤めていた時にプロポリスを売れと言われた。その頃薬事法ができた。それにより言い回しによっては違法になるため、~といわれていますというような言い方をしなくてはならなかった。プロポリスは全く売れず、自腹で買っていた。医者が書いている本であっても、いえることといえないことを混ぜて書いているパターンがある。

二重作 腰痛(症状)が治ったということはある。ヘルニア(頸椎の中身が出た状態)が治るということはない。しかし、医者であってもそこを意図的にあいまいに伝えている人たちがいる。自分は医師なのでそこの医学的厳密さだけは外さないようにしている。

途中省略

田中 どうしてこの本の中で、素人の人が実演をしているの?

二重作 アスリートの方は身体的感覚が鋭い方が多く、そういった方面の内容が伝わりやすい。しかし、本で伝えるということは言葉のみで情報を伝える必要がある。だから、実際にいろんな方にやってもらって動画を撮り、写真にしている。

途中省略

田中 身体のあり方が文章にあらわれるものですかという質問が来ています。
 
古賀 吉本隆明さんの文章の中で、農業に長年かかわっていくと体がそれに順応した形になっていくという話がありました。その意味で、特定の体型だから文章の形が決まってくるのではなく、文章を書いていくことで体が変化していくのだと思う。文章を書き続けるには、体力が必要になる。

二重作 体型は運動の結果であるから、文章と直接は関係がないと思う。ただ、体を極限まで使った人の文章はタイトな印象がある。ブルースリーの肉体なんて無駄のない研ぎ澄まされたものですよね。彼のセリフの「Don’t think. FEEL!」は、短い言葉ながら研ぎ澄まされたものですよね。運動などを極限に極めていくことは、邪魔なものを外していく行為じゃないですか。そういう人の書いた文章はタイトですよ。
 その運動量的な意味で田中さんと古賀さんの取材や資料の調べ込みのすごさをとても尊敬しています。ものすごい量の取材されるんですよ。

田中 さあ書けと言われても書けません。だから調べに行くんですね。その場でうんうん言っていても文章はできません。歩き回れってことですね。そして、嘘はダメと。そういった内容が12月22日発売の『「書く力」の教室 1冊でゼロから達人になる』に書いてあります(笑)

抜粋終了

 ここから、個人の感想になる。私のメモからは田中さんの面白さは排除されていることを改めて明記しておく。いや、こんなまじめな会話ばかりしてない。ただ、それ書き始めたら文章が破綻する。
 今回のイベントの見どころは、3人の文章を書くことに関する共通したスタンスだと感じた。抜粋からは読み取りにくいかもしれないが、読者や取材対象にいい加減なことをしないという姿勢が3人からはっきりと感じ取れた。おそらくそういった誠実さがお互いへのリスペクトになっているのだと思う。3人の著書からご本人の考え方を感じ取ることができるが、お互いへの信頼は今日の場を共有した人だけにわかるものだと思う。そういった部分まで知りたい人はぜひ録画を見てほしい。

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