コーチ物語 クライアント20「日本の危機」 第1章 さよなら、羽賀コーチ その4
羽賀さんの事務所には、今たくさんの人がいる。けれど、なぜだかとても静か。テレビの音だけが虚しく響いている。
誰ひとりとして言葉を発しようとしない。いや、何を発すればいいのかわからない。私も、ミクも、そして他のみんなも。
今、口を開けば、その名前を呼べばすぐにでも姿を見せてくれる。そんな錯覚に陥ってしまう。それだけ、羽賀さんは私たちの心の中にいてくれているんだ。
だから、今のこの現実を受け入れることができない。
テレビには虚しく、飛行機墜落の文字が流れている。どうやら