【闘病記】放射線治療、根治をめざして①

がん患畜を対象にした放射線治療には、大きく2種類、その目的によって分けられると思います。
1つは「根治」を目的にしたもの。もう1つは「緩和」を目的にしたもの。

たぬきちの治療の変遷を時系列に書くと。
2021年10月から抗がん剤服用。
2021年12月に腫瘍部分の切除手術。お鼻をゴッソリ取った。
腫瘍を手術で完全に取り去ることが出来なかったので抗がん剤継続。
この時点では見た目には「いったん落ち着いてる」ようだった。

2022年2月上旬。
眉間にイヤな赤い斑点が出現。
主治医に相談すると「さすがに腫瘍とは思わない。切除してまだ日も浅いし抗がん剤の効果で進行も鈍化してるはず」と。
「でも気になるなら検査してみましょうか」

そしてその結果。
「残念ながら腫瘍でした。こんなに短期間でこんなに進行するとは誤算だった」

抗がん剤がダメ。
切除手術もダメ。
そうなるともう、「根治を目指す手段」は放射線治療のみ。
※厳密には電気化学療法や免疫療法など色々存在しますが、私たち家族が選択肢として考えていたものはお薬・手術・放射線の3つ

悩む暇はなかったです。
日に日に、たぬきちの眉間にある赤い斑点は、斑点からぷっくりとした存在感ある膨らみに育っていく。それはもう恐ろしいほどのスピードで。

通っていた動物病院では手術はできても放射線治療には対応していませんでした。そして「治したい」という目的に答えらえれる”可能性がある”病院となると、さらに限定される。
緩和目的の放射線照射と、根治目的の放射線照射では設備が異なるのだそうです。(照射できる放射線の量とか)

いつも通っていた兵庫県の病院から紹介を受けたのは、大阪の南のほう、和歌山県に近い「大阪公立大学」の獣医学部の附属病院でした。関西の方なら「関空の近く」「りんくうのアウトレットがあるあたり」と言えばわかるかな。我が家から車でスムーズにいくと1時間ぐらいの距離です。

紹介状を書いてもらうと共に、獣医師同士の繋がりもあって、「あっちの〇〇先生には私から状況をLINEでも伝えておきます」と主治医のA先生に言っていただきました。少しでも早く放射線治療が始められるようにと・・・。

私たちは本当に焦っていました。
2月半ばに「腫瘍が出現、放射線治療をしましょう」と決めたのに、いざ放射線治療を受けようと思っても「明日からやりましょう」とはいかなくて。
大学病院は敷居が高いというかハードルが高いというか、まず予約を取るのに時間がかかる。そもそも受診できるのが平日の日中だけ。
ようやく初診が2022年3月9日に決まりました。

ひととおりのデータ(血液検査とか)は主治医から届いているだろうから、早かったら今日すぐにでも照射してもらえるかな。照射してもらいたいな。
3月9日当日はそんな逸る気持ちで自宅から大学病院へ向かったのですが、当日照射どころではなかった。担当の先生から言われたのはとても辛い言葉でした。

扁平上皮癌は簡単には治らない。
切除しきれなかったぐらい進行が進んでいる、しかも鼻腔や口腔に発生したものは大変タチが悪い。
そもそも放射線を浴びること、そのために麻酔をかけることによるリスクが大きいのだから、気楽な気持ちで「放射線よろしく」ということではない。この状態の子であれば「余命〇ヶ月」の診断をつけるのが妥当。

もう本当に。診察室で泣きそうでした。
辛い、悲しい、ショック、苛立ち、怒り、そういう負の感情に支配されて、自分のこぶしをぐっと握りしめていたことを覚えています。

夫と二人で担当医とゆっくり話をしました。

私たちはがんを根治させたい。
根治の可能性があるのはもう放射線しかないと聞いている。
それがプロフェッショナルである先生たちに「放射線でも根治は無理だし、たぬきちの今の状態では放射線に耐えることも無理」と言われるのなら諦めるしかない。
その場で先生に言ったのは、第一希望は「根治目的の放射線治療」、第二希望は「緩和目的の放射線治療」という意志でした。

何もしないでいれば顔面の腫瘍は瞬く間にたぬきちの顔を壊していく。だからせめて進行を抑制させることぐらいは、と。

担当の先生は、諦めの悪い私たち夫婦に言いました。
「ではとにかく、一度たぬきちちゃんを預からせてくれませんか?放射線治療に耐えられる状態なのか検査しましょう」
「検査するのと同時に、この院内にいる獣医師たちで何ができるかを相談させてください」

午前中に大学病院を訪ね、数時間の間たぬきちを「検査」のためにお預け。私たち夫婦はりんくうアウトレットモールでお昼休憩。ハンバーガーか何かを食べたような記憶。
たくさん洋服屋さんや雑貨屋さんがあるというのに、気持ちが落ち着かないから買い物なんて出来るわけもなくて。
お迎えの呼び出しを受けて再び大学病院の診察室に入ると「良い治療法が見つかった」と明るい声で言われました。

2022年3月現在では一般的な治療法として確立されていないらしく、先生たちが国内外の論文を調べまくって見つけ出した手法と聞きました。
それは、『1日に2回、高い線量を照射。それを5日連続で行う』というものです。

この大学病院で実施したことは1度もなくて、論文に載っていた実績データによると、たぬきちのような症例の子でも改善が見られたそうです。(根治とは言ってなかったような記憶)

「私たちからご提案できる”根治を目指すための治療法”はこれです。幸いにもたぬきちちゃんは放射線治療に耐えられそうな体でした!」
すなわち、根治目的でも緩和目的でも放射線をあてることが可能だと。

「ただ、とても高額です。ペット保険に入っている方でもこの治療には保険は適用されません。ざっくり見積もっても1日10万円掛かります。それを5日間ですから50万円です。絶対治る保障はありませんし、途中で体調に異変が出れば中断することもありえます」
「緩和目的の照射の場合、1日あたりの費用はその半額ぐらいです、何回照射するかで合計額が変動しますが・・・」

迷いなく、私たちはご提案のとおりの根治を目指した治療をお願いしたいと返答しました。
お金はちょっぴり厳しかったのですがね。ちょうど新しい家を買おうとしており、その頭金やら手付金やらで大きな出費が続いていまして・・・

この日は麻酔をかけて検査を受けたりしたので10万円ほど。

「公立」の病院なのでこの大学病院は月~金曜でしか治療を受けることができません。したがって5日連続の治療となると月曜スタートが絶対条件。「どの週の月曜からスタートしましょうか?」という相談に移りました。

「一番早くがいいです!来週は無理ですか?」
私たちにも見える位置に予約表があり、それを見ると次週に月~金の連続で受けることは難しそうでしたが・・・。
「私が全日程は対応できないの他の先生たちと相談します!少し待っててください!」
予約表を持って先生が席を離れた間、私たち夫婦は「さて、自分たちの仕事はどうしようかな」と考えていました。

上記したように、この病院まではスムーズに進んで片道1時間の距離。
入院預かりは出来ないから、毎朝9時前に預けにきて、17時前には引き取りにきてくださいと言われたのです。

朝方の高速道路、我が家から向かうとなると、どういうルートを通っても1時間では到着しない。絶対に渋滞になる。
となると毎朝7時には出発しなければ。
そして17時にはお迎えに行って、お次は帰宅ラッシュの道。絶対に家に着くころには19時を過ぎる。
ってことは7時~19時は家に居られない。
最終手段は「来週1週間、有給もらいます!」と職場に迷惑をかけるしかないかな・・・。

夫婦であれこれ思案していると先生が戻ってこられ、希望通り、1番早いタイミングの翌週月曜から治療を受けることが決まりました!

2022年3月14日(月)から、いよいよ放射線治療スタートです。

つづく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?