扁平上皮癌と戦う ~手術(鼻の切除)~

今回の記事では、主に外科手術による癌化した鼻と、その周辺部位の切除のことをまとめていきます。

手術リスクについての事前説明

まず、1番最初に言われたことは「外見の変化」です。
「顔貌(がんぼう)の変化」という言い方もされました。
お鼻がゴッソリ無くなってしまうわけなので、どうあっても見た目は変わってしまいます。
飼い主さんの中にはそれが受け入れられない方もいらっしゃるようで、何度も何度も「大丈夫ですか?かなり変わってしまいますよ」と確認されました。

私たちは見た目は気にしない、健康になることが最優先と考えていたので、お鼻が無くなることでたぬきち自身が困らないかを心配しました。
例えば、ちょっと当たっただけで流血してしまう、嗅覚機能が衰えてごはんを食べなくなってしまう、などなど・・・。
先生からは「そういったリスクは無いでしょう」との回答。

ただし術後からしばらくは痛みが残るため、食欲低下の可能性があること。
また、嗅覚機能は問題なく残るが、鼻が露出する状態となるため感染症や異物混入のリスクは高まってしまうこと。
そして何よりも。
手術をしてみないと、癌がどこまで浸潤してしまっているかわからない。
可能な限りマージンを取って切除する(多分このへんまで癌かな、と思われる部分に+αして切除するという意味)が、すべての癌を取り切れるかは何とも言えない、と。

えー!
手術しても癌すべて取れないかもしれないってこと?
それじゃあ手術する意味って何なの?

正直、そう思いました。
安くないお金を払うのに、お鼻を取ることでのリスクもあると言うのに。

A先生の話によれば例えば手術で全部の癌を取り切れなくても、残った癌は抗がん剤で叩く、放射線でさらに叩く、という二段構え・三弾構えの戦い方を想定すればよいと。
手術であらかたの癌を取り去ることができれば、残った癌に対する抗がん剤や放射線の効果がさらに増す可能性もある。

実は私は「手術ですべて解決!」と期待していたのですが、切ってみないと何とも言えないのが現実のようです。

いずれにしても今から放射線治療をする選択肢は一旦手放したのだし、抗がん剤だけでは癌化を止められないわけなので、あらゆるリスクに納得したうえで手術に期待してみることとなりました。

手術を受ける直前のたぬきちは、こちらのTwitter動画のように毎日、何度も何度も何度もくしゃみをしていました。
ごはん中やトイレ中が特に多かったです。
くしゃみは手術や放射線治療を受け終わった今現在も結構多いのですが、手術前が特にひどかったように思います。

手術は2021年12月19日に決まりました。
午前中に病院にお預けして、午後から麻酔・手術開始。
麻酔に備えて前日から食事制限、手術当時はごはん無しでリキッド状のものだけOK。

手術当日。
たぬきち本人は毎朝のようにカリカリをもらえず不満そうでした。
一方の飼い主たちは「これで少しは良くなるはず!」という前向きな気持ちと、「手術はちゃんと上手く終わるんだろうか・・・」という不安な気持ちが交互に出てしまい、どうにも落ち着きません。

A先生自身は、猫の鼻の扁平上皮癌の切除手術は初めてとのこと。手術は何度もご経験されているようですが。
こちらの病院自体では何度か手術例があるらしく、経験豊富な他の獣医と連携しながら手術するから安心してほしいとの説明でした。

手術は早ければ夕方ぐらいに終わる、終わったらお電話します。
何か急変するようなことがあってもお電話します。
そう言われ、病院にいても仕方がないので私たちは一度帰宅。

「夕方ってことは16時ぐらいかなぁ」
「もうちょっと時間かかったとしても17時ぐらいかなぁ」

家にいても時計ばかり見てドキドキそわそわ。
16時を過ぎても連絡がなくて、ますますドキドキ。
終わったらすぐに会いに行けるように病院の近くにあるカフェで待機しておこう、と、17時前には自宅を出発。
結局カフェには2時間近く滞在したような記憶。

Twitter投稿のとおり、病院から「終わりました」連絡があったのは19時頃。
手術自体は予定通りスムーズに終わったけれど、麻酔から覚めるのに時間がかかったので私たちへの連絡が出来ずにいたようです。

カフェでぼんやり過ごしていると連絡先に指定していた夫のスマホが着信を報せ、ドキッ!としました。

「やっと終わった!」というホッとした気持ちと、「これほど時間がかかったなんて、何か悪いことでも起こったんだろうか」という気持ち。
夫が神妙な顔で着信応じ、「はい、はい」と相槌を打っている。
どっち?どっち?終わったの?何か起こったの?

「実はすぐ近くのカフェにいるので、これからすぐに向かいます」
夫の表情と声色が明るくなったのがわかりました。
無事に終わったんだ!!

たぬきちはICUの中でボーーッとしていました。
よくわからないまま断食させられ、よくわからないまま麻酔にかけられ、そしてよくわからないまま鼻を切除された。
それなのにジッと耐えて、こうやって生きてる。

私たち人間のエゴかもしれないのに、「仕方ないから私も手術頑張ってあげたわよ」って言ってるような気がして、ICUにいるたぬきちを見て少し泣いてしまいました。

約1週間は病院の管理下で過ごす必要があり、会いに行ける日は夫婦で車に乗ってお見舞いに行き、仕事で時間を取れない日は病院から写真付きで状況を知らせるメールを頂きました。

そして手術から6日後の12月24日、クリスマスイブの日。
手術後に行った病理検査の結果が出たとのことで、夫婦で結果を聞きに行きました。

残念ながら手術ですべての癌を取り切ることは出来ず、たぬきちのお顔に癌はまだ残ってしまっていました。

そしてこれ以上は手術で攻めることは出来ない。健康な状態の目や口をえぐることになってしまうから・・・と。

さて、この後はどうしようか。

でも今は、手術と入院を頑張ったたぬきちを家に連れて帰って、クリスマスと年末年始を家族でゆっくり過ごそう。
これからのことは、年末年始に夫婦でいっぱい考えよう。

翌日の12月25日にたぬきち退院。
安全地帯(人間が立ち入ることが難しい場所…)に引きこもり、「私に構ってくれるな!」と言ってるようでした。
食欲はゼロではないものの、やはり万全ではなく。

術後の食欲低下は事前に聞いてはいたけれど、あまりにも食べない飲まないから心配で・・・。

以前から服用していたステロイドを再開しましょう、と言われて早速病院で点滴投与してもらいました。
すぐに食欲が戻ってホッ。

手術についての記録を書き連ねました。
ここで、たぬきちの手術に関わる費用を参考に記載しておきます。

手術費&ICU利用費&入院費&麻酔や抗生物質や痛み止め。
退院日に支払った合計は23万5千円ほどでした。

ペット保険は加入していないので、もちろん今回も全額負担です。
さらに、手術後の通院費も上記に含みません。

術後2週間ぐらいで縫合していたお鼻の縫合糸を抜糸する予定でしたが、そのためにまた麻酔をかけなければならず。
それなら次にまた何か麻酔しなくてはいけない検査等があった時、ついでに抜糸することになりました。

手術後も抗がん剤のブレオマイシン投与は続けました。
残っている癌が進行しないように。
そして、腎臓の数値が少しずつ悪化しており、活性炭コバルジンも引き続き服用。

ステロイドの効果か、手術からすっかり元気になったのか、たぬきちの食欲は元に戻って私たちに「ごはん!早くちょうだい!もっとちょうだい!」とおねだりするほどにまで回復。

手術後も定期的に通院を続けました。
抗がん剤の投与、お薬の処方、そして癌の進行有無を診てもらうために。

そして2月に入ったころ。
とうとう心配していたことが起こってしまいました。

癌が、急激に進行していることが判明したのです。
お鼻にポコッとした赤味を帯びたふくらみが出来て、そこがハゲていました。
さらに、たぬきちが丸まっている周辺に、毛が束になって落ち散らばっていました。

調べてもらった結果、そのポコッとした膨らみは癌の腫瘍でした。

写真を見て頂くとわかるとおり、目と目の間に異物感。
これが、皮膚から盛り上がってできた腫瘍(コブ)です。

A先生からは「手術して抗がん剤を使っているのに、これほど早く新しい腫瘍が出てくるとは想定外。この勢いだとどんどん腫瘍が増えて大きくなって顔貌が変化していくと思う」と言われました。
たぬきちは松竹梅の手段のうち、既に「梅=お薬、竹=手術」をやったので、次の攻め手となると「松=放射線」しかありません。
もう、悩んで迷っている時間はない。そう思いました。

2022年3月より、放射線治療を始めることを決めました。

放射線治療をするための条件・制約が色々あったため、A先生からは何度も念押しされたのですが、それらについては次の記事に記載していきたいと思います。

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