扁平上皮癌と戦う ~抗がん剤の投薬~

前回の記事では、たぬきちの保護から癌と診断を受けるまでの過程を綴りました。

今回は癌と確定診断を受けた時に主治医と相談した治療方針と、まず最初に行った治療についてまとめていきます。

たぬきちの主治医はたぶん30代~40代ぐらいの女性(年齢はまったくわからない!)で、とてもハキハキとお話をされる方です。
話すスピード、こっちから言ったこと・訊いたことに対するレスポンスの速さなど、全般的なテンポが私とすごく合っているな~と感じています。
関西人のノリなのかな?
東京人の夫はもしかしたらそう思っていない可能性はありますが、私としては「この先生が担当で良かった」と最初の出会いからこれを書いている今に至るまで感じています。

今後この記事では主治医が頻繁に登場しますので、A先生と呼称しますね。
A先生は獣医師として十分なキャリアを積んでいるのだと思いますが、癌以外の治療も全般的に対応する獣医師。
乱暴な言い方をすると、広く浅く診ているわけですね。
それでも色々文献を調べたり、他の獣医師に見解を求めたりしていつも「最新の情報」をアップデートしながら私たちに向き合ってくれています。

さらに本当に幸いなことに、この動物病院には不定期に動物の癌を専門としている東京の有名な獣医師(B先生とします)が来てくれる日が設けられていました。

ですので、この動物病院で「癌を治したい」と通う場合、B先生が来院する日に相談しに行くこともできるし、来院されない場合は自分の担当医、私たちの場合はA先生がB先生にコンタクトを取って治療についてのアドバイスを求める、といったことができます。
これは飼い主にとって心理的に大きかった。
癌を知り尽くしたB先生がサポートしてくれるのと、一般的な獣医師だけにお任せするのは段違いだと思います。

このようなA先生が主治医、癌専門のB先生サポートという体制で始まったたぬきちの扁平上皮癌治療。
「たぬきちちゃんは、検査の結果、扁平上皮癌でした」
と確定診断を受けた日、私たち夫婦とA先生は『今後の治療方針』について話し合いました。

前回の記事では、最初に通った町の動物病院で「保護猫にどこまでお金をかけますか?」といった趣旨の問いかけを受けた、と書きましたが、同じことをA先生にもズバッと言われました。

「癌の付き合い方は大きく2種類」
「根治を目指す”攻め”の治療と、進行を遅らせたり痛みを和らげる緩和目的の”守り”の治療の2種類」
「さらに言うと自然に任せる”何もしない”といった選択肢も」
「特に攻めの治療の場合、完治する保障はない。ペット保険に入っていない子は費用も大変高額」
※たぬきちは高齢かつ保護時すでに症状が出ていたためペット保険加入しておらず
「攻める治療の場合は手段がいくつかあり、費用は松竹梅だがそれぞれ高額と言える。元野良猫にそこまで払う覚悟はあるのか?」
「実際に、長年飼ってきたペットが癌になっても、最初から緩和療法を選択する方もたくさんいるし、何もせずにいるケースもたくさんある」
「何もしないのは責任放棄ではない。治療すること自体がストレスになってしまうペットもいる。余計なストレスを与えず、これまでと変わらず家でのんびり過ごさせて、最期のときを一緒に待つと捉えればいい」

このようにA先生には私たち夫婦の「スタンス」を確認されました。
私たちは「根治を目指したい。お金は無限には用意できないが、必要な治療に払う覚悟は既にできている」旨をお伝えし、『チームたぬきち』は”攻めの治療”をすることで話がまとまりました。

2021年10月下旬、根治治療スタートです。

癌と言われた日にA先生が書いてくれた放射線治療と化学療法(投薬)について

さて、先ほど治療には松竹梅がある、と書きましたが、こんな感じかなと思います。

【松=放射線治療】
1番高額。施術できる場所が限られ、ここまでやらない(やれない、物理的に通えない)ケースが多い。
患畜への負担も多く、飼い主が希望してもお断りされるケースもある。

【竹=外科的治療(手術)】
費用はケースバイケース。放射線ほど高額ではない。
患部を切除。扁平上皮癌の場合、癌細胞に侵されてしまった耳、鼻、口や顎をガサッと取り去ってしまうイメージ。
見た目の変化が大きい。

【梅=化学療法(投薬)】
放射線や手術と比べて、「その時に払う費用」は安価。ただ長期間続けるとトータルの負担は嵩む。
以前は扁平上皮癌に効果的な薬が存在しなかったようだが、近年は効果が期待できる薬が登場したことで「まず化学療法をする」もしくは「放射線や手術をした上で化学療法もする」ケースが増えているそう。

たぬきちの場合は、3種類すべてやりました。
費用は確かに、放射線>手術>薬かな~と思います。
お薬からスタートして、手術、放射線を受けましたが、手術と放射線の施術期間以外ほとんどずっとお薬を継続しているので、トータルコストで見ると薬が手術を超える日がくるかもしれません。
ここで述べている「薬」とは、抗がん剤と呼ばれるものだけを指しています。
例えば腎臓の数値悪化を防ぐために処方された薬や、食欲低下を改善するために処方された薬は含みません。

①まず化学療法で進行を止める →進行止まらず
②手術で癌に侵された鼻を切除 →奥深くまで浸潤していて取り切れず癌細胞が残ってしまった
③放射線治療で癌細胞を叩く →2022年3月に実行し1ヶ月経過した今、癌細胞は大人しくなった(進行が止まったと考えてよいとの診断)
④再発防止のため化学療法継続中

たぬきちの場合は化学療法からスタートしましたが、病状や飼い主の考え方などによっては最初から手術、ということもあると思います。
我が家は主治医のA先生、癌専門のB先生の考えを聞いたり、偶然Twitterで見かけたこの本を読んで「まず化学療法から始めて、それがダメなら手術や放射線治療を考えよう」という段階的な対応を決めることができました。

上記したように「まず化学療法」を始めることになり、たぬきちには「パラディア」という飲み薬が処方されました。

ポイッとお口の中に放り込んだり、普段食べているカリカリに混ぜて知らぬうちに自分で食べてもらうことも考えましたが、たぬきちにはちょっと難しいと考えて・・・。
毎朝のように食べていたぽんちゅーるに溶かして飲ませることにしました。

このパラディアという薬は「分子標的薬」と呼ばれるタイプのもので、癌細胞など特定の細胞だけを狙って攻撃する特性を持ちます。
ただ、癌ではないモノにまったく影響がないわけではないらしく、扱うときには素手で触ってしまわないよう気を付けて、と言われました。
お薬自体に触るのも危険。
たぬきちが食べ終わったあとのパラディア入りちゅーるの入っていた食器を洗う時も、絶対に人間と同じスポンジを使わないように、素手で洗ったりしないように、とも。触ってしまうと健康な私たちの体にも影響が出るとのこと。

パラディア10mgの単価は800円。
飲み始め当初は隔日に1錠です。800円のお薬を、週3回。
1ヶ月で考えると約1万円。

途中で1度、パラディア15mgに処方量を増やしてみたのですが、副作用で吐いてしまうため、2週間ほど15mg、それ以外は10mgでした。
ちなみに15mgは1錠1000円。
さらに余談ですが、腎臓の数値悪化を予防する目的でコバルジンという活性炭も飲んでおり(これは隔日ではなく毎日)、こちらは1包120円。
1ヶ月で3600円ほど。
加えて、以前に通っていた病院で処方されていたステロイド、こちらには食欲増進効果も含まれており、急に飲むのを止めて食べなくなっては困るため、こちらも継続服用。プレドニゾロン5というもので1包80円。
1ヶ月で2400円ほど。
さらにさらに、血液の数値の動きを定期的に確認する必要もあり、1回3000円ほど。これは1ヶ月に1~2回頻度で行いました。

https://twitter.com/nekonekowanwa11/status/1457686562221686793

https://twitter.com/nekonekowanwa11/status/1459085724376973315

最初は飲み薬のパラディアだけでしたが、「癌の進行が止まった」と言えるほどの効果が得られず、もう1種類の抗がん剤を併用することを提案されました。
ブレオマイシンという注射/点滴で、病院で打ってもらうものです。
これは1回8000円。
皮下点滴してもらうだけ、というのは飼い主にとっては楽でした。
飲み薬のパラディアは、毎回ちゅーるに溶かすという作業があったので正直言って大変で・・・。しかも簡単に溶けないのです。
混ぜて、混ぜて、混ぜて。少し時間を置いて、また混ぜて。
たっぷり5分ぐらい掛かっていました。
それをちゃんと食べるかどうか見張り、床や畳やカーペットに飛び散ったお薬入りちゅーるをゴシゴシ拭き取って(人間が素足で踏むとダメなので)。
この手間がさらに増えるのはしんどい。
ただ、ブレオマイシンは生涯の投与量上限が決まっており、それを超えてはいけないため、私たちはブレオマイシンより先にパラディアを使うことに決めていました。

2021年11月下旬。
経口薬のパラディアに加えて、皮下投与のブレオマイシン併用スタート。

しかし残念ながら、パラディア+ブレオマイシンのW投与でもたぬきちの癌の進行は食い止められず。

チームたぬきちは、治療方針について再度の話し合いをしました。
このままお薬だけを続けるか。進行が止まってはいないが、進行を緩やかにできている可能性はある。

手術でお鼻を取ってしまうか。(この病院で手術可)
それとも放射線を当てるか。(この病院ではできない)

A先生からは外科手術、放射線治療のメリット/デメリットの説明や、それぞれに掛かると想定される概算費用を提示してもらい、夫婦でもしっかり話し合いました。

夫はどちらかというと手術に後ろ向きだったように感じます。
どうせ大掛かりな治療をするなら、手術じゃなくて放射線のほうが良い、と考えていたんだと思います。そこまでハッキリは言ってなかったので想像でしかないのですが。

私はというと、放射線は最後の切り札に取っておきたかった。
それに、A先生への信頼が強く、この段階では放射線ができる大きな病院へ移るよりも、A先生に執刀してもらって癌を取り去ってもらいたい、という気持ちでした。

放射線治療を受ける場合、
①A先生が紹介状を書く
②紹介先の病院の予約を取る(すぐには取れない)
③そこの初診を受ける、検査もある
④放射線治療もすぐ開始できるか不明
と言われ、それも放射線治療を受ける障壁になっていたのです。

「この病院で手術っていうことなら比較的すぐに対応できる」
という一言が、おそらく夫にとっての決め手だった気がします。
手術をしても癌を取り切れなかったり、再発するようであれば、その時に放射線治療を考えることになりました。

次回は手術のこと、手術を受けたあとのことを書いていこうと思います。
今回はこれにて・・・。

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