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夏の夜は花火の音と閃光

今日は近所でお盆恒例の地域のお祭りがありました。 
田舎なんやけど、花火にも力を入れてて、わりと遠くからも見に来る人もいて、けっこう盛り上がる山村のイベントなんです。 


同じクラスの木村さんが、浴衣で幼い弟と妹を連れてきてた。彼女クラスでもそんなに目立つほうじゃなかったんで、最初わかんなくてさ。 
そりゃ普段眼鏡かけて本読んでるイメージしかないわけやし。眼鏡取って、花柄の浴衣着て、髪をアップにして、薄くお化粧までされた日にゃ誰だかわかんないって! 

最初彼女の方が俺に気づいたみたいで、「あ…」って一瞬間があったあと、「親に弟と妹をお祭りに連れていけって言われちゃってさ…」って、はにかんだんだ。 
この娘、こんなふうに笑うんやなーって新発見やったんやけど、そんな動揺を見抜かれないように、「あ、あ、そなんだ。大変だね」ってごまかした。 

そうこうしてるうちに、彼女の弟と妹が、小学校の同級生かなんかに会ったみたいで、彼女を置いて、そっちで遊びはじめたんだ。 
彼女は石段に座って穏やかにそれを見てたんやけど、なんか手持ち無沙汰だったっぽいから、ダメもとで「よかったら俺と一緒に花火見ない?」って誘ってみたら、満面の笑みで「うんっ」って頷いてくれてさ。 

打ち上がる色とりどりの花火に照らされる彼女の顔がなんだかとても綺麗で、ちょっとドキドキしちゃったよ。 

花火も盛り上がってきたころ、彼女の弟が「ねーちゃん、しっこー」とか言って走ってきた。 

彼女は、「あらやだ、もうすこし我慢できる?」って訊いてから、俺に、「今日はありがと。とても楽しかったよ」って微笑んでくれたんだ。 
ありがとうって、俺別になんにも…って思いながらも、「お、おう。じゃあまた新学期な!」って手を振ったんだ。 

彼女も小さく手を振ったあと、弟と妹の手を引いて家に帰っていった。 
…へぇ、ちゃんと「お姉ちゃん」してんじゃん…。 

新学期か…。まだもうちょっと先だなぁ…。 
夜空にまた、大輪の花火がぱっと咲き覆うのを、ぼうっと見上げる俺。 



…そんな妄想しながら、祭やってる横を通り過ぎる、現実世界の我輩(丸坊主)でした。

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