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風俗嬢に400万貢いだ謎の男と高円寺で会う【婚活放浪記】

「結婚線はないネ、仕事は1人で完結する仕事なら成功しまス、パートナーはいらないネ、1人で完結してまス」

まだ少し肌寒い春の浜松町、台湾人のおばさんはわたしの手をぱしぱしと叩きながら続けた。

うえ〜ん!!
それはすでに知ってるから他のこと教えてくれ〜〜!!!

運命の相手とはいつ出会えますか、いつ結婚しますか、人と暮らすことはありますか、人を愛することはありますか
クドめに問い続けるも希望の答えが返ってくることはなく、最後は苦笑いで見送られた。


こっちだって金払ってんだよ!
2000円分の光、見してみいや!

街には春の冷たい夜風が吹いている。





見知らぬ台湾ババアによる手相占いを終えたわたしはハッキリいってブチギレていた

「※◎▲※○〜!!!×××!!!」
ナチュラルローソンに寄り、揚げ銀杏を買い、ポリポリしながら歩く

「◎×※△!!ポリポリポリポリ」
怖い

「ポリポリポリポリ!××!!!×××!!!!」
何かを決意したようだ。


「あの恐縮なんですが、、、わたしの結婚相手知らないですかね〜」

正気を取り戻したわたしはとりあえずツイッターのフォロワーにDMした。
無論彼がわたしの結婚相手を知る由はないうえに彼とは会ったこともメッセージをやりとりしたこともない。

「最近母親が突然タイ人と再婚した身長160cmのやつか、風俗嬢に400万貢いだあげく日高屋でフラれたやつ、どっちがいいですか?」

「わたしに合いそうな方で!!!」

「ん〜....じゃあ日高屋で!」





少々ややこしいが日高屋こと三葉と出会ったのは高円寺の四文屋でのことだ。
仲介人であるツカサくん(フォロワー)も同席している。

とりあえず知らない者同士ということで簡単に状況を整理することになった。


「あの大変言いづらいんですけど三葉さん、実は今日はわたしの結婚相手として呼び出されているんですよね....」

「結婚指輪買ってきます!」

なんと軽快な切り返し。
おそらくまだ冗談か何かだと思っているのだろう。地獄の果てを見せてあげよう

三葉は28歳の営業マン。
2年前例の風俗嬢に飛ばれてからというもの心に空いた穴と400万円を埋めるため仕事に熱中する日々を送っているのだと言う。

「400万も何貢いだんですか?」

「犬ですね」

「犬」

「犬です、あと猫?」

絶対にこちらが言うことではないが三葉は終始挙動不審だった。
ちなみにわたしも挙動不審だ。ということでフロアの3分の2が挙動不審で埋まっているという状況になっている。
残る3分の1を見てみよう

「平井さんはまずどうしてお見合いしようと思ったんですか?」
「あー!その価値観三葉と合うと思いますよ!な!」
「平井さんの好きなタイプってどんな人なんですか?」
「あ、次ハイボールでいいですか?」

...回すね〜〜!!!!
大感心の立ち回りである。

ちなみにこの男、ワイルド系のおしゃれイケメンで礼儀正しく、場の空気を死ぬほど読み、しまいにはベンチャー企業の社長なのだ。なんでわたしのフォロワーなんだ?

打って変わって三葉は「酔うとオネエ口調になる」という自己紹介をしてきた。
ツカサくんがトイレに立って三葉と2人きりになるたびそこは宇宙空間と化した。結婚式は火星で挙げよう。

「俺と付き合うとみんなメンヘラになるんだ....」


ああ、三葉。あんたってやつは。
まあ実際不思議ちゃんってなんやかんやモテんのよね、男も女も。

わたしはキモい人間・人から嫌われてる人間・自分のことしか考えていない人間などが大好きだ。
なぜならわたし自身も自分のことしか考えていないキモい人間なので安心して仲良くなれるから。家族なのだ、キモい人間とは。


失礼ながら三葉はなかなか奇妙な人間だったのですぐに心を分かち合った。
そして気が付けばわたしと三葉でツカサくんを説教するという構図が出来上がっていた。勘の良い読者諸君ならお気づきのことであろうが、底抜けに無意味である。

「てか実際1番ヤバいのツカサくんだよね!?」

「ねえそうそう本当そう」

「心の闇感じるよ!そうやっていつもうまく場回して家帰って真顔で風呂入って寝るんだろ?!!心はどこにある!!?1番結婚できないだろ!!!」

「そうだそうだ!」

ツカサくんはなぜか大納得して焦っていた。
ここで非常に面白い事実をお伝えするがツカサくんは三葉のことが大好きなのだ。


「その日高屋のやつ、本当に心優しくて最高な男だから絶対気にいると思う!俺はそいつと一緒に働きたくて今の会社入ったんだから!」


ツカサくんから送られてきたDMが思い出され、心がきゅんとなる。


「....てか俺たちさ、毎日一緒に仕事して残業して飲みに行ってさ、俺たち、幸せだよな。ぶっちゃけ三葉がいればそれでいいもんな」

「わかる、幸せだよな。毎日楽しいよな」

なんて無意味な展開。
わかる、わたしも毎日幸せだわ。
そしてみんなでガバガバとハイボールを飲み続けた。

その後、なぜか2人の会社の人たちも集まってきて、わたしは仕事の用事があったのではやめに帰った。
みんなこの汚ねえ東京の中で誰かを大切に思ったり、思われたりしながら生きている。


婚活放浪記は続く

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