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記事一覧

テロメニア魔導記3(連載第一回)いざ、再びレートの塔へ

テロメニア魔導記3(連載第一回)いざ、再びレートの塔へ


登場人物紹介大陸地図第一章 銀色の追懐

 1 いざ、再びレートの塔へ

 ゼストアゼシアから伸びる長い橋を渡った先に、その塔はあった。
 十二の星座を司る賢者達が、星読みによって統治を取り仕切る魔法王国テロメニアの中枢、レートの塔である。その中腹に繋がる長い橋を今、四人の冒険者達が渡っていた。
「こうしてパーティで歩いていると、なんだかドキドキするね」
 先頭を歩く小柄な少年カータは、黒いフェ

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テロメニア魔導記3(連載第二回)決戦! シルバーゴーレム

テロメニア魔導記3(連載第二回)決戦! シルバーゴーレム


登場人物紹介第一章 銀色の追懐

 2 決戦! シルバーゴーレム

 激しい地響きを立てながら、銀の巨像が左の拳を振り上げて迫って来る。それを見たカータはタイミングを見計らって高く跳躍すると、ゴーレムの拳打が地面に突き立てられた直後、その真上に着地した。
「マーヤさん。ボクが合図したら、お願いね!」
 少年はそう言って拳の甲から前腕へ、そして肘へと腕を駆け上っていくと、左肩の上に乗っているターニ

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テロメニア魔導記3(連載第三回)ひとときの休息

テロメニア魔導記3(連載第三回)ひとときの休息


登場人物紹介第一章 銀色の追懐

 3 ひとときの休息

 絶え間なく水が流れる音と共に、美しいフィドルの演奏が耳を優しく撫でている。肌にまとわり付くような濃い湿気を感じるが、空気は少し暖かかった。最近すっかり冷え込んできた晩秋の寒さを凌ぐには、丁度いい心地よさである。
「……ん。ん? ここは?」
 そしてカータは目を覚ました。
 天井の見えない縦長の広い空間は、上に伸びる幾つものハシゴによって

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テロメニア魔導記3(連載第四回)銀色の追懐

テロメニア魔導記3(連載第四回)銀色の追懐


登場人物紹介第一章 銀色の追懐

 4 銀色の追懐

 誰も居ない暗がりの中に、仄かなロウソクの灯りが小さく揺れている。
 銀色の長い髪を横に垂らし、机に片ひじをついて本のページをめくる若者の姿が、その光の中にぼんやりと照らし出されていた。かつて多くの優秀な目覚め人を輩出してきた魔法学院。その最奥にある学院書庫は、過去の偉大な賢者達が書き記した知識の結晶とも言うべき、数多の学術書が所蔵されている

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テロメニア魔導記3(連載第五回)ポーラの眼

テロメニア魔導記3(連載第五回)ポーラの眼


登場人物紹介第二章 魔法学院の残滓

 1 ポーラの眼

 円を幾重にも重ねた球体が宙空に浮いている、円形かつドーム状の不思議な大広間。
 その渾天儀から発せられた光は、半球体の天井に小さな光の粒を映し出し、それがこの広間全体に無数の天体を浮かび上がらせている。壁面を渦巻き状に伸びる緩やかな坂道は、天頂に至る頃には直角に近い角度になるが、この広間を忙しそうに行き来する賢者達は、特に何の苦もなく壁

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