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あの頃にはもう戻れないけれど。

天気の良い日に車を運転していたら
ふと、あいつのことを思い出した。

あたたかい日差しを浴びながら
電車に乗って話したあの時間を。

******

帰り道、同じ方向だったあいつとは
よくこれからの話をしていた。

実はあれをやってみたいんだ。
挑戦したいことがある、と

その時間は思いのほか楽しくて
自分の中であいつは同志的な存在だった。

そんなあいつは次第に
自分の挑戦したいことにのめりこむようになった。
気がつけば帰り道も重なることはなくなった。

*****

久しぶりに一緒に帰ることがあった。
夢に向かって進んでいるあいつの話は
まっすぐでなんだか眩しかった。

そっちはどう?と、あいつに聞かれた。
自信を持って話せない自分がそこにいた。

情けなくて思わず俯いた。
気がつけばもう電車を降りる時刻になっていた。

*****

あいつとはもう何年も会っていない。

また会う機会がいつ来るかは分からない。
もしかしたらもう会うこともないかもしれない。

だけど、次もし会うことが出来たならば
そのときは、胸を張って話したい。

いつか笑って話すために。



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