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白い床、無数の毛、これは戦争の話


2020年5月、佐藤はパートナーと同棲を始めた。

彼の仕事の関係で見知らぬ土地へお引越し。

世間はコロナ騒ぎで引越してもどこへも出かけられずお手本のような引きこもり生活。



初めての同棲。初めての土地。初めての緊急事態宣言。

家事は得意だし、コロナは仕方ないし、1人で遊ぶのも上手だと思うので今の所不満や問題はない。


……









嘘。嘘がすぎる。真っ赤っかだわ。






ちょっと本当に、聞いてくれます???

ていうか、聞いて???








どうしてこんなに陰毛が落ちてるの?????????


こんなに落ちてること、ある?????佐藤びっくりだわ。まじで家賃とりますよ???????????



男性ってものすごく陰毛を撒き散らすのね?

陰毛撒き散らし太郎じゃん。なにそれ。






彼『落ちてる毛、殆どがすね毛らしいよ!』









じゃかあしいわ!!!!!!!!!!!!どつき回すぞ!!!!!!!!!!



本当に陰毛か陰毛でないかの問題ではなく、陰毛らしさを醸し出してるか、醸し出していないかの問題である。


陰毛らしい雰囲気のすね毛は最早陰毛なのでは???


ちょっと何言ってるか自分でも分からない。

つらい。

ここはどこ?私は誰?あなたは陰毛?



F・・C YOU!!!!!!!!!!!!



本当に陰毛だらけ。毎日陰毛。陰毛陰毛。陰毛パレード!!!!!!!!!!!!!!!!





佐藤が暮らす家の床は、白い。

天気の悪い日でも部屋の中が明るく見えるので、お気に入り。かつて東京でひとり暮らしをしていた時も白い床の部屋をわざわざ探したくらい好き。



お陰様で陰毛達のアピールが凄い。



いっちょまえに主張してくんな。

こっちみんな。

ソッ…と控えめな感じでいても床とのコントラストがばっちりなんじゃ。

本日も活きがよろしいようで!!!




まあ、でもね、いいの。別に。

いいの…

だって汚れが目立てばお掃除の頻度が高くなって綺麗なおうちになるから…

陰毛だって、そこに居たくているわけじゃないだろうから…

母さんや、父さんだっていたかもしれないのに…

離れ離れになってしまって…



いいの…佐藤は頑張るの…

責めてごめんね…

あなただって、頑張ってるもんね…

情緒がジェットコースター。







同棲を始めた最初の1週間、ほとんど毎日泣いていた。

(冗談ではなく、本気の涙)


女のひとり暮らしじゃ考えられないくらい陰毛が床で蜜ってるから。

いや、蜜ってる位ならいい。部屋の床に満遍なく居る。

こっちでクイックル。

あっちでクイックル。

許さない。

駆逐してやる…!!!!!!!!!!!


これは…

これは戦争だ…!!!!!!!!

第一次陰毛戦争勃発!!!!!!!!



……






決して私は潔癖症ではないし、むしろずぼらで、ひとり暮らしの時は虫とにおいがわかない汚れはオッケー!がモットーだった。



そんな私でも自分のものではない陰毛は見ていて不快だし腹が立つんだから陰毛はすごい。陰毛だけではないけれど、人間の毛というのは体を離れた瞬間に忌々しく汚らしいものになってしまう。不思議だね。


猫や犬はウフフあらあらぁとなるのに。

(もしかして犬や猫は天才なのでは…?)


ここまで読んだ方は、佐藤の陰毛かもしれないじゃん と思ったでしょう。



分かるよ、分かる。

でもね、私の陰毛じゃないんだなこれが。


だって佐藤、陰毛ないもん。


俗に言う(俗に言わなくても)パイパンだもん。



(ものすごく勝ち誇った顔)



私にはないわけですよ、陰毛。

(パイパンになってしまった経緯もめちゃくちゃ説明したいが、割愛)




だから、床に落ちている黒いピョロ毛の出処はどう考えても私ではなく、彼なわけだ。



もちろん毛のターンオーバーは生理現象だし陰毛だって好き好んで我が家の床に落ちているわけではないのかもしれない。

(陰毛に自我はあるのか?自身が陰毛であるという意識はあるのか?お前は誰で、何処へ向かうのだ?我思う、故に我あり。陰毛思う、故に陰毛あり。)


でも、やっぱり佐藤は自分のものではない陰毛を愛せない。


自分の陰毛なら、少しは愛せたかもしれない。

今はもう、いないけれど。

(哀愁)



クイックルワイパーは毎日、掃除機は2日に1回かけているものの毎日毛は抜け落ちるのでこれでも掃除機の頻度足りないかな…?と思っている。

今は私が有休消化中なので家にいるからできるものの、働き始めた時のことを考えるとゾッとする。

お掃除ロボットの出番かな。

検討しなければ。







ある日のことである。

そろそろ夕飯作ろうかな〜と冷蔵庫を開けた。

新しく買った冷蔵庫はまだピカピカで、料理をする私のために彼が大きなファミリーサイズにしてくれたため食材がたくさん入ってお気に入りだ。


なに作ろうかな…とザッと冷蔵庫を見ていると、居た。


ハァ〜〜〜〜〜(溜息)



陰毛。





え、なんで?どうしたん?

冷蔵庫はだめじゃんか???

鮮度がーつって?????

保存状態がーつって?????

しばくぞ?????????



まじで何。冷蔵庫はだめじゃん(2回目)



何故なの!!!!!!!?!?!?!?


もういや!!!!!!!!!!!!


怒りつつも、ちょっと笑ってしまった。

関西出身じゃないのに、わりと大きめの声で

なんでやねん!!!

と言ってしまった。

(エセ関西弁はフルボッコにされるって、知ってる)




本当に彼らはいつでも、どこにでも居る。

今日もほら、すぐそこに。

ココロとカラダ。にんげんのぜんぶ。



冷蔵庫に陰毛が入っていたことで、佐藤はある事を思い出した。

私の友人で、アパレル業界で働くSちゃん。


若い世代向けの可愛らしいお店で、ガンガン服を売り、ガンガン昇格していった。


ある時、お会計をしているとお金を乗せるトレーの上に居たらしい。






陰毛。




Wooooooooooooooow

そっか〜〜〜〜〜

うんうん。なるほどね〜〜〜〜〜

お洋服欲しくなったのかな?????

そっかそっか〜〜〜〜

はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(溜息)

お客様〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!






Sちゃんはプロなので、めちゃくちゃ驚いたらしいが、めちゃくちゃ平静を装って事なきを得たらしい。


すごい。

プロってすごい。


多分、お財布から出てきたんじゃない?とのこと。




今日も、洗濯を2回して、排水口を掃除して、トイレもピカピカにして、掃除機をかけた。


気持ちの良い初夏の風が家を通り抜ける。


陰毛もそのまま通り抜けてくれよ〜〜〜

頼むよ〜〜〜




佐藤はいままでも、今も、これからも、ずーーーーっと陰毛と戦うよ。


共生社会がなんぼのもんじゃい。


みんなへ。

脱毛行こうぜ!!!!

医療脱毛がおすすめだよ!!!

(突然のオススメ)



読んでくれて本当にありがとう。

世界中に愛を込めて。佐藤。

(数行前で共生社会がなんぼのもんじゃいとか言ってたけど〜〜〜)




(陰毛のハッシュタグ本当にいる?怒られない?)




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