【随筆】回天・水中特攻隊―最期の言葉
テーブルの上に作りかけの折鶴がひとつ置かれていた。おそらく妻だろう。私は鶴を完成させ、その純白の羽を精一杯広げてみた。頭と尾は凛と立ち、今にも羽ばたくのではないかと思えた。その時、蝉しぐれをかき消すかのように、町内放送がはじまった。上気していた私の身体は、徐々に鎮まり、窓からのわずかな涼気に目を閉じた。
八月六日の朝である。「黙祷」の響きはその背負う歴史の分だけ重い。原爆により多くの人が一瞬にして消え、後遺症に何十年も苦しむ人がいる。
かつてトルーマン大統領は両国の犠牲