芥川龍之介俳句をよむ
「余技は発句の外には何もない」(『芥川竜之介俳句集』加藤郁乎編より)
芸術の鑑賞は芸術家と鑑賞家との協力である。いわば鑑賞家は一つの作品を課題に彼自身の創作を試みるのに過ぎない。この故に如何なる時代にも名声を失わない作品は必ず種々の鑑賞を可能にする特色を具えている。しかし、種々の鑑賞を可能にするという意味はアナトオル・フランスのいうように、どこか曖昧に出来ているため、どういう解釈を加えるもたやすい意味ではあるまい。むしろ廬山の峰々のように、種々の立場から鑑賞され得る多面性を