【小説】道楽サンタのいない家
「大変申し訳ないんだけど、真白を少し預かってほしい」
紅を差した口元がそう言い残して、妹は行方を晦ました。悪趣味な毛皮のコートを着て、足元は赤いハイヒールだった。からりと晴れた十一月二十三日のことで、音信不通のまま、もうじき一ヶ月になる。実に嘆かわしい理由に違いなく、恐らく新しい男ができたのだ。何か事件に巻き込まれたとしても自業自得に他ならない。誰が同情するものか。野垂れ死んでしまえ。
けれど、真白のことを考えると、どうにか改心して、良き母親に生まれ変わってほしいと願う。