シェア
部活帰りの空は、もの悲しい茜色に染まっていた。街路樹の梢を揺らす風が、火照った体を冷ましてゆく。 僕は秋が苦手だ。特に夕暮れ時は、訳もなく気が沈む。いつもの四人でこうして歩く足取りも、自然と遅れがちになる。 「どうした?」 「なんでもないよ」 悠真の問い掛けにそう答えると、ふいに一輝の足が止まった。何かメッセージを受信したのか、手元の小さな端末を見ている。 「どうした?」 三人同時。同じ問い掛けの声が重なった。鬱々とした僕ですら笑ったが、一輝は端末に目を落としたまま深
もとより国体とは、国の根本的な在り方や、国の特色を意味する言葉である。だが、大東亜戦争の後、国民体育大会という言葉を捻り出して、その略称をしれっと意味に付け加えた。報道機関を利用してそれを定着させた。結果、言葉の意味はすり替わり、国の在り方を考える国民は劇的に減った。言わずもがな、GHQの指導を受けてのことであり、敗戦国として牙を抜かれた訳である。 とはいえ、負の側面ばかりではない。戦後百三十年経った今も、あれから一度も戦争をしない平和な国である。一時の繁栄からすると、経