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Outer wildsのゲームデザインがすごかった

『Outer Wilds』、めちゃ良いゲームだった……。

完璧な宇宙の自由な探検、驚かされる世界の理、シンプルな目的にエピファニーな瞬間。まさに、センスオブワンダーの詰まったゲームだったと思う。あまりにも良かったので、良かった点を思い出してちょっと書き残してみることにする。

本記事はネタバレ記事なので、もしこのゲームに興味があるにもかかわらずまだプレイしていないという人は、一旦ここで読むのをやめて、ぜひ実際にプレイしてみてほしい。

Steam(ただしWindowsのみ)、Epic games(残念ながらこちらもWindowsのみ)、PS4で遊ぶ事ができる(Macの人はPS4しか選択肢がないのが非常に残念なところ)。Swichでも出てほしい……。
追伸 : X boxのこと忘れてた。遊べます。




僕がこのゲームで優れていると感じたゲームデザインは、プレイヤーに恐怖を感じさせるギミックを配置し、その恐怖を克服することで謎が解けゲームが進む作りにおおよそなっている、という点。これが、本作がパズルを利用せずとも「謎解き」っぽく成立している由縁だと思う。

つまり、『スーパーマリオ』なら自分から穴に落ちることで謎が解け、『フォートナイト』ならわざとストームエリアの奥に突入することで謎が解けるということ。そんなこと、普通ならしたくない。

恐怖を克服し、その物事のメカニズムを知ることで謎が解けて、それがそのままNomaiの痕跡を追うストーリーとも一致するようにできている。実に見事だった。

プレイヤーへのモチベーションも、「未知への興味」以外は特にない。ここも、プリミティブですごくよかった。僕みたいにピタッとはまる人間には、とても気持ちがいいと思う。

「勇気」こそが、探索の喜びを増やす

Outer Wildsは、とにかく操作感が良くない。レスポンスの悪いジャンプアクションに、使い勝手が悪く操作も難しい、すぐに壊れる宇宙船。その上、キャラクターはひ弱だ。少しの操作ミスですぐに死ぬし、空気がなくなっても死ぬ。すぐ宇宙服に穴開くし。

一見すると理不尽な感じのゲーム……だけど、Outer Wildsのルールの本質はこの「理不尽なアクションゲーム」にこそある。

Outer Wildsでは、「死」が結構なタイムロスを生む。困難な旅を乗り超えて惑星の深部に到達したのに死んでしまったとしたら、「またこれやるの?」ってなる。だから、なるべく死にたくない。これによって、プレイヤーは不安に対して「死への恐怖」を感じるようになる。

すると、不用意に危険に突っ込みにくくなる。しかし、その危険に謎を隠してくるのがOuter Wildsのキモだった。

「本当にここに進んで大丈夫なのだろうか?」とプレイヤーに思わせるために、あえてシナリオは最小限のことしか説明しない。その不安に突っ込む勇気こそが、探索の喜びを増やしてくれるからだ。細かい情報の断片から自分の頭を使って仮説を導き出し、進んでいく。このゲームの大半はこの構成になっている。

本作は「ループゲーム」なので、プレイヤーは危険への挑戦もぎりぎり許容することができる。いつ死んだって、どうせ22分後にはスタート地点へ戻るのだ。早いか遅いかの違いだと思わせることで、死への挑戦自体を肯定している。このバランスがすごく見事だった(ループが面倒な人にとってはクリアを諦める原因にもなっていそうだけど、OuterWildsが体験して欲しいことを思えば仕方がないだろう)。

本作は、日常生活では出会わないさまざまな「知らないこと」で満ちている。

知らないことは怖い。竜巻に飲まれるのも、ブラックホールに落ちるのも、巨大なアンコウに出会うのも。恐怖とはちょっと違うけど、量子の石も不可解だ。だけど、怖いと感じたことでも、自らが体験し、理解することで怖くなくなるというのは、Nomaiを通してプレイヤーに提示されているテーマだろう。世の中のことってだいたいそうだよね。めちゃくちゃいいメッセージ。

知的探究心によって謎が解けていく仕組みもきれいだった。知らないことへの答えが常にきちんと用意されている。そしてそれら全てが、パズルのような作られた謎ではなく、自然や科学として理解できるものだということもまた鮮やか。

砂は重力に従って移動する。氷は温まると溶けるし、台風の目の中は静か。間欠泉の下には水脈が広がっていて、量子の石は目を離すと移動する。目を探す探査機をあらゆる方向に打ち出すための、Nomaiのアイデアもそう。こういった「自然の摂理っぽいこと」を、本当に上手に使っていた。

最低限のコンパスとして、シグナルスコープが未知の惑星への最初のガイドラインになっているのもよかった。これを使ってたどり着くポイントには、ほかの宇宙飛行士と空気が減らない樹があって、安全にできているのもバランスがいい。シグナルスコープで聴くことができる音楽も、旅の恐怖感を引き立たせるための緩急にもなっている。このゲームは、全体的に緩急のつけ方がうまい。

探索中に感じる大きな不安のひとつ、「酸素」もいい。酸素は、時間をかけるほどに減っていくので恐怖を増幅させるけど、ある程度進めばだいたい酸素を吸える樹が用意されている。そうやって、プレイヤーにステージクリアやセーブポイントを自然に理解させる仕組みも、とてもバランスがよかった。

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すごいゲームデザインだらけ

このように、危険にこそ謎を隠してくるOuter Wildsだけど、僕がもっともダイナミックだと思ったのは「灰の双子星プロジェクトのコア部分の謎の隠し方」だ。

この謎は物語のかなり核心にあたるので、終盤までは隠しておきたい。しかしこのゲームの流儀に従えば、知識さえあれば常にアクセスができる状態で設置しておかなければならない。そこで、ふたつの方法で謎を隠している。

ひとつ目は「ワープ装置の仕組み」。ワープ装置は、ちょうど惑星が頭上に来たときにだけ起動するようになっている。それ自体がかなり限られた条件なので、たまたまワープに成功するということはほとんどない。“脆い空洞”でブラックホールに飲まれても、ホワイトホールステーションを発見しそこに向かう生存欲求があってこそ、ワープ装置の仕組みを学習することができる。(脆い空洞のジャンプアクションもめちゃくちゃよくできてた! だいたいのプレイヤーが操作をミスしてブラックホールに落ちるように作られているが、このゲームはそういった難易度もバランスが素晴らしい)

ふたつ目は「砂柱」。双子星から巻き上がる砂柱に飲まれると宇宙空間へ放り出されてしまうため、プレイヤーは自然と砂柱を避けるように学習する。しかも、双子星のワープ装置は天井が壊れていて、簡単に砂柱に飲まれてしまうので、砂柱が来てる時に普通は近づかない。しかし、ワープ装置の仕組みを灰の双子星でも応用できると発見し、砂柱に突っ込む勇気がある者こそが、謎を発見することができる。

双子星の仕組みは実に巧妙だ。設置されている星そのものにもワープ装置が作用することのヒントとしての「双子星」であり、その上に障害物を自然な形で配置する。燃え盛る双子星は砂で埋まることで探索出来なくなっていくが、それに比例して灰の双子星が探索出来るようになっていく……とプレイヤーを納得させるようなロジックを隠れ蓑にし、謎をさりげなく隠している。凄みがありすぎる。

他にも、あげればきりが無いくらいの素晴らしいゲームデザインばかりだった。

もろい空洞の量子知識の塔の上に行く方法、これもすごかった。無重力ならどこでも行けることと、もろい空洞がどんどんブラックホールに吸い込まれて宇宙空間に放り出されていることは、知っているけど繋がらない。地表の落下は恐怖の演出だと感じてしまうからだ。しかし、ここに謎を隠す。これがOuter Wilds。

唯一ちょっとだけ残念に思ったのは「量子試練の塔」。これだけ妙にパズルゲームしてない? これくらい教えないと量子の月に到達できないと思ったのだろうか。各地に散らばった量子の石のギミックもあるのに、この量子試練の塔だけが妙に説明過剰だ。

まぁ、とにかくよかった。制作者にお菓子をあげたい。マシュマロ以外の。

超新星爆発の原因

最後にひとつだけ、なぜ超新星爆発が起きているかについて。

「太陽が自然と寿命を迎えたため爆発した」と書いてある記事も多いけど、多分それは違うと思う。実はマップを見れば、爆発の少し前に彗星の侵入者が太陽に突っ込んでしまっているのがわかる。おそらく、太陽のエネルギーと幽霊物質がなにかしらの反応をして超新星爆発が起きたのではないだろうか?

そうだとしたら、侵入者によってNomaiもHertzianも滅亡させられてしまったということになる。侵入者、凶悪すぎるぜ……。

「もしかして、侵入者の軌道を動かせれば超新星爆発は起こらないのでは?」と思って宇宙船でぶつかってみたりしたけど、やっぱりそれは無理だった。運命は変えられないようだ。

追伸:と思ったけど僕の仮説は違った。詳しくはコメント欄をみてね。

余談

Outer Wildsのサウンドトラック。最高なんだけどさ〜。

OuterWildsの蛍の光である『EndTime』がアルバムのスタートから25分後に再生されるのが最高に惜しすぎる……! 1曲だけ前にずらして、21分後に流れてくれ!

(所要時間22分 20ループ)

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