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【実践探究レポート】保護者もメンターも悩みながら、子どもに伴走する

「子どもの興味のあるテーマがすぐ変わってしまう」
「自分でやると決めたのに、別のことを始めてしまう」
こういった悩みをお持ちの保護者のみなさまも多いのではないでしょうか。
実は、実践探究のスタッフとしてもよく悩むことです。
今回は、ある実践探究(※)の親子の姿から、そういったお悩みのヒントになるような記事をお届けしたいと思います。

※「実践探究」
子どもたちの“好き!やってみたい!”を全力で応援し、伴走するプログラム。
お問合せ先は記事の最後に記載しています。

お母さんの悩み

龍之介(小学3年生)くんは、実践探究でりょうへいくん(小学5年生)とりんくん(小学5年生)と一緒に生き物をバトルさせるカードゲームをつくることに。
元々絵を描くのが好きだった龍之介くんは、いきものカードの絵を担当することにしました。

龍ちゃんの絵

メンターは目標設定の手伝いなどはしつつも、実際のカード制作は子どもたちに任せていたため、
自分たちでプロジェクトが管理できず、龍之介くんが「自分が来週までにどの生き物を何枚描いてくるかわからない」という事態も起きました。
さらに、何枚描くか決まっていても、お家で自分から描こうとしないことも。

お母さんはそんな状況を見て、かなりもやもやしていました。
「一人でやっているならいいけど、他の子と一緒にやっているなら、決まったことを龍之介がやらないと迷惑をかけてしまう」
「やるって決めたなら1枚でもやったら」と思っていたそうです。
ただ、お家で自分からやらないけれど、そのことに対して「どこまで口を出したらいいか」という葛藤もあり、どうしたらいいか悩まれていました。

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自分のニーズに気づく

悩まれるお母さんにとって、ターニングポイントだったのは「子育て探究」でした。
子育て探究とは、2021年8月の1ヶ月間、探究学舎の宝槻圭美と風間紗喜が、実践探究の保護者向けに有料で行った講座です。
週1回Zoomで、子どもたちとどう向き合うか、インプットとアウトプットを通して、内省をしたり、参加者同士で想いを分かち合ったりしました。

そこで、お母さんはNon Violence Communication(NVC)の考えに触れ、自分の満たされたいニーズに目を向けたそうです。

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(このニーズリストから、他の参加者の話を聞いて、満たされていないと思うニーズを出してみる。)

お母さんの満たされたいニーズは、「約束」。
「カード作りを他の子とする上で、1週間に何枚、何を描くという約束は守って欲しい」というニーズがあったことに気づきました。
「ただ、そのニーズは自分がこだわっているだけで、龍之介がこだわっているわけではないんですよね」
「やらなくて怒るのは私だった」
お母さんは、自分の問題と龍之介くんの問題を切り離し、龍之介くんの行動を受け入れられるようになりました。
「何より、りゅうが実践で楽しんでいる顔が答えだなって思った」

ただ、龍之介くんは作りたいという気持ちはありつつ、1週間の時間の感覚がまだ曖昧らしいので、「(実践の)金曜まであと◯日だから、この日は何枚描いたほうがいいね」というように、彼の苦手なことに関するフォローをし始めたそうです。

メンター・テル、悩む

その後、一旦いきものカードづくりチームは解散したのですが、龍之介くんは自分で別のカードゲームづくりをすることに決めました。
ただ、同じ曜日のクラスでベイブレードの探究をしている子たちがいて、龍之介くんはベイブレードに夢中に。

ベイブレード1203

いきものカードづくりを続けたいという思いもありつつ、ついついベイブレードだけで実践探究の2時間を使うことも。お家に帰ると「いきものカードづくりできなかった、、」と振り返っていたそうです。

さらに、ベイブレードを一緒にやっているしんたくんとポケモンカードで一緒に遊ぶようになったことから、龍之介くんは生き物の絵よりポケモンの絵を描くことにハマり、生き物カードづくりはストップしてしまいました。

私も龍之介くんのメンターとして、彼が自分で立てた目標に向かわない時、正直心にざわつきを感じました(笑)
「自分で決めたことをやらなくてもいいと思ってしまったら、他のことも中途半端になってしまうのでは?」という恐れがあったからです。

ただ、カード作りも、明確に誰かに遊んでほしいという想いや、発表の場があるわけではないので、
むしろ、龍之介くんが夢中で楽しみ探究している、ポケモンやベイブレードで目標を立てたほうがいいかもしれない、というふうに考えが変わりました。

りゅうちゃんポケカイベント

「一度始めたことは完成させたほうがいい」という考え方もありますが、実際始めてみて「やってみたら楽しくない」「できると思ったけど今の自分には難しすぎる」といったこともあります。
やったことのないことはやってみないと、かかる手間も、楽しさも、得意・不得意もわかりません。

龍之介くんのように、人との出会いによって「やってみたい!」と心が動いたことから、様々な新しいことにチャレンジしてみることも、自分の「好き」を見つけるプロセスの一つなのだと思います。

もちろん、目的のないままただ遊ぶだけにならないよう、目的や目標は子どもたちと関わりながら一緒に決めて、これからも子どもたちの好きに伴走していきたいと思っています!


好きなことが見つからなくても

最後に、私から(他意はないのですが)お母さんに少し意地悪な質問を聞いてみました。
「もし龍ちゃんが絵を描くことに飽きたらどう思いますか?」

お母さんは、お父様(龍之介くんのご祖父)から言われたことが心に残っていると答えてくださいました。
「(龍之介くんは)絵を描くことに今は夢中になっているけれど、いつやめるかは誰にもわからない。だから、特別なものは何もなくても自分の子だからな」

龍ちゃん一家

好きなことでチャレンジをすることは素敵なことですが、たとえ今好きなことが明確になくてもその子のすばらしさは変わらない。私たち実践探究のスタッフにとっても、「どのように好きなことを見つけるのか?」というプロセスに関しては模索中ですが、まずはどんな子どもたちも安心していられる場所をつくりたい、という想いに改めて気付かされました。

記事を書いた人:テル

企画・編集:あい
探究学舎広報担当。【価値ある接点の最大化をデザインする広報】を目指し、日々楽しく奮闘中。趣味はドライブと朝活。

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子どもたちの「好き!」「やってみたい!」は千差万別です。
何が正解なのか、成功なのかは誰にもわかりません。
子どもたちとご家族とメンターが、関わりの中で一歩ずつステップを上り、積み上げ、作っていく。そのプロセスが豊かで、尊いものであるということこそ、わたしたちが「実践探究」を通して伝えていきたいことです。

実践探究は現在試行錯誤しながら、探究学舎三鷹教室にて運営しています。
ご入会を検討されている方、どんなプログラムなのか詳しく知りたいという方は、以下のメールまでお気軽にご連絡ください。
practice@tanqgakusha.jp(担当:宮脇)

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おまけ

りゅうのすけくんのギャラリー

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