カフェオレと月見うどん
風が強い夜だった。
仕事から帰ってきてコートを脱ぐと窮屈な感じが抜けてほっとした。
春だから薄着するようになったけどまだ少し寒いから内側に薄くても温かい肌着を着て調節している。
それがなんだか暑過ぎて汗をかいてしまった時はものすごく悲しい気持ちになるんだよなぁ。
帰り道の途中、思いのほか喉が渇いてたから通りにあった自販機で香りのついた炭酸水を買った。すぐにふたを開けて飲んでみた。しゅわしゅわと音をたてて小さな泡をぴちぴちと弾かせながら喉の中を通っていった。それは、柑橘の香りの息をマスクの中にこもらせて爽やかな気持ちをくれた。
その残りを今飲んでいる。
弾ける泡の勢いが少しだけやわらかくなっていてごくごくと音をたてて飲むことができた。香りは全く抜けていない。だから美味しく感じられた。
仕事がとても忙しいから時間をかけて春を感じられるような場所に足を運ぶ余裕がない。それでも日々の営みは前に向かって進んで行く。
時々ゴツン!と何かにぶつかってしまってつらい気持ちにもなるけれど仕方がないから諦めている。
流れの中にいられることで何とかこうして生きていられる。
そのことに感謝して生きていくしか仕方がなくてしょうがないからそうしている。
今日お昼に食べたおうどんが思いのほか美味しくて嬉しかった。
澄んだおつゆとつるつるとした滑らかなのど越しの麺と。
丁寧に細かく細かく刻まれた細めの葱の緑がきれいで目に鮮やかで。
そういうシンプルなおうどんに、パカン!と割り入れた生卵。
それがとろりと麺に絡んで甘みを添えて、つるつると喉の奥に入っていった時、なにもかも忘れてそれだけに集中できた。
美味しかった。
五百円玉ひとつであんなに美味しいものが食べられるなんて、本当に夢みたい。ものすごく美味しかったな。感動した。
ダイエットしてるから夜は主食を抜いている。
そのおかげで深く眠れてからだが軽いように感じる。
でも時々物足りなくて悲しい気持ちになってしまう。
だからこそお昼の食事は大切なのだ。
とろんとした生卵。つるつるのうどんの麺。透き通るような金色のつゆ。
きれいだったし美味しかったな。
お風呂のお湯を溜めながら洗濯する服を洗濯ネットの中にしまって、洗濯機を回した。
その時窓を細目に開けて、外の空気を少しずつ入れていった。
よどんでいた室内の空気に外の空気が混じり込んでくると、少しだけ息をするのが楽になる。
そうして息を吸い込みながら明日の朝もあたたかいカフェオレを今朝とおんなじように淹れて飲んでから仕事に行こうと考えた。
ちゃんとドリップしたコーヒーで丁寧に作ろう。
お砂糖は控えめにしてミルクをたくさん入れて飲もう。
そういう小さな楽しみが私を生かしてくれている。
それぐらいがちょうどいい。
それぐらいでちょうどいい。
ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。