緊張、手の震え、そして点数計算【Mリーグ】
こんばんは。
場末雀荘出身の田ノ倉です。
突然ですが皆さんは、
たくさんの人にじっくり見られながら麻雀を打ったことがあるでしょうか?
フリーでバカ勝ちしているときにメンバーや常連数人が後見してるとか、
そういうレベルの話ではなく。
例えば60人規模以上の大会で決勝卓まで残り、
56人がじっくり自分の麻雀を見ていた、とか。
あるいは放送対局で打ったことがある、とか。
あとは自分が打ってる映像使った勉強会に出たことがある、とか。
麻雀歴が長い人なら、一度や二度はこういった経験があるのではないかと思います。
ぼくも一度だけ経験があり、それは確か72人だかそれくらいの大会でした。
そこで総合成績6位。
なんとも言えない順位ですが、あとは決勝卓を見るだけだと気を抜いていたところ、
総合4位の人が持病の発作が出て棄権。
総合5位の人は予選終了時点で帰宅しており棄権。
まさかの総合6位のぼくが決勝卓に入ることになりました。
その大会では予選の持ち点を半分にして決勝卓を行うのですが、
開始時点で3位の人と60ポイント以上の差があり、
2半荘しかない決勝で優勝するには、相当な奇跡が起こらないと厳しい、
要するに“ほぼ目無し”状態でした。
ただでさえ70人近くに見られながら麻雀しなくちゃいけないのに、
さらに目無し特有の特殊な立ち回りが要求される場面。
自分の打牌によってゲームの興をそぐ可能性すらある場面。
プレッシャーは半端ないものでした。
いざ対局が始まって集中してしまえば見られてることなんか気にならないだろうと諦めて卓についたのですが、この考えが甘かった。
まず手が震える。
というか、牌が手につかない、馴染まない感じ。
うまく手に力が入らず、いつもは全種類ノータイムで判別できる盲牌も、
全然機能しない。
いつも視覚よりも盲牌による感覚でツモ牌と手牌の繋がりを把握しているぼくとしては、
その時点でいつもと違う、勝手が違うような状態での進行となっていました。
そもそも普通に打っているときでも、
牌山を崩さないようにとか、色々気を使いなら小さい牌を扱うゲームなので、
場合によっては手が震えたりする場合があります。
通常時でもそうなのだから、さらに緊張する場面なら手が震えるのはさらに至極当然といった現象なのですが、
いざその場を体験すると、
緊張して手が震えているという事象を見て「自分は緊張している!」と強く思い込み、
「この震えをなんとかしなきゃ」とか思うことでさらにプレッシャーがかかる、みたいな悪循環に陥るのです。こわいです。
そしてふわふわした状態で放銃も和了もなく迎えた最初の親番。
ドラ3のタンピンイーシャンテンでリーチを受け、
一発目に引かされたのがリーチ者が第二打で打っている五萬のスジである二萬。
二萬をツモった瞬間、なんとなく嫌な予感がしました。
普段ならその予感に沿って現物を打って回るところ。
ただ客観的に見たら明らかに押しの一手。
多くの人に見られていて、
かつ、自分の打牌で誰が勝つか、負けるかが決まる。
そんな状況では、すべて自分の打牌に説明ができなければいけない。
ぼくはそう考えました。
二萬が危ない、というのは完全に第六感的なもので、
理論上、期待値で言うなら明らかに二萬押しが優位です。
「見られているから、説明のできる打牌をしなければいけない」
そんな思いで、二萬を押しました。
案の定、一発でカン二萬への放銃となり、
裏も乗って8,000点の失点。
ここから、自分の直感にも頼れない、
かといって理論通りにも打てない。
どっちつかずのめちゃくちゃな打牌が繰り広げられます。
普段なら気にも留めないレアケースの放銃で、
一気にメンタル的に崩れてしまう。
それが見られているというプレッシャーです。
いつもなら「期待値的に押し一択なんだからしゃーねーだろ」くらいで終わりです。ですがいつもならできるそういう切り替えができない。
また、あきらかなヒューマンエラーに対して異常に敏感になります。
単純な3面張待ちでも異様に時間をとって待ち確認をしたり、
フリテン確認をしてからリーチするようになります。
これも見られているからです。
そんなビビリ感満載の中でもある程度牌は寄ってきており、
最初の半荘は2着となりました。
「ラスじゃなくて良かった・・・」じゃない。
この二着という結果が、地獄の始まりでした。
と、この話はここまでにして、とにかく何が言いたいかというと、
自分みたいな小心者は、100名にも満たない人に見られる状態で麻雀を打つというだけで、
メンタル的に崩壊し、手は震え、いつも通りの打牌がまったくできない状態となるわけです。
実際、同じような体験をされたことのある方はけっこういるはずです。
これがさらに大きな舞台となり、
全国の麻雀ファンがこぞって見ているような対局だったら・・・
想像しただけで恐ろしい限りです。
Mリーガーの皆さんは、基本的にそういう場で対局を行っています。
これまでも幾度となく放送対局は行ってきている猛者たちだと思いますが、
視聴者の数が圧倒的に違います。
規模がでかすぎます。
対局するスタジオにしても、他のもっと狭くて雑然とした場所ではなく、
広いスタジオにポツンと卓が置かれていて・・・
という状況で、他の放送対局と比較してもかなり異質な空間らしいです。
そして視聴者数の増加や特殊な環境は、それに伴いプレッシャーも増加させます。
Mリーガーも人間ですから、そのプレッシャーに耐えられず、
ミスをすることもあるでしょう。十分理解できます。
ただ、ただですよ。
Mリーガーというのは、今までの麻雀プロというものとは少し異なり、
いわゆる他のプロスポーツに近い形態でのプロ、という形になっているわけです。
チームというか、スポンサーと契約してお金をもらっている。
大きなプレッシャーのかかる大舞台で、それをはねのけて実力通りのパフォーマンスを発揮する、それ込みでギャラをもらっているはずです。
それでも人間ですから、多少のエラーはあるでしょう。
一流プロ野球選手たちでも簡単なフライを落球することはあります。
だからちゃんとエラーっていう表記が用意されているわけです。
それはわかります。
しかし、エラーはたまにやるからエラーなのであって、
頻繁に発生するのならそれはその選手の実力、ということになるのではないでしょうか。
例えばさっきの例で、2試合に1回くらい簡単なフライを落球するプロ野球選手がいたとしたら、それはもう「エラー」ではなく、
単純に彼が「守備が下手な選手である」と評価されても仕方ありません。
そして麻雀における70符以下の点数計算というものは、
野球で凡フライをキャッチするよりも簡単なことだと思います。
とはいえ相当なプレッシャーのかかる舞台ですから、
ごくまれにエラーすることもあるでしょう。
ただそれがエラーで済まされるのは、
ごくまれに起こる場合だけです。
そしてプロ競技において、
そういった類のエラーが多発した場合に起きるのは、
まず第一にその選手の評価が下がること。
それだけならまだいいのですが、その次に、
観客や視聴者が、「シラケる」ということが起こります。
本気で情熱を傾けて、ときにはお金も使って、
応援しているのに、なんだよこれ、と。
なにこれバカバカしいじゃん、と。
一気にシラケる、冷めてしまう。
この熱狂を外に、どころではなく、
熱狂自体が冷めてしまう。
選手一人のそういった度重なるエラーによって、
そのフィールドで高い水準のパフォーマンスを発揮している選手たちでさえ、
ひとまとめにして、冷められる。
そのステージ自体の価値が、下げられてしまう。
もちろんこれは麻雀という競技の面からみたときだけでなく、
興行として、エンタメとしてみたときにも、同様に「萎え」みたいなものを生じさせます。
エンタメとしては、まれに起こるヒューマンエラーは、
選手たちの人間味、もしくは極限の緊張状態にある、ということを示す、
ドラマ性のあるものとして楽しめます。
ただそれは、ごくまれに起こるからです。
頻繁に起こっていては、ドラマ性もクソもありません。
ただシラケるだけです。
ファイナル進出を賭けた半荘のオーラス、
ここで負ければ自分のチームは選手入れ替えがある。
その緊張・プレッシャーから、普段は牌の扱いに定評のあるプロが、
牌をこぼしてしまう、とか。
そういうのは極限状態を端的に示すドラマ性のひと要素として許容されるわけですが、
いつも牌をポロポロこぼしている人がその時も牌をこぼしました。
そんなのはエンタメ性の欠片もないわけです。
あと問題なのは、麻雀における点数計算、点数申告というのは、
ミスがあっても、限定的な状況を除いて、ただちにその選手、チームの敗着につながるわけではない、というところです。
7,700点の手を5,800点と申告したところで、
その場で訂正が入る、というか、ルール上7,700点の手は7,700点の点棒をもらわないといけないわけなので、
誤申告した選手が損をするわけではありません。
点数計算のミスが敗着につながるケースとしては、
オーラスで上位をまくりたいときに正しい手組みができなくなる、
くらいでしょうか。
タンヤオドラドラの出和了5200でまくれるのに、
タンヤオドラドラを3900だと勘違いしていたためにリーチしてしまい、
和了を逃す、とか。
先程野球を例に出しましたが、
凡フライを落球する、というのはちょっと違いますかね。
これだと敗着に繋がるので。
例えば1ストライクの3ボールの状態で、
打者が空振りをしましたと。
そうしたらおもむろに打者がうなだれて打席から離れてしまった。
いまの空振りで2ストライクではなく3ストライクでアウトだと勘違いしていたと。そんな感じでしょうか。
おそらく、いやいやまだだよとまわりから言われ、止められ、
また打席に入るのでしょうが、これが直接敗着となることはほぼ無いでしょう。
こういう類のミスというのは、ミスをした人やそのチームが直接被害を受けないので、
たまにならいいんですが、繰り返されるとなんだかモヤッと感が残るんですよね。
観客の興を削いだり、白けさせたりした行為に対して、
その行為をした人やチームがダメージを受けていないというか、
言い方悪く言えば罰を受けていないというか。
これがまだチョンボだったりすると、
罰符があるので、まあしょうがないよね、というか、
ペナルティは受けているし、これで一旦水に流して、、、みたいな感じになるのですが。
まあそれでもあまり頻繁にチョンボされてもそれはそれで萎えるわけですが。
こうなると、このモヤモヤは、Mリーグという舞台そのものに向けられたり、
ミスをした本人やその人を選抜したチームに直接向けられたりするようになるわけです。
俺たちのモヤモヤが収まんねーぞ、と。
溜飲が下がんねーぞ、と。
いま麻雀業界では誹謗中傷が問題になっているようですが、
しかし今回の例は、まあ叩かれるよなあ。。。という感じです。
たぶん一番いいのは、
チームから直接本人へのペナルティが課されることを発表するなり、
本人への厳重注意を行ったことを発表するなりして、
本人が何かしらのダメージを受けたということを知らしめることなのではないでしょうか。形だけでも。
叩いている人たちは、
おそらく何もお咎めなしの本人に対して、
何かしらのダメージを与えたいわけです。
単なる嫌がらせ目的のひともいれば、
お前まじでやばいぞ、と戒め目的の人もいるでしょう。
意図は違えど、与えたい結果は同じわけです。
そこでチームが何かしらの罰を与えたと発表すれば、
おそらくそれ目的で叩きたい勢の溜飲は下がるはずです。
そして、団体戦であると銘打ってはいるもののあくまでも個人戦であるような、
不思議な枠組みのなかにあるMリーグだからこそ、
なにか炎上が起こったときのチームの対応というのはわりと重要になってくるのではないかと思っています。
長いので一旦ここまでとし、
次回はぼくが今回の件と絡めて懸念していることを書きます。
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