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「中ビーム」沼

こんばんは。
場末フリー雀荘出身の田ノ倉です。

先日、久しぶりにマックでてりたまを食べていたら、
近くに座っている青年が一緒にいた女性から
「ね、チュンビーム、ってなに?」
と聞かれていました。


ああ、麻雀の話か。
この前の多井プロのやつをYouTube切り抜きかなんかで見たのかな。


「チュンビームはチュンビームでしょ」
「だから、なんなのそれ」

適当に流そうとした青年だが、
彼女は逃さない。


確かに考えてみると、
「中ビームとは?」
と言われても、僕らからしたら、困る。

でも知らない人からしたら、
ちょっと気になる存在ではありそう。
何か元ネタがあってそれにかけているのでは?とか、気になる人はきっと気になる。
実況のコバミサも解説の竹内プロもなんだかちょっと楽しそうに説明していたし、
きっと麻雀する人だけが知っている何かがあるんだろう、と。

ただ、それを説明しろ、と言われると、困る。
だって期待されているような「何か」なんて一切無いのだから。

まあ、現象そのものを説明することは可能である。

例の彼はその愚策をとってしまった。

「中を逆さまに切ること」

しかしこれに対してツッコミが入ることはわかっている。

「え、逆さまに切ったから何?」
「中だけは毎回ちゃんとした向きで切らなきゃいけないの?」

案の定こうなった。

しかしこうなることは自明である。

中を逆さまに切ったら中ビームになる、だからなんなのか?
中を逆さまに切ったら必ず中ビームになるのか?

そういった通り一遍の疑問はまったく解消されない。

ただ、中ビームとは言葉で簡単に説明できるほど浅いものではない。

中ビームについて深く知るには、
実際に体験し、体で覚えるしかないのである。

考えてみてほしい。
我々はすでに中ビームについてそれなりに把握しているが、
それは誰かから説明されたり、
教えてもらって得たものだろうか?

おそらく、YESと答える人は少数派であるに違いない。

実戦を通じて中ビームと接し、
体で学んでいったはずである。

こういう考えは前時代的と言われるご時世だが、
実際、世の中には明確にマニュアル化、
明文化して説明できないことが多数存在する。

例えば、黄色いスーツに蝶ネクタイの愉快なオジサンが
「ゲッツ!」
と言いながら簡単なポーズを取っているだけなのに、
ダンディ坂野氏は未だに営業で人気がある。

これを各要素で分解し、
マニュアル化してそれを別の愉快なオジサンがまるまる真似をしても、
同じような人気が出ないことは自明である。

同様のことが中ビームにも言える。
中ビームを構成する要素も、
分解して明文化してしまうと単純でつまらないものである。

それでもなお中ビームが愛されているのは、
簡単に説明できない何かがあるということである。

通り一遍の説明だけは足りず、
実際に中ビームに接していくという経験が必要となる。


例の彼は彼女からの追求を完全に無視し、
ディズニーランドに行くかディズニーシーに行くかの話を切り込んでいった。
見事に話題を逸らせることに成功していたが、
これは彼の完全なファインプレーである。

この程度で話題を逸らされてしまうような意志しか無い人間に、
中ビームについてうかつに説明することはできない。

中途半端に知識をつけてしまった彼女が、
どこか一見の雀荘でいきなり場も読まずに「中ビーム!」とかましたら、
それこそ事件である。

彼はそこまで危惧し、まず彼女の意志を試すためにディズニーの話題を振り、
それに乗ってきてしまった彼女にはまだ早いと判断してスマートにそのまま話題逸らしを行ったのである。

おそらく、そこで彼女が食い下がってくるようなら、
仕方ない。
彼女の強い意志を汲み取り、
そこから2時間ほど中ビームについての講義がはじまったに違いない。

その講義を受けてやっと中ビームの入り口に立てる。
ここからは最低限の知識をもって実戦に挑み、
体で覚えていくしかないのである。

・中ビームを使ってもよいメンツを見極めること
・20代の若者に使用して「え?」みたいな顔されることがあること
・わりと深夜のほうが打率がいいこと
・何なら朝4時くらいの使用が最も感触が良いこと
・ダントツの人が使用すると微妙な空気になること
・その日の負け頭に使用されたらできるかぎりちゃんと反応してあげたほうがよいこと
・最悪の場合、白でブロックできること
・使用された側のリアクションが未だに定まっておらず、実は非常にセンスを要求されること

など、これから実戦で身につけていくべきことは枚挙にいとまがない。

一度中ビームの世界に足を踏み入れたが最後、
まさに「中ビーム沼」への第一歩となるのである。

最近では、この中ビーム沼にハマるのを避けるため、
中ビームを知っているのに知らないフリをする若者がいるという。

自分なんかは「これで先輩方にかわいがってもらえるなら」と積極的に中ビーム沼に飛び込んだものだが、
「タダ酒が飲めてしかも可愛がってもらえる」のであっても終業後の上司との飲みは避ける若者が多いこのご時世。

中ビームも避けられる悪しき慣習となってしまうのかもしれない。


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皆さんは
「中ビームってなに?」
と聞かれたときにどう説明するでしょうか?

ぼくは一晩考えても、いい説明が思いつきませんでした。
みんながクスっと笑うような一発ギャグについて、
「何がどう面白いの??」
と聞かれてそれを説明するときのような地獄感が・・・・

良い説明があれば、ぜひご教授いただきたいものです。


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