蛍が来たんだ

昨日、眠い目を擦りながら、

足を引き摺り歩いていると、

玄関の外で何かほわーっと光っているのを見つけた。

まさかとは思ったけれど、

夜中でなければ外に出られるような恰好ではなかったのだけれど、

やっぱり確かめたくて玄関の扉の外へ出た。






やっぱり蛍だった。



この街に移り住んで初めてのことだったと思う。

いや、前にもこんなことがあったような気もする。

もはや記憶は定かではない。

でもただただそのことが嬉しかった。

僕の気持ちなんて単純なものなんだ。

でも都会ではきっと起こり得ないことだし、

改めてこの街に住むことを選んでよかったと思えた。

僕の選択は間違っていなかったんだ。


人生において、何が正しくて、何が間違っているかなんて、

誰にも決められない。

だから人生は自分で決めていいんだ。

そうだそうだ。

そうだそうだと頷きながら布団にもぐったのち、

気付けばすぐに寝てしまったらしい。


翌日の朝、昨日の出来事は夢だったような気がしてきたけれど、

そんなことやっぱりどうだっていいやと

微笑んで、

まだ眠っていたい気持ちを引き摺りながら、

今日を突き進むのだ。



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