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元ネタから掘り下げるタンホイザー_takt op.(タクトオーパス)考察
皆さんこんにちは。
takt op.(タクトオーパス)やってますか?
私はイラストが綺麗なこともあり、ちまちまやっていたのですが、先日大事件が起きました。
そう、タンホイザー実装です!!
オペラの中で『タンホイザー』が最も好きな私にすればこれは重大事件です。
ゲームをやっていて、今までオペラのタンホイザーに焦点が当てられたことなんてほとんどないので!!!マチカネタンホイザとかもいますが、オペラ要素は服くらいですし……
というわけで、ゲットして一通りストーリーを読んできました。(迫真)
![](https://assets.st-note.com/img/1700056185216-7sqWOvHfW8.png?width=1200)
いやーー、すごいね、この子。最初にイラスト見た時は「意外と元ネタ要素少ないのかな?」と思ったのですが、全然そんなことなかったです。
ですが、こんなに素晴らしいのに、多分タクトオーパスユーザーの皆さんに完全に良さが伝わってない!!!(なぜなら元ネタのオペラが日本ではあまり人気じゃないので……)
ということで、タンホイザーのストーリーを、元ネタのオペラの視点から考察、解釈していこうと思います!
そもそもタンホイザーってどんな話?
というわけで、まず『タンホイザー(タンホイザーとヴァルとブルクの歌合戦)』のあらすじを解説していきます。
とか思ったけどやまみちゆか先生が分かりやすくまとめてくださってました!ありがとうございます!
![](https://assets.st-note.com/img/1700130037023-Atzftaiz5u.png?width=1200)
まぁ、訂正させて貰うと、エリーザベトはタンホイザーの恋人ではなく、歌合戦は友人と恋人を巡るものでもないですが……。
また、タンホイザーのモチーフを考察するにあたって、いくつか必要な要素が省かれてるので補足しておきます。
・タンホイザーは吟遊詩人で騎士
・中世ドイツには直接的な性欲、肉欲を指す「低きミンネ」と敬愛などの性的な意味を含まない愛情を指す「高きミンネ」の概念があった。
・騎士は「高きミンネ」のみを持つべき、でもタンホイザーは「低きミンネ」が正しいと考えている
一応この後にざっくりとした要約があるのですが、ここまでのを把握してれば読み飛ばして大丈夫です!
<タンホイザーあらすじ>
タンホイザーという腕の良い歌人(吟遊詩人)がおり、彼はヴァルトブルクで名を馳せていたがある時居なくなってしまう。 それから半年ほどたったある日、人々は森の中でタンホイザーを発見する。
実は、彼は愛の女神ヴェーヌスが支配するヴェーヌスブルクで過ごしていた。ヴェーヌスは、直接的な性欲、肉欲を指す「低きミンネ」を肯定する存在であり、タンホイザーはそこで酒池肉林の生活を送っていた。
(これはこの頃のドイツ(中世ドイツ)ではよくないことである。)
そんなことは知らず、彼の帰りを喜ぶ同僚の歌人達と友人の騎士ヴォルフラム。
なぜかというとタンホイザーがいなくなって以来、彼らの「高きミンネ」(敬愛とか純愛とか性的な意味を含まない愛情。現代的に言えばクソデカ感情)の相手である領主の娘、エリーザベトが塞ぎ込んでしまっていたからだ。
タンホイザーが帰ってきたことで、エリーザベトは元気を取り戻す。
それを喜んだ領主が歌合戦を開くことを宣言する。(ここで歌合戦開会の際に歌われるのが「大行進曲」)
しかし実のところ、タンホイザーは閉鎖的で「高きミンネ」しか認めないヴァルトブルクの社会を嫌がり、ヴェーヌスブルクへと逃避していた。
だが、そこでの生活にもまた飽きてしまい、元へ戻ろうとする。
それを恨んだヴェーヌスに、「享楽の良さを知ったお前はどこへ行っても私を讃える歌を歌う」と予言される。(その歌が「ヴェーヌス讃歌」)
歌合戦では他の歌人が「高きミンネ」をテーマに歌うが、予言の通り、タンホイザーは1人だけヴェーヌスを讃えて「低きミンネ」を肯定する。
しかも、“ヴェーヌスブルクへ行った事”まで言ってしまう。
領主はそれに怒り、タンホイザーは斬られそうになる。しかし、エリーザベトが彼を許して欲しいと嘆願する。
最終的に、タンホイザーが巡礼の旅に出て贖罪をすることで許されることとなった。そして、タンホイザーは巡礼者と共にローマへと向かう。
季節は巡り、巡礼者たちはローマ教皇に赦されて帰ってくるが、タンホイザーはその中に居ない。しばらく後にタンホイザーは1人で戻ってくる。
タンホイザーの帰還を喜ぶヴォルフラム。しかし彼は教皇に「お前の罪は奇跡でも起こらない限り絶対に許されない」と宣言されていた。
その事実に彼は絶望し、ヴェーヌスブルクへと帰ろうとする。
その時、ヴォルフラムがエリーザベトが命に換えてタンホイザーの恩赦を求めた事を話す。
彼は後悔し、エリーザベトの亡骸の前で泣き崩れる。
しかしそこに教皇が現れ、エリーザベトの死によって奇跡がなされた事を告げる。
<タンホイザーあらすじおわり>
と言うわけで一通りあらすじもわかったところでタンホイザーちゃんに散りばめられた元ネタの考察を行なっていきます!
※ここではティーブレイク&キャラクタークエスト→契約回想の順に元ネタの考察を行なっていきます。そのためガッツリネタバレが含まれているのでご注意下さい!!
ティーブレイク&キャラクタークエスト編
まずはティーブレイクとキャラクタークエストです。直接的に言及されてはいませんが、各所に元ネタとつながる部分が点在しています。
オペラのタンホイザーについて
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『タンホイザー』が改訂された話するんだ?!マニアックすぎる……!(感動)
ちなみに、おおまかにはドレスデン版(初版)とパリ版(一幕にバレエが入っている)とウィーン版(全体的に分かりやすくなってる)の3つなのですが、そのほかにもちょいちょい演出などが変わっているので、細かい事を気にしないタンホイザーには詳しく話すほどのことではなさそう。
肉欲と食欲
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登場PVでも発言されているため、印象に残っているコンダクターは多いと思います。
なんで突然肉欲?!とも思うでしょうが、タンホイザーのあらすじを読めばその理由は明らかで、肉欲はオペラの話を踏まえて発言している事がわかります。
オペラのタンホイザーは肉欲に負けて女神ヴェーヌスが支配するヴェーヌスブルクへ赴いています。
その事を比喩して、「私はオペラのタンホイザーとは違って、肉欲なんかに溺れないぞ」という事を言ってるわけですね。
余談なのですが、ムジカート画面で流れるピアノ編曲は、タンホイザーがヴェーヌスを讃えるヴェーヌス讃歌と、歌合戦が開催される際に流れる大行進曲からできています。タンホイザーちゃんは肉欲を否定してるのに……。
騎士道
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![](https://assets.st-note.com/img/1700133746326-QTW4LSvSXj.png?width=1200)
タンホイザーのキャラクタークエストにおいて、彼女を形容する言葉として、「騎士」が多用されています。
前述したように、オペラの主人公であるタンホイザーは、腕の良い歌人であり、騎士でもあります。
(因果としては逆で、本職は騎士だが歌も歌うというのが多かった)
中世ドイツの騎士達は「高きミンネ(純粋な愛)」重んじていて、それはオペラ内でも同様です。
つまり、「肉欲より食欲」発言と同等に、ここからもタンホイザーちゃんは低きミンネ(肉欲)でなく高きミンネ(騎士)の側であろうとしていることがわかります。
また、余談ですが
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![](https://assets.st-note.com/img/1700132765944-rl1H0BGY9k.png?width=1200)
休日は食べて寝るだけ。自分の部屋にはあまり帰らないため、家具は最低限しかなく、埃をかぶっている。などと、割と適当な一面もあったりします。
この事について実はタンホイザーちゃん自身が言及しています。
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わりとテキトーである事を自称している
休日は食べて寝るだけの生活と言えば、ぐうたらなイメージが先行するが、欲求に弱いと言いかえれば、本質的には、肉欲に溺れてヴェーヌスブルクに行ったオペラの方のタンホイザーと似ている側面もあるのかもしれないですね。
食欲、睡眠欲、会話欲
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人間の三大欲求というと、「食欲、睡眠欲、性欲」であるが、ここでは性欲の代わりに会話欲となっています。
前述した通り、タンホイザーは「タンホイザー(低きミンネ)でなく、騎士(高きミンネ)のように振る舞おう」としている、しているはずなのですが……。
※この先契約回想のかなり大きなネタバレがあります!
契約回想編
さて、ここまでタンホイザーちゃんについて色々と見てきましたが、ここで一旦整理します。
・騎士道(高きミンネ)を重んじており、オペラの主人公、タンホイザー(低きミンネ)とは違う事を強調している。
・しかし意外と欲望に流されやすいという、オペラのタンホイザーと似た点もある。
さて、以上の点を踏まえて契約回想の考察をしていきます!
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初手から自身の弱みについて話すタンホイザー、ティーブレイクから読み取れるように、彼女は欲望に流されやすいところがあるようです。
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そして、会話欲の下りで仄めかされていた、コンダクターに対する好感情を口にするタンホイザー。
しかし、このままではオペラのタンホイザーと同じ末路を辿るのでは……?
と思ったら……
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タンホイザーにとって、コンダクターは肉欲に溺れる事さえも受け入れ、しかも溺れ切る前に引き留めてくれると信用するに足る存在となっていたようです。
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前半部の「迷い、遊び、赦されざるもの」は、肉欲に溺れ、許されない罪を犯したオペラの主人公タンホイザーを指しており、また後半部の「きみの祈り」はタンホイザーのために祈ったエリーザベトを指しています。
オペラのタンホイザーがエリーザベトの祈りに気づいたのは彼女が死んだ後ですが、ムジカートのタンホイザーはもうすでに彼女にとってのエリーザベトを見つけ、そのかけがえのなさを理解しているようです。
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オペラ『タンホイザー』内で歌われた愛の歌はいくつかありますが、その中で最も有名であり、特定の女性に捧げた歌があります。
それが、『ヴェーヌス讃歌』です。
前述したように、この曲はタンホイザーのピアノアレンジの前半部にも使われています。
そう、タンホイザーちゃんは、オペラのタンホイザーが愛の神ヴェーヌスに向けて歌った曲を、自身の愛するコンダクターに向けた曲として歌っているのでした!
ちなみにこの『ヴェーヌス讃歌』の部分はイベント画面ではカットされており、PV以外ではタンホイザーちゃんのムジカート画面でしか聞けません!
タンホイザーちゃんを引こう!!!
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終わりに
今回取り上げたタンホイザーちゃんの一連のストーリーは、高潔な騎士であるタンホイザーちゃんがコンダクターに出会い肉欲に溺れそうになっていくものですが、コンダクターはその欲望の対象でありながらも、彼女が欲望に溺れるのを引き留められる存在でもある、という事を示すものだった、というわけです。
あとがき
長かった〜!4900字。ちょっとしたレポートくらいありますね。
完全に契約ストーリー読んだパッションで書いたので一部読みにくかったと思います。
しかし個人的にタンホイザーちゃんはヴェーヌスかエリーザベトどっちかのモチーフで来るものだと思ってましたが、まさかオペラのタンホイザーそのままで来て、コンダクターがヴェーヌスでありエリーザベトでもある、というオチになるとは思いませんでした!おもしれ〜!
このnoteで少しでもタンホイザーちゃんのことが好きになったコンダクターが居てくれたら嬉しいです。
最後に、余談をひとつ。
肉欲と愛の神ヴェーヌスは金星の女神としても知られています。
実は『タンホイザー』内で主人公の友人である、騎士ヴォルフラムはエリーザベトの無事を金星に祈ります(『夕星のアリア』)。
ヴォルフラムが忌み嫌うヴェーヌス(と低きミンネ)は彼が祈りを捧げる金星でもあるのです。
この流れから、ワーグナーは「高きミンネと低きミンネは本質的に大きな違いはない」と考えている、という解釈もあります。
このワーグナーの高きミンネと低きミンネは表裏一体、という考えからすれば、タンホイザーが騎士であり、かつコンダクターに恋する女性でもあるのは自然なのかもしれないですね。
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