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夢で、夢の話
大雨の中、小さな折り畳み傘をさして走っている。大雨だから走ったのもあったけど、それより1秒でも早く彼女に会いたかった。
俺は遅刻していた。
授業が終わってバンドで練習をちょっとやってたら、全然ちょっとじゃ終われなくて、彼女からLINEの通知にも気づけなかった。
彼女とは駅で待ち合わせをしていた。田舎すぎて駅の近くにカフェが無いから、待たせている時間が本当に申し訳ない。カフェがあっても言い訳にならないけど。
数歩で渡れそうな横断歩道の信号が、やけに長くて憎い。
彼女は少し怒っていた。なんでこんな日に遅れるのって。
ちゃんと謝った。その後に降りた駅のカフェでケーキを奢って、今度海を見にいく約束をして、許してもらえた。
夏、電車で移動しただけでも少し疲れる。
いつも楽器を担いでるから夏は結構しんどいんだけど、今日は違った。普段より暑いはずなんだけど一瞬も気にならなかった。(楽器はサークルの部屋に置いてきた)
彼女はウキウキしていた。
これから見にいく映画がずっと見たかったものだそうで、俺にネタバレスレスレの話をずっとしてくる。(以前読んだ小説の映画化で、好きな女優が出ているらしい)
俺は必死で別の話をする。「このツイートが面白くてさ〜」とか。そうしないとこれから2時間大変だから。
途中で彼女が聴いているプレイリストの話になった。(よし!)
最近は専らlampらしい。良いよね〜とか言っているうちに映画館に着いた。
どっちも音楽が好きで、サークルの関係で出会った。彼女はよく邦楽を聞いていて、俺も洋楽をあまり聴かないし、2人ともそこに変なこだわりがあって意気投合した。
映画は面白かった。普通に泣いてしまった。彼女に至っては大丈夫かってくらい泣いていた。「あの猫が急にいなくなるシーンがね泣」と小一時間話して、夜は和食にした。
ご飯屋さんを出てこれからどうしようかって話をしてたら、急に「やっぱ今、海行こうか」と彼女が言って、俺もノっていたので軽くお酒を買って海に向かった。
しばらく電車に揺られて、その間子供の頃の話をした。両方とも海辺の出身だから、家族で行った海の話とか、結構遠くまで泳いだらどんだけ泳げても怖いよねとか、真夏の方程式と容疑者xの献身だったらどっちが好き?とか。
海は綺麗だった。穏やかな海に月が綺麗に反射して、いるのは俺たちと、カニと、ヤドカリ。
だいぶ前に雨は止んでいて、ちょっと砂が湿っていて裸足で歩くとひんやりして気持ちよかった。
「明日どうする?」
「私〜あそこ、前見たさ古着屋、あそこ行きたい」
「あ〜!あのちょっと外れたとこ?」
「そうそう、結構雰囲気あったじゃん」
「そこでさ、俺の一式組んでよ」
「え〜、じゃあ私の組んでよ」
「明日それやる?一日」
「アリ」
「決まり〜」
まぁ、酔っていた。お酒にもだけど、雰囲気に酔わされた。
ちょっと眠たくなってきて、家に帰ることにした。
彼女の家の方が少し手前の駅で降りる。
流石に今日は一緒に寝たいから、彼女の家にお邪魔した。
彼女の家は雑貨屋さんみたいな雰囲気で好きだ。まとまっているような、まとまってないような。友達がロシア旅行に行った時のマトリョーシカだけがなんともこけし的な怖さがあって苦手なんだが、彼女は気に入っているらしい。
ケースに片付けられたアクセサリーはどれも綺麗で、とても似合いそうだった。
海に行く時に買ったお酒は冷蔵庫にしまって、猫ミームで一番好きなのは何かとか、襟足って足の要素無いよねとか他愛ない話をした。
結局寝たのは夜明け前で、起きたら11時だった。
一回家に帰って13時にまた集合することになった。
集まったのは両方ちょっと早くて、予定より一本前の電車に乗った。
終
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