140文字のほっこり。 (3)
140文字で「ほっこりする」物語を書いています。
まとめてみましたのでぜひご覧ください。
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2020/04/12 06:21
山の奥にせせらぎがあった。カニが二匹、手をつないで渡った。てんとう虫が飛んで渡った。桜の花びらが手をつないで笑った。恋人たちが手をつないで渡った。おじいちゃんがおばあちゃんを背負って渡った。月と星が手をつないで渡った。父と母が笑いながら手をつないで行き去った。みんな笑顔だった。
2020/04/11 05:54
真っ黒い大きな牛が夕焼けの中で逆上がりの練習をしている。逆上がりがまったくできない。涙ぐむ大きな牛……あれは自分自身か……もし、こんな光景が目に浮かぶようになったら、黒い牛から身を引いて遠くから眺めて見よう。やがて、あなたに似た牛は見えなくなる。あなたは輝く夕焼けの一部になる。
2020/04/10 05:41
みたらし団子を食べました。だんご三兄弟はどれも同じように甘いけど、なんとなく違う。みんな甘いけどその甘さが微妙に違う。この感じってわかる?そんなことって、どうでもいいこと?そうじゃないよね。この感覚を忘れないようにしたい。だんご三兄弟は同じだけど微妙に違うと感じる、自分の感覚を。
2020/04/09 05:55
路地を通ると、どこからかクチナシの香りが漂ってきた。周りを見渡しても白い花は見当たらない。確かにクチナシの香りだ。調べてみると開花時期はまだ先。街を歩いていると甘いバラの香りが漂ってきた。花屋さんでもあるのかしら、と見渡しても見当たらない。きっと人は、香りでできているんだね。
2020/04/08 05:44
豆腐は白いが、昆布は黒い。蜜柑はオレンジで、ほうれん草は緑。考えてみれば私たちの体は色でできている。桜は桜色だし、空は空色。自然だって色でできている。もうこの世は色だらけと思っていると、そうじゃない。体に一番大切なもの……水や空気には色がない。そうだ!私たちは透明でできている。
2020/04/07 05:57
春の海、狭い岩場をクラゲがスルッと通り抜けた。それを見ていた伊勢海老が通り抜けようとしたが、イガイガが引っかかって動けなくなった。自分を過信して大胆なことをした伊勢海老がもがいている。しばらくすると、大きな波がきてイセエビを押し出してくれた。自然はいつだってみんなの味方だ。
2020/04/06 06:03
春の小川に光が反射してキラキラしています。そのうち一つ二つは小魚が跳ねた光です。菜の花畑がサワサワと動いています。そのうち一つ二つは子ウサギが動いたからです。小さな雲が浮かんでいます。そのうち一つ二つは風と遊んでいます。飛んできた桜の花びら、そのうち一つ二つはあなたの微笑みです。
2020/04/05 05:19
アサリ君はみんなから「やーいアッサリ、根性なし」っていじめられます。先生からも「努力が足らん!」と言われます。ですからアサリ君はもう人生に嫌になって、口を閉ざしてしまいました。他の人が何を言っても返事もしません。でもある日、友達がアサリ君をくすぐると、アッサリ笑ってしまいました。
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