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ブルゴーニュのピノ・ノワールを生産者ごとに飲み比べてみよう。

どうも、丹治です。

 この資料は8/4に開催したワイン会の補助資料です。下書きにしていましたが、特段秘匿することもないため全体公開の状態にすることにしました。

 次回は何をテーマにするかは悩ましいですが、今後もやっていきたいです




①ルイ・ラトゥール

歴史とこだわり

 1797年、ネゴシアンとして創業。ブルゴーニュ2大白ワインのひとつといわれる「コルトン・シャルルマーニュ」の生みの親としても有名でコルトンの帝王とも呼ばれている。“商品に関わるものは自らで”という哲学のもと、近年ではプロヴァンスやローヌでブルゴーニュスタイルのワインづくりに挑戦している。

 ルイ・ラトゥールはネゴシアン以外に実際に畑も所有しており、とりわけテロワールに重きを置いている。有機栽培の採用のほか、大学と提携して気象観測所を設置し細かい粒度で畑を観察し、ブドウの木を剪定した後に出る木や、ブドウの皮(プレスの副産物)から独自の堆肥を作り、化学肥料の使用を排除している。

ブルゴーニュ・ピノ・ノワール

どこ:ブルゴーニュ全土のピノ・ノワール種から選別。
樹齢:平均25年
製法:除梗・破砕後に短期間で果皮発酵(伝統的な開放型大樽)
熟成:ステンレスタンクで10~12ヵ月熟成


②ルー・デュモン

歴史とこだわり

 2000年にニュイ・サン・ジョルジュからスタートした日本人ネゴシアンのブランドであり、醸造所は2003年にジュヴレ・シャンベルタンに設立、2012年以降に自社畑を購入し生産を開始。

 「天・地・人」をモットーとし、「人は天と地によって生かされている」という日本人的な自然に対する考え方を表したものである。「ルー」は会社設立時手伝っていたご友人の娘さんの名前から、「デュモン」とは「山」という意味で仲田さんの故郷である岡山の備中松山城から取っているとのこと。

 名称によってコンセプトが異なり、「ルー・デュモン」はネゴシアンシリーズ、「ルー・デュモン・レアセレクション」はバイヤーから届いた古酒の中で仲田さんが厳選しお手頃価格でリリースするシリーズ、「ドメーヌ・ルー・デュモン」は自社畑ごく少数生産のシリーズ。ルー・デュモン≒ネゴシアンという立ち位置の認識でだいたい問題ない。

 ワイン造りの特徴は、日本人的、職人的と言うべき、細部まで徹底的にこだわる仕事への繊細さとされ、仕込むワインのテロワールや個性を研究し尽くした上で、樽の種類を決め、様々な熟成方法を駆使してワインを仕込み上げる。

 

ブルゴーニュ・ルージュ 2021

どこ:
 ニュイ・サン・ジョルジュ村内のAOCブルゴーニュが28%
 ビオディナミによるメルキュレ村内のAOCブルゴーニュが約20%
 自社畑ものの「ブルゴーニュ・ルージュ V.V.」が約2%
 残りの約50%はAOCジュヴレ・シャンベルタン、
 及びAOCオート・コート・ド・ニュイを格下げしてブレンド。
樹齢:平均樹齢30年以上
製法:
・天然酵母で発酵
・おそらく0~50%の除梗
熟成:カヴァン社製ジュピーユ産の新樽率20%で18ヶ月間樽熟成。
瓶詰:無清澄、ノンフィルター



③ルイ・ジャド

歴史とこだわり

 1859年にルイ・アンリ・ドゥニ・ジャドによって創設。ルイ・ジャドの名前で販売されるワインは全てブルゴーニュ地方の原産地呼称のワインであり、全てのラベルにギリシャ神話に登場するワインの神様「バッカス」のデザインが描かれている。

 ドメーヌとしては、コート・ド・ボーヌやコート・ド・ニュイ、マコネ、ボジョレーまで、ブルゴーニュ全域に約240haの自社畑を所有し、ネゴシアン・エルブールとしても高い評価を受けている造り手。

自らが誇りとするブルゴーニュの真のテロワールを、それぞれのワインを通じて表現すること、そして、長い将来に渡ってそのテロワールが維持されていくこと」を信念とし、 最高レベルのオーガニックの取り組みをしている。

 醸造は天然酵母を使用し、じっくりと時間をかけて行う。最先端の設備を備えたボーヌのラ・サブリエール醸造所を主軸に、コート・シャロネーズのジヴリにあるブルゴーニュ・ジェネリック専用の醸造施設、またシャブリ、ボージョレなど、ブルゴーニュ各所に醸造所を配置し適切な醸造を行う。


ブルゴーニュ ピノ・ノワール 2021

どこ:コート・ドールとコート・シャロネーズの畑の選ばれたブドウ
コート・ドールのワインは深みのあるタンニンをもたらし、コート・シャロネーズのワインは果実味を与えます
樹齢:不明
製法:
・90パーセント除梗
・野生酵母を使用し自動櫂突き装置付きステンレスタンクで3週間アルコール発酵
・収穫年のブドウに応じて部分的または全体的にマロラクティック発酵。
熟成:1/3を樽熟成 ボトリング前にブレンド
瓶詰:
最後に軽めの清澄を行って瓶詰めされます。


④モンジャール・ミニュレ

歴史とこだわり

 1620年から8世代にわたってワイン造りを行ってきた家族経営のドメーヌ。ラベルの絵は、「良いワインは畑からでき、その畑で徹底して働く」という意味がある。

 所有する約30haの畑のうち一部でビオロジック農法を始めており、それ以外の畑はリュット・レゾネ(減農薬農法)を採用。従業員数はほんの20数人であるが、手間暇は惜しまない。除梗率はクリマとヴィンテージによって異なり、例えば特級畑でもグランゼシェゾーはエシェゾーよりも全房の比率が高くなっている。そのほか、樽すらも自前で用意する徹底ぶり。

 数十年前は新樽が強めであったが、近年のワインは樽香が果実味の中に綺麗に溶け込み、洗練さを増したとされ、常に変化をし続けている。このようにテロワールの個性を余すことなく活かし、モダンでありながら古き良き時代の要素も上手く取り入れるスタンスはブルゴーニュワインのなかでも屈指の知名度を持つドメーヌとして君臨している。 


モンジャール・ミュニュレ ブルゴーニュ・ルージュ 2021

どこ:ヴージョ村とフラジェ・エシェゾー村の3つの区画。手摘み。
樹齢:樹齢28~55年。
製法:
・100%除梗したブドウを4~5日間低温浸漬。
・アルコール発酵は30℃で12~15日。
・空気圧でタンニンが強く出ないように1度だけ圧搾
・MLFは軽くトーストしたアリエ産とニエヴル産オーク樽で2ヶ月
熟成:2年使用済みの樽での18~22ヶ月の熟成
瓶詰:清澄は必要に応じ1回のみ、ノンフィルター


⑤ダヴィド・デュバン

歴史とこだわり

 現代のブルゴーニュワインを語る時に避けて通ることのできない、天才と呼ばれる若手醸造家。ブルゴーニュで1991 年からドメーヌを運営(実質一代でDRCに並ぶ)。

 手間をかけ、愛情を注ぎ、丁寧にブドウ栽培をすることに最も力を注いでいる。もちろん殆ど農薬を利用しない。醸造は自然な状態で発酵・熟成させることを理想とし、 醸造テクニックに頼らず、人為的介入を極力避ける方法を採用している。また、2008年以降は全房発酵を全てのキュベで採用。例えば、モレ・サン・ドニは果実味が重く甘いので茎多め、エレガントなシャンボール・ミュジニーは茎少なめのように調節して味のバランスを取っている。

 徹底的な選果を行い、第1段階で完璧なブドウの粒を選び、第2段階では茎まで完熟した房を選ぶ。そして粒と茎の比率をキュベごとに調整し発酵をさせる。葡萄の素材本来の味を覆い隠してしまうような樽のかけ方は行わないように新樽の比率も低くグラン・クリュであっても40%にとどめている。

※全房発酵※
ワインづくりの工程で果実以外に茎の部分まで利用すること。茎まで利用することで、果実だけでは得られない複雑性を得られる一方で、苦味を感じたり、完熟していない場合はネガティブなピラジン香が露出してしまう。ピノ・ノワールは苦味が出にくい品種だったため、伝統的に全房発酵が採用されていたが、最近は技術の進歩により完全除梗してワイン醸造を行うところが多い。ちなみにかの有名なアンリ・ジャイエは完全除梗派。


ブルゴーニュ・ルージュ

どこ:モレ・サンドニとシャンボール・ミュジニーの小さな6つの区画のブドウ
樹齢: 40-60 年
製法:
選果後、B.H.C.Rouge40 ~ 50%の除梗ののち、ピジャージュを実施しながら、 30%の新樽と1~3年使用樽70%で発酵。
熟成: 14ヶ月間の樽熟成
瓶詰:無清澄無濾過


⑥Mount Edward Earth's End

歴史とこだわり

 マウントエドワードのブドウ栽培のスタートは1990年後半に至る。NZのセントラルオタゴにて無農薬、無添加のガメイのワインをリリースしたことで一躍人気に。そのほか、リースリングやピノ・ノワール、グリューナー・ヴェルトリーナなど多くの品種にて自然の赴くままにワインづくりを行っている。
 そんなマウント・エドワードの醸造責任者、ダンカン・フォーサイスが手掛ける独自ブランド。こちらも同様に無農薬、無添加はもちろんのこと、手摘みかつ全房発酵をやっているとか。


Earth's End

どこ:ニュージーランドのセントラルオタゴの有機栽培を行っている自社畑
樹齢:樹齢:10-20年
製法:100%全房(おそらく)、無添加物で自然発酵。
熟成:フレンチオーク樽で11ヶ月間
瓶詰:少量の亜硫酸を利用し無清澄無濾過


感想

ワインの好み(独断と偏見含む)

ルイ・ラトゥール:スタンダードで綺麗、これこそエレガント、上品と表現される教科書的なピノ・ノワールでした。綺麗な色調に、特徴香の紅茶、赤果実。場面を選ばない、安定感がありました。

ルー・デュモン:この会をが始める際、一番最初に開栓したのはこのワインとダヴィド・デュバンでした。なぜなら、直前に開けたら硬くて飲めたものではないと考えたからです。1時間経過後の試飲でしたが案の定硬い。最後まで開ききらずに空になってしまったことが残念でしたが、ジュブレ・シャンベルタンらしい力強さとポテンシャルを感じられる一本。

ルイ・ジャド:これもルイ・ラトゥール同様にお手本のピノ・ノワールでしたが、野生酵母や樽の影響か、より複雑みを含んだワインでした。5本の中では個人的に一番印象の少ないワインでしたが、今回のワインの平均値的な存在だったかなと思います。ちなみに今回唯一ボトルが空かなかったワイン。

モンジャール・ミニュレ:みんなの第一印象の評価がダントツで高かったワインです。ピノ・ノワール特有の花の香りから赤果実、なめし革まで複雑で魅力的な香りを有しており、上級キュベのレベルの高さを想像せずにいられない一本でした。ただ、開栓2時間くらいでヘタれてしまったのが残念。このワインのコルクが6本の中で一番長かったのもこだわりを感じた。

ダヴィド・デュバン:第一印象で「苦手だ」と言った人もいたワイン。開栓1時間後でも硬い。しかし、全房のニュアンスとデュバンらしさは内在していて個人的にはナイスチョイス。開栓2時間後あたりにやっと開いてきましたが、参加者が言っていた通り、10年以上寝かせて飲んでみたい。ちなみにデュバンの21年モレサンドニも熟成前提のため、若いvtを購入する際は注意が必要。

Mount Edward Earth's End:旧世界との比較用に用意したワインでしたが、想像以上に良かった一本でした。NZのピノ・ノワールらしさがありつつ、十分な果実感。4000円でこれが買えちゃったらよくわからない1万円のブルゴーニュのピノなんて買う気失せちゃいますね。今回のラインナップで総合的に好みと個人的に思ったワイン(生産者飲み #とは)。

総括:ピノ・ノワールを教えるならルイ・ラトゥール、香りの印象NO1はモンジャール・ミニュレ、プレゼント用もモンジャール・ミニュレ、肉料理に合わせるならデキャンタしたダヴィド・デュバン、この中でもう一本買うならEarth's End


会を終えて

 私としてもブルゴーニュの生産者を比較して飲む、ということはやったことがなく、ましてはどんな違いがあるのかすらわかりませんでした。今回の会を通して、「自分はこんなワインが好きなのかな?」など考えたりしましたが、大きな収穫は2つあります。

 1つは参加者のワイン一本一本に関する感想をリアルタイムで得られたこと。私は自身でワインを選べるようになりたい、人にワインを伝えられるようになりたいという目的のもとでワインを勉強しました。その中でどうしても自分一辺倒の考えのもとにワインを選ぶ傾向が出てしまうのですが、このような回では自分が思っても見なかった考えが出てくることで自身の立ち位置を振り返るきっかけにもなりました。

 そしてもう1つは生産者の哲学を垣間見れたことです。ワインづくりにおいて大切なことがみんな「収穫したブドウが全て」とか「天地人」とか同じ言葉をいろんな言い回しで言ってるだけで、全てピノ・ノワールからできている以上違いなんてほとんどないのでは、と思っていました。しかし、ワインを飲んでみると全く違いました。これが言語化すると陳腐な表現になるのであえて避けますが、異なる生産者を飲み比べたことによって初めて得られる発見と思いました。

 今回の生産者はリカマンや楽天市場など、販路にアクセスしやすく有名な方々を選びました。そのためリピートするのも良し、一段上のキュベにトライするのも良しです。それ以外にも、たとえば「○○のピノが美味しかったから、それと同じで果実感があるタイプ」みたいに発展していくのも良いかと思います。

 いつもこのタイプのワイン会は参加者側が多かったのですが、主催者側になると、ワインやグラスの運搬手段、運搬動線、ワイン保存、グラス/ワイン/備品の手配、会場用意/設営、採算など考えることが多くこれもまた良い経験になりました。マジで劣化とかブショネに当たらなくて良かった、、、

次回もしありましたら、また是非よろしくお願いいたします。

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