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下垂体前葉機能低下症患者が新型コロナに感染してみた話

夜、救急車の音が聞こえると、「どうか望む行先にたどりつけますように」と祈ってしまうようになりました。2022年7月19日、新型コロナウイルスに感染したとわかって以降、自宅近くを救急車が走る回数が増えているような気がします。気のせいだと思いますが。
感染が判明してから今日まで約10日ほど。おりしも第7波の序盤にやらかしてしまった私の闘病の様を残しておこうと思います。

0日目:夜に発熱したら落ち着いて下げよう

コロナ0日目、つまり、PCR検査で陽性が確定する前日のこと。外出先から帰宅すると悪寒がするような気がします。でも、熱を測ると平熱。気のせいかな、と思ったのですがどうにも落ち着かない。5分に1回、検温をすること約2時間、午後7時過ぎに「まってました」と言わんばかりに微熱が出てきました。
どうしよう。この時期に発熱したらまずPCR検査だよね。夜間休日診療所に行ったらしてくれるのかな。というわけで、神戸市夜間休日にアクセスしたところ、「申し訳ございません。本日の診療はいっぱいになりました」と案内される始末。そうだよね…

でも、この熱を下げてよいものやらどうしたものやら。
私の身体は、もともとの下垂体前葉機能低下症に加え、昨年の副腎腺腫切除手術のため、コルチゾールが自力で分泌できません。コルチゾールは、発熱をはじめとした身体的ストレスがかかったときに、そのダメージを回復する際に必須の副腎皮質ホルモンです。これのコントロールをしくじると、命にかかわりますので、発熱はめちゃくちゃ、非常に、極めて恐ろしいことでした。できることなら、解熱剤でもなんでも飲んで、なかったことにしてしまいたい。
そこで、ダメもとで保健所に電話をかけてみたところ、つながりました。そこで「コロナの熱は、使ったらアカン解熱剤はないので、手元に何かあるなら熱は下げなさい」ということとと、夜間救急の当番病院の調べ方を教えてくれました。でも基本的にどこもいっぱいだと思うので、朝まで待って発熱外来に行ってね、と言われて。
ここでコロナの熱は、インフルエンザのように、「下げるかどうか」に気をつかわなくていいことが分かったので少し安心しました。遠慮なくいつもの頭痛薬で熱を下げて、翌朝を待つことにします。

1日目:結局困ったら主治医にお願い

さて、不安な一夜が明け、神戸市のサイトから発熱外来一覧を探し、診療開始時間の9時前から電話をかけてみたところ、とにかくつながらない。通話中の「ツーツー」音ばかり。たまにつながったところは「申し訳ない、今日の予約はいっぱいになった」だの、「今日は発熱外来やってない」だの。
おい、これ、どうやったらPCR検査を受けられるんや?
すると、発熱外来一覧の中に、「かかりつけの人のみ」の扱いで、下垂体前葉機能低下症を見てくれている神戸大学医学部附属病院が上がっているのを発見し、代表番号に窮状を訴えました。すると、内科受付につないでもらったものの、「えー・・・うちは発熱外来やっていないんですが・・・」とのこと。「でも、市のHPでは名前あがってますよ。熱が出ると大変なことになるんです!」と泣きつき、何度か協議をしてもらって、検査を受けられることになりました。あとから気づいたのですが、この日は私の主治医の外来日で、どうも直接主治医とやりとりができていたようです。さらに感染症内科とも協議してもらったらしく、たまたまこの曜日に大騒ぎしたラッキーをあとでかみしめることになります。
で、急いで病院へ行って、綿棒を鼻につっこんで、「急ぎですねー」と言われて帰ってきました。「今日中には結果出ます」と言われて帰ったものの、昼過ぎには主治医本人から電話がかかってきました。
「新型コロナ陽性、インフルエンザ陰性でした。これから熱が上がってくると思うけど、コートリルは毎食後飲んでね。39度を超えてくるようなことがあったら2錠ずつに増やしてくださいね。」
コートリルを増量することは前日からやっていたので「がってん承知だぜ」といったところですが、なによりも主治医に把握してもらえた、という安心感がすごかったです。
ここで、おそらく主治医が保健所に対してコロナ患者としての発生届を書いてくださるのだろうと思った私は、「保健所に重症化リスクありと見ておいてもらいたいので、既往歴を詳しい目に書いておいてください。何も書かないと、リスクなしになってしまうのです。」とお願いしておきました。これがその後、どれほど役に立ったかわかりません。ただ、私の普段の業務の経験から、保健所がその後の経過観察をする対象にするかどうかは、発生届の記載一本にかかっているようだったので、ここはお願いしておきました。

他方、私の夫は、19日朝の時点ではまったく症状がなかったので、無料PCR検査を予約していました。ところが昼前から「なぁ、熱あがってきたで~」とのことだったので無料PCR検査はキャンセル(注:無料PCR検査所は無症状が前提です。医師の診察が噛まないので、仮に陽性になっても届け出がなされません。有症状になったら発熱外来に必ず行きましょう)。夫のPCR検査ができるところを探すのにこれまた一苦労しました。最終的には個人的な人脈をたどってなんとかその日のうちに検査し、夫婦そろって陽性となりました。

2日目:熱、というよりも

朝一番から、何やら吐き気がする。コロナの症状に吐き気ってあったっけか? 熱は、放っておくと37.0℃を越えてくる感じがするので、上がり始めるとすぐに解熱剤で叩く、をくり返していました。咳はそれほどでもなく、市販の咳止めで何とかなる範囲です。夫は…私よりもだいぶ熱が高そうでしたが。
しかし、当時からの手帳の記載を見返していると、コロナ本体の症状よりも吐き気との闘いが始まっています。これは、副腎の機能が低下している証拠であり、コートリルを増やしてみてはいるものの、今一つスッキリしない状態がずっと続いています。

4日目:救急車に搬送拒否される

2日目から早くも襲ってきた吐き気ですが、日に日に強さが増しています。発熱後3日目にはもう熱は落ち着いていたというのに、そこからずーっと吐き気と闘っている記載が手帳を占めています。それほど熱が上がらなかったので、コートリル10㎎を毎食前に飲んでいたんですが、上がりかけては叩いていたので、本当はもっと発熱する状態だったのでしょうか… 
で、コートリル不足が怖くなってきたので、そこからさらに2倍にして飲んでいたところ、4日目の晩、血圧がありえん高値をたたき出し、冷や汗が止まらなくなったのに吐き気は落ち着かない、という、もはやそれはコロナでもなんでもないだろ、という体調になりました。
そういえば、1年前の副腎腺腫の手術時にも似たような体調になり、夜中に昏倒して後頭部を強打、ナースステーションの要注意人物になったことがあったっけ… あの時は水中毒だの電解質異常だのと言われ、元に戻すのに数日を要しました。あれと一緒だったら、家にいたらヤバくない!? 血液検査しないとわからんくない!?

と、パニクり、とにかく内分泌を主因として「何か」が起きているはずだからそれだけ調べてくれ~、と祈りながら119番通報をしました。この時点で、金曜日の23時。
すぐにつながるのはつながり、来るのもすぐに来てくれました。「夜なので、搬送先決定に数時間かかる可能性があります。結果的に搬送できないこともありますので、ご了承ください。」と言いながら救急隊に症状と既往歴を伝え、電解質がおかしいかもしれないとも伝えたのですが、「これから判断しますので一旦失礼します」と出ていってしまいました。すると、10分少々で戻ってきた、「搬送中止になりました。あとで保健所から連絡がありますので、その指示に従ってください。では。」と帰って行ってしまわれた~~Σ(゚д゚lll)ガーン
え。
まじで。
帰るの?
さらに40分くらいしてからたしかに保健所から電話がかかってきました。しかし、なかなか「内分泌を主因として「何か」が起きているはずだ、という点が伝わっている感じがしません。とにかく、日付変わる時間帯なので、明日また保健所から連絡をするので、その時にどこに受診するか相談してほしい、と言われ、その日は寝るしかありませんでした。

5日目:病院に突撃する

何となくそんな気はしていましたが、翌朝になっても保健所から連絡は来ません。そんな話を実家としていたら、なんと実家が神戸大学病院と直談判してくれて、検査だけしてくれることになりました。実家から車で迎えに来てもらい、窓全開で走る私たち。。 吐き気は始終襲ってきます。吐いたら、内服したコートリルが出ていってしまうとの一心で、とにかく我慢を続けました。病院へつくと、離れのプレハブ小屋で、中にストレッチャーくらいしかない殺風景な部屋に通されました。これ、たぶん陰圧室なんだろうな。。そこで、コロナ武装をした救急の先生と、糖尿病の先生とに見ていただき、血液検査もしていただけました。安心してここで初めて吐くことができました…
しかし、血液検査の結果、「きれいな結果なのよ~。なんでそんなに吐き気が出てるんだろうね~」とのこと。経験上、ここで電解質のバランスが崩れているなどの明らかな所見がない限り、入院しても制吐剤を点滴するくらいのことしかできないというのもわかっていたので、仕方なく帰宅して寝てるしかありません。
もはやコロナでもなんでもないです。コロナ自体がそれほど強く症状が出なかったのに、なぜこんなに吐き気で苦しめられているのか、腹立たしさでいっぱいですよ、本当にもう。

8日目:自宅療養解除、になっても続く吐き気

神戸大学病院で血液検査をしてからも、なんとも言えない体調がずっと続きます。寝起きを中心に吐き気がひどいのです。夜は機嫌よく寝るのですが、4時ころになると胸をつく吐き気で目が覚めます。もう眠れないのなんの。
通常、こんな副腎にトラブルさえ抱えていなければ、自宅療養が解除されたら「ひあっほう」と言わんばかりにシャバに飛び出していくところだと思うのですが、私は午前中いっぱいは続く吐き気と毎日闘うという苦行・・・
さらに、自分の身体が自分のものではないような、気持ち悪い感じがずっとしています。

祝☆社会復帰 でも・・・

さて、現在、残っている症状は、
・寝起きの吐き気
・倦怠感
・めまい
なんですが、これってコロナにかかる前からこんなもんだったような気もします。10日も家に缶詰めになっていると、それだけで足腰が弱りますし、今も生まれたての小鹿のような足で歩いています。さらに、10日篭ってただけで季節がさらに過酷になっていて、体力回復のために散歩しようにも暑すぎる! なんなん、この暑さ!
10日も自宅待機させてもらえるなら、たまった積読を片付けるぜ!と発症初期はテンションがあがったものですが、結果としてまったくそれどころではなかったことが残念でなりません。本読み休暇ほしい~~。
これまで、手術等でダメージを受けた時やインフルエンザなどで発熱した時には、ぐずぐずと吐き気が残ったものです。しかし、今回のそれは、これまでよりも明らかに長くてしぶとく、またコートリルを追加しても解消しないなど、様子がおかしいと感じています。加えて、もし仮にコロナ後遺症が加わっているのだとしたらなかなか厄介だなぁとへこんでいます。
Buzzfeedでもこんな記事がリリースされていますし。

なんにせよ、まだ回復の途上ですし、このぐずぐずした体調不良をどう分析すべきか、主治医と相談しよう。。
というわけで、下垂体前葉機能低下症族の皆さまは、たとえコロナ本体の症状が軽症だとしても、体は発熱以上のダメージを受けるとしか思えないので、かからないに越したことはないです。

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