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オレのナス

我が家から100mのところにウエルシアがある。ドラッグストアだ。
子供服の西松屋が撤退したあとに居抜きで入ったのが1年ほど前になる。このへんは住宅と畑ばかりで近所に店がまったくないから、ウエルシアは大歓迎。とても重宝している。

ティッシュやシャンプーはもちろんのこと、ビール、酎ハイ、お茶、お菓子なども買っている。電球が切れたときも100m歩いてウエルシアだ。
最近のドラッグストアはコンビニ化しているので、スギ薬局派の嫁も「牛乳忘れた」といってはサンダルでウエルシアである。

コンビニ化が進んでいるとはいったが、さすがに生鮮は扱っていないし、弁当類や惣菜もおいていない。だが去年秋に大胆にも吉野家の牛丼を売り始めたのには仰天した。ウエルシア、なかなか攻めるのである。イオン系列だ。

今日私は、ペットボトルのお茶を買いにウエルシアまでいった。車に乗ってセブンイレブンでもよかったのだが、やっぱり近場のウエルシアにしたのである。
そして腰を抜かす。

なんとウエルシアの入口前に、トマトとナスの苗木が大量陳列、略してタイチンしてあったのだ。驚いた私は足を止めて見入ってしまった。
たしかにこれはトマトとナスの苗木であって、しかもちゃんと値札がついているから売り物のようだ。
どうしてドラッグストアがトマトとナスの苗木を売るのだ。いや、売るのはもちろん店の勝手なのだが。

逡巡の後、私はナスの苗木を買うことにする。200円だ。
紫の可愛らしい花の付いたナスの苗木を片手に持ち、店内でペットボトルの十六茶をもう片方の手に持ち、そしてレジではPayPayで支払う。
あ、袋はいいです、すぐそこだし、もうこのまま植えちゃうんで。

ナスの苗木とペットボトルを下げて帰ってきた私を見た娘は爆笑し、嫁は呆れる。
私はそのままためらうことなく庭に出て、除雪用のプラスチック製スコップで穴を彫り、ナスの苗木を植えたのだった。そして軽く汗を拭ったその瞬間、気がつく。

こ、これは…。もしかして…ナスを植えるシア。

そうである。ウエルシア渾身のギャグだったのである。
そのギャグにしっかり応えて植えてみせた自分を、私は褒めてやりたい。

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