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トークイベント「“しごと“を見つめ直すフィールド 〜ローカルイノベーターの宝庫:京丹後に学ぶ〜」

2022年7月29日、京都市内にあるQuestionにて「“しごと“を見つめ直すフィールド 〜ローカルイノベーターの宝庫:京丹後に学ぶ〜」というテーマでトークイベントを行いました。

このイベントでは、現在丹後で増えてきつつある草の根イノベーターをゲストに、中長期を見据えた本質的なビジネスデザインや課題解決、エコシステム形成など、先進的で持続可能な試みについて共有していただくと同時に、彼らが何故このような興味深い取組やチャレンジを続けるのか?仕事においてどのような価値観を持っているのか等お話をしていただきました。

【主催】
丹後リビングラボ事務局(京丹後市自然あふれるビジネスモデル事業)

【プログラム】
1.オープニング
2.京丹後市の紹介
3.トークセッションPart.1

  「丹後リビングラボから見る、先進的な京丹後の特性」
4.ローカルイノベーター プレゼンテーション
5.トークセッションpart.2

  「これからの仕事に必要な視点って?」

【出演者】
関 奈央弥
さん(合同会社tangobar 管理栄養士)
丹後地域の食資源を活かし、缶詰の商品開発や食の体験プログラム等に取り組んでいる。

足立 樹律さん(京丹後市地域おこし協力隊 / 蒸-五箇サウナ-
サウナで起業するため仕事を辞め、長野でサウナ修行1年弱を過ごす。その後、京丹後でサウナ施設3つを準備中。

長瀬 啓二さん(丹後リビングラボ / 一般社団法人Tangonian
「暮らしと旅の交差点」をコンセプトに、地域ならではの出会いと学びなどをサポートする(一社)Tangonianを設立。コミュニティツーリズムに携わる。

白井 洸祐さん(丹後リビングラボ / 株式会社インフォバーン IDL部門
社会的な視座から、企業の事業開発等に携わるデザイナー。丹後エリアでも行政や生活者を巻き込む協働プロジェクトを多数手がける。

若林 正義さん(京丹後市ふるさと創生職員)
2022年3月より「京丹後市ふるさと創生職員」として、同市商工振興課にて「自然あふれるビジネスモデル事業」を担当。

司会・進行
丹後リビングラボ/IDL [INFOBAHN DESIGN LAB.] 菊石・山下

その他
今回、デザイナー・ビジュアルプラクティショナーとして活動されている田中さんがグラフィックレコーディングを実施。イベントで話された内容をリアルタイムでグラフィックに描き起こしていただきました。

1.京丹後市の紹介・自然あふれるビジネスモデル事業について

はじめに、京丹後市ふるさと創生職員 若林さんより、京丹後市の概要と自然あふれるビジネスモデル事業についての紹介がありました。

京丹後市は豊かな自然に囲まれており、山陰海岸ジオパークにも登録されています。また、京都府内随一の豊富で高品質な農産品や、四季折々の海の幸が獲れるなど食も豊かです。丹後ちりめんを代表とする伝統産業や、200社以上が集積する機械金属産業など多彩な産業も強みの1つです。

しかし、人口減少や少子高齢化は年々深刻化しており、それに伴って地域力も低下しているのが現状です。

そこで、京丹後市は多彩な人材に選ばれる町であるために、「自然あふれるビジネスモデル事業」を開始。関係人口を増やすための取組として、テレワーク・コワーク環境整備、ワーケーションプログラム提供、都市部企業・人材の誘致を行っています。

最後に、若林さんにご自身も岩手県から昨年京丹後市に移住をし、「ふるさと創生職員」として働いている背景を持つことから、その働き方について共有していただきました。
ふるさと創生職員というシステムは、正規職員とは違い副業が可能で、フリーランスや農業をしながら、また都市部企業とのリモートワークをしながらフレキシブルにそれぞれのライフスタイルにあった働き方が出来ることが魅力だといいます。

京丹後市ふるさと創生職員リクルートサイト

★グラレコまとめ

2.トークセッションPart1 丹後リビングラボから見る“先進的”な京丹後の特性

続いて丹後リビングラボの取組について丹後リビングラボ事務局メンバー、長瀬と白井からの紹介があり、その後のトークセッションで京丹後の特性について掘り下げていきました。

《 丹後リビングラボ VISION・MISSION 》
VISION:持続可能な京丹後 新たな「つながり」「連携」「共創」
MISSION:京丹後市内外の共創が生まれる土壌をつくる

《 京丹後市は外部から見ても関わるチャンスの多いエリア 》
・自然環境が豊かで一次産業や観光面におけるポテンシャルが高い
・地域外企業の接続や来訪を求める事業が立ち上がっている
・ユニークなチャレンジに取り組むプレーヤーが多い
・地域内外をつなぐネットワークのハブになれる人がいる

問1 ユニークなチャレンジに取り組むプレイヤー=草の根イノベーターが多いのはなぜ?


長瀬:
地域にはその場所の魅力を発信できる、人と人を繋ぐことが出来る勝手に観光大使的な存在が多くいます。
山下:野良猫ならぬ野良コーディネーター的な!
長瀬:何かチャレンジする時、否定せずに応援してくれる人が多いのも理由の1つかもしれません。
白井:若林さんはIターンした立場から、何故京丹後市を選ばれたんですか?
若林:ここにはユニークなチャレンジに取り組むプレーヤーが多くいて、それが京丹後市に移住をした決め手になりました。

問2 地域外の企業は、現状どのような関わり方をしている?

長瀬:丹後にはユニークな取り組みをされている機屋さんが沢山ありますが、過去に丹後リビングラボで行ったツアーの中で言うと、そのような機屋さんを巡り職人の話を聞くといったフィールドワークを行ったことがあります。このフィールドワークには都市部から織物関係、繊維関係、ファッション関係に携わる様々な個人や企業が参加されました。
白井:京丹後は、都会では得られない課題や問に対して取り組むことが出来るため、企業にとっても学びが非常に多いフィールドだと感じます。
菊石:都会の個人や企業はそれに対してどのようにアクセス出来るか?と考えると、やはり都市部から入ってくる方にとってのタッチポイントが重要。

地域外企業の関わり方パターン 》
①企業研修 
②ワーケーション
③ビジネス開拓(取引先・販路)
④課題解決・事業創造

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3.ローカルイノベータープレゼンテーション

① 合同会社tangobar/管理栄養士 関さん

関さんは合同会社tangobarを立ち上げ、丹後地域の食資源を活かし、缶詰の商品開発や食の体験プログラム等に取り組んでいます。

▶缶詰商品の企画開発及び販売
京丹後を代表する海産物の1つである牡蠣は、年中収穫することが出来ますが、消費者があまり買い求めない時期があるそうです。
関さんは、そんないわゆる閑散期に「加工を通して生産者さんの食材の販路の選択肢のひとつになりたい」という思いから缶詰の加工・販売を始められました。

▶食の生産現場訪問プログラムの企画/運営

食べ物と体の関係・自然環境の変化・目に見えない微生物の重要性など、生産現場からは様々な事を学べます。
関さんは、このような生産現場と食べる人の距離を近づけることが重要だという想いから、食育のプログラムの企画/運営もされています。

② 京丹後市地域おこし協力隊 蒸-五箇サウナ- 足立さん

足立さんは、大学を卒業後東京の広告代理店で務めていましたが、サウナの魅力に惹きこまれ退職。その後、長野県信濃町にあるThe Saunaでサウナ修行を行いました。
アウトドアサウナに魅力を感じ、京都で活動拠点を探している中で京丹後市と縁があり移住を決意。現在は京丹後市の地域おこし協力隊としても活動しています。

足立さんは現在、京丹後市にある五箇村の古民家をリノベーションしてアウトドアサウナを建設しています。その理由として、少子高齢化が進む五箇村をこのサウナ施設を通して観光客に知ってもらい、また村人同士がコミュニケーションを取るハブとなることで村の幸福度を高めるという目的があるといいます。

問3 なぜ今の事業にこの場所で取り組もうと思ったのか?

:丹後の食の多様性に魅了されたことが大きな理由です。この食を活用した可能性は大いにあります。
また、困ったことがあった時、誰かに相談すれば解決する、人が人を紹介してくれるといった地域の方のあたたかさも起業をする上で大きなポイントとなりました。
足立:確かに、丹後は面白いプレーヤーが集まる場所だと感じます。
また、関さんが仰っていたように町の人がとても協力的です。
大学がないため若い人が少ないという課題もありますが、そういった中でもイベントをすれば人を集めることが出来ます。
山下:確かに丹後にはチャレンジを面白がる、応援し合う空気がありますよね。

問4 どのように地域の資源を発掘したり、地域の人との関係性を築いているのか?

:やはり丹後では数珠つなぎに人の輪が広がっていった感覚があります。
初めに色々な方に繋いでくれる「あの人に出逢えなかったら今の自分はいない」というキーマンに出逢えるかどうかは重要です。

問5 地域で事業を興す難しさはどんなところにある?

:商品を届ける先が都市部の方だと、実態が分からないためニーズがつかみにくいところが難しさだと感じます。
足立:人が少ないため自分でやらないといけないことが沢山あります。例えば私はサウナを造る上での古民家の解体作業まで自分でやりました。

問6 事業により実現したい、それぞれ目指している状態は?

関:知っている人が作った食材を食べるという環境を当たり前にするために、生産者と消費者をつなぎたい。
足立:「サウナは人生を豊かにし、幸福度を上げる」という信念のもと、将来的には「お風呂かサウナかいずれかの選択肢」というくらい五箇村の人の生活に浸透すればいいなと思っています。

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3.トークセッションPart 2 「これからの仕事に必要な視点って?」〜京丹後のプレイヤーに学ぶこと〜

長瀬:地方においての仕事に必要な視点という意味で、京丹後には人が人を紹介する連鎖が多々あるため、関係性を築くこと “関係資本”と、関係性を大切に保つこと ”関係貯金” が一番大切ではないかと思います。

問1 都市部の企業、ビジネスパーソンにはどんな学びや関わりしろがあるだろう?

関:①コンテンツ・プロダクト開発の連携 ②食への関わり方を見直す場として関わりを持つ
都市部企業はここで持っているノウハウを利用して新たなプログラムを開発することが出来るのではないかと思います。
例えば、現在酒蔵で大量に廃棄されている酒粕を利用してプロテインを作れないか考えているのですが、そのノウハウを持つ企業などがいれば是非連携したいです!
地域の資源を上手く集め適切に消費者に届けるため、このような都市部企業との連携はとても重要です。

足立:「サウナ×~」ような別ジャンルとの組み合わせを発掘する
例えば、五箇村の中をマラソンコースとしてランナーに走ってもらった後、サウナに入ってもらい、地元の食材を使ったサウナ飯 ”サ飯” を食べてもらうといった企画は面白いなと考えています。

サウナ会議

また、前回五箇サウナのプレオープニングを兼ねて丹後リビングラボのコンソーシアムメンバーにサウナ施設を体験してもらったのですが、その際に単なる体験会ではなく、今後この施設をどのようにより良くしていけるかというアイデア出しを目的とした「サウナ会議」を行いました。
サウナに皆で入り意見交換をすると、交流も深まるしフラットな会話が出来てとても良かったです。

長瀬:働き方・暮らし方への学びや気づきがある
丹後には生業により里山里海の保全を実践する事業者が沢山います。
また、消費者がものづくりの生産者や現場と近いといった関係性もあります。都市部から来られる企業にとっても、このように人間らしい暮らし、作り手の顔が見えるものに囲まれる暮らしから様々な気付きや学びが得られるのではないかと思います。

白井:ウェルビーイングを考え、事業のあり方を見つめ直すこと
丹後は「課題の先進地」
豊かさとは?といった根源的な問いに出くわすことも多く、自分自身の在り方を見つめ直すことからスケールを広げていくことが出来る場所です。

長瀬:ビジネスチャンスはつくるもの。 丹後には課題に対して仮説を立てて実証していくことにモチベーションが高い人が沢山いるため、興味、関心、試してみたいこと、実証したいことをどんどん丹後に持ってきてほしいです。皆さんにはここに客として来てもらうよりは仲間として来てもらうというのが良いのではと思います。

問2 これからの仕事のあり方って、どんなふうに変わっていく?

足立:①色んな事にチャレンジして自分の最適を探していく ②居心地のいい働き方・環境を作っていく
自分自身以前は大企業に入ると幸せになれると思っていたが、いまいちしっくりこない日々を過ごしていた。そんな中偶然入ったサウナでお客さんの幸せそうなとろけた顔を見て、サウナを生業としてやっていくことに決めました。
このように色々なことを経験してみた上で、徐々に選択肢を狭めていくのが良いのではないかと思います。

★グラレコまとめ

4.さいごに

今回のイベントには合計33名の方が参加して下さいました。
また、イベント後に実施したアンケートでは「今後京丹後市に改めて訪問したい」「企業研修を行いたい」「ビジネスでの連携を模索したい」「京丹後市の事業者の横同士の繋がりの強さや、若者がいきいきと活躍できる環境について羨ましい」といったポジティブな反応を多くいただくことが出来ました。

また、今後開催予定のアクティブワーキングプログラムについても紹介をさせていただき、参加者の中にも興味を持っていただいた方が多くいらっしゃいました。

アクティブワーキング

今後も丹後リビングラボとしてこのような都市部の事業者や個人に向けたトークイベントを積極的に開催し、地域の事業者とのコラボレーションや丹後に来ていただくきっかけを作っていきます!

Writer:丹後リビングラボ|岸 あやか

\丹後リビングラボウェブサイトはこちら/






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