Brain Computer Interfaceが作り出すクラウド内の集団意識

『2030年』に出てくる「空飛ぶ車」「量子コンピュータ」「仮想現実と拡張現実」「長寿・不死」「宇宙への移住」あたりは、さほど新鮮味を感じなかった。

ところが、手短な技術革新としての「3Dプリンティング」の話題と、壮大な未来像という意味での「Brain Computer Interface:BCI」に関心が向いた。

現在、粘土細工を作るような3DプリンティングはAmazonで8万円程度の値段で売っている。しかし、本書では洋服も3Dプリンティングにより、自分に合った寸法で縫製される時代がすぐ来ると言う。こうなると、生産者と消費者が直結し、中間業者が不要になるため値段も半分に下がる。また3D料理プリンターで調理がされるため、食べたい人はただ食材を買ってきて、このプリンターに投じればいい。確かに、3Dプリンティングには広い可能性がある。

BCIは脳をコンピュータでつなげる方法で、拡張現実との関係で語られてきた。しかし、本書の提示はもっと深い。「『個人の意識』はクラウドに移行する。ひょっとしたら、私たちはいつまで自分だけの意識にしがみついているのだろうか。それともインターネット上で進化しつづける集団意識に少しずつ移行するのだろうか」という問い掛けに至っている。この考え方はデカルト以来の個人意識の尊重の否定に通じる。一方で、近代的知性がもたらした孤独という悩みは、BCIで集団意識になれば解消されるのかもしれない。

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