隣人の小包がうちに届いた話
我が家のまるで鳥のさえずりのような小さな音のベルが鳴った。
(あ、そういえば夫が『俺宛になにか届くかも』って言ってたな)
そんなことを思い出しつつ玄関を見ると小包を持った宅配員だった。
(来た来た!)
荷物を受け取って終了と思っていたら
玄関を開けた瞬間ブァーーーーっとオランダ語を話された。
(΄◉◞౪◟◉`)?
確実に私はこんな顔をしてた。
とりあえず
「Sorry...I can't speak Dutch.
Can you speak English?
I can speak English a little little little...」
無茶苦茶な英語で精一杯伝えた。
しかし痛恨の一撃。
「No.I can't speak English」
うぉーまじかーやべぇの来た。
彼は必死にジェスチャーを交えて私に訴えている。
私も必死で耳を傾ける。
…でもごめん、なに言ってるかわからない。
単語すら聞き取れない。
(΄◉◞౪◟◉`)?
多分今日この顔しか向けてない。
『おーマジかよ』
みたいなことを言って彼は天を仰ぐ。
言葉はわかんないけど今確実に私に絶望したのだけはわかった。
すると彼は私の腕をガッと掴んで「come come!」と言いながら引っ張った。
ここまでのやり取りで笑顔を絶やさずいてくれたし、全く言葉を理解していない私に対して必死に伝えようとするその姿から、良い人であることはなんとなく伝わっていた。
引っ張られるがままについていくと二軒先の家を指差して『あそこんちが誰もいない!』と伝えてきた。
もちろんオランダ語とジェスチャーで。
「あー!人がいないのね!あ、ちょっと待って今携帯持ってくる!…あーーーPlease wait!」
『Oh〜yes!!』
『やった!伝わった!』
と彼は思ったことだろう。
だがそれは甘かった。
やっと登場した私の携帯でGoogle翻訳を開く。
「二軒先の人がいないのね?誰も住んでないの?」(蘭語)
『Nooooooooo!!!!』
彼はまた天を仰ぐ。
違ったか!めげない私はさらに文字を打つ。
「留守なの?」(蘭語)
『Yeeeeeeees!!!!』
キターーーーー(*゚▽゚*)ーーーーー‼︎
きっとあれだ!!
家に誰もいないから荷物を預かってて欲しいんだ!そうだろ?!
「じゃあ私がこの荷物を預かってあとで届ければいいのね?」(蘭語)
『Nooooooooo!!!!』
え、マジかよ、違うの?
他にどんなパターンがあんの?
フリダシ感すごい。
私の混乱はいよいよMAXへと向かう。
彼はまた大きなジェスチャーでオランダ語をダァーーーーーッと話し始めた。
私の混乱はMAXに到達した。
「Ah〜...Are you speaking Spanish?」
『 (΄◉◞౪◟◉`){No...) 』
とうとう彼がこの顔になってしまった。
そりゃそうだよ。
これまで散々流暢なオランダ語と流暢な日本語と拙い英語を駆使して2人で必死に意思疎通させようと努力してきたのに突然
「あなたはスペイン語を話してますか?」
って訊かれたんだもん。
だってなんとなくマラドーナぽい見た目だったんだもん。なんか急にスペイン語に聞こえちゃったんだもん。
※マラドーナはアルゼンチン人
※もういろいろ間違えてる
※でも調べたらアルゼンチンの公用語はスペイン語らしい
今度は仲良く2人で天を仰いだ。
って違う。
2人で空を見上げて笑ってる場合じゃない。
めげずにもう一度!
「あ!わかった!もうあなたもここに文字打って!Please write this iPhone!」
『OK!』
彼が私のiPhoneに文字を打ち込む。
そして出てきた翻訳がこちら。
もう完全に詰んだ。
私の混乱はとうにMAXを超えているのに恐ろしいまでの畳み掛けだ。
しかもなんでドヤ顔してるんだよ。
違うんだよ。
農家のための帽子のディパックって出てるんだよ。
…あ、もしかしてこれって小包の中のもの?
この人私にこの局面で中身を伝えてきたの?
んなわけない。
ただの誤変換です。
………というわけで、、、
その後もあーでもないこーでもないと携帯やら会話とジェスチャーやらでやり取りは続きとうとう真相へ辿り着いた。
・二軒隣が留守
・荷物をあなたに預けたい
・でもあなたが届けるのではない
・二軒隣の人が後で取りに来るから
・そしたら渡してくれ
これらを単語やら文章やら会話やらでなんとかお互いに確認ができた。
伝わった瞬間2人で満面の笑顔(*゚▽゚*)パァァ
ガッツポーズをした。
グータッチもした。
彼はニコニコ顔で「Bye!! Have a nice day!」と去っていった。
自分の英語力のなさとオランダ語力のなさにいきなり直面したがいい経験となった(渡蘭14日目)。
彼の真面目さも十分伝わった。
もしこれが何か一つでも正しく伝わっていなかったならば、
荷物を勝手に開けてしまうかもしれない
隣人が来た時に荷物を渡さないかもしれない
自分の荷物と勘違いするかもしれない
そんなリスクがある。
それを確実に回避するために彼も粘り強く責任を持って対応してくれた。
しかも最後まで笑顔を絶やさずに。
こんなアホな私相手に本当にありがとう!!
でも農家の帽子のディパックはどのワードよりアホっぽかったよ!
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この話をTwitterに載せたら返事をくれた方がいた。
「意地でも再配達はしたくないので近所の人に預けるのが当たり前。留守だった家に『○○に預けた』というメモだけを入れて帰っていくらしい」とのこと。
なるほどね。
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