オランダにシンタクラースがやってきた!の話
オランダのもう一つのクリスマス
「Sinterklaas」
オランダでは毎年12月5日にこの「シンタクラースの日」を祝います。
なんとクリスマスよりもシンタクラースの日の方が子供達にプレゼントを贈るメインの日としている家庭も多いとのこと。
じゃあクリスマスはなにすんの?!
「シンタクラースの日は子供や友達にプレゼントを贈り賑やかに祝い、クリスマスの日は家族と静かに過ごす。これがオランダ人の過ごし方よ!」
と友達に言われた時は驚きました。
シンタクラースってなに?
シンタクラースはオランダの神話的存在で、毎年11月11日以降の最初の土曜日にスペインから蒸気船に乗ってオランダへ上陸します。
「シンタクラースはサンタクロースの原形」なんてWikipediaに書いてありこれまた驚きですが、大きな体、長く立派な白いひげ、赤を基調とした衣装、確かにその見た目は似ています。
シンタクラースはお供のズワルトピート達を引き連れ、たくさんのおもちゃやお菓子を持ってやってきます。
シンタクラースは「シンタクラースの書」という大きな赤い本を持っており、ここには今年1年間の良い子悪い子リストが書かれています。
良い子にはプレゼントを、
悪い子はピート達が大きな麻袋に詰め込んでスペインに連れ帰ってしまいます。
ただプレゼントをくれるサンタクロースとは大違い。
シンタクラースのお祝いはお隣ベルギーでも行われるのですが(こちらでは12月6日)、オランダやベルギーの親達はシンタクラースの日が近付いてくると「そんなに悪い子だとスペイン行きね」と子供の躾に利用するそう。
何名かのオランダ人とベルギー人の友人が口を揃えて言っていたので、シンタクラース文化がある国では割とメジャーな躾方法なのでしょう(笑)
中には子供が喜ぶと思って家にシンタクラースを招いたら(なんとシンタクラースは予約すると来てくれる!!)、子供がスペインに連れ去られると勘違いをしてシンタクラースが家に入って来た瞬間硬直し、その後泣き喚いて大変な目に遭ったなんて話も。
なんとも可愛らしいエピソードです。
オランダ各地でそんなことが起きているのかもしれません。
シンタクラースが街にやってくる
いくつかの海沿いの街では港にシンタクラースがやってくると子供達がシンタクラースの歌を歌って歓迎し、シンタクラースはピート達と共に街をパレードします。
この様子はテレビで毎日放送され、今現在どこにいるか、何をしているかなどが逐一流れます。毎日昼の11時に1時間ほど「シンタクラースニュース」なるものが放送されるそうですが、残念ながら我が家では視聴できず…。いつか観てみたいなぁ〜。
彼らはオランダ各地にやってくるのでテレビも大忙しですね。
ネットにはSinterklaas Journaalというサイトがあり、我が家が通う小学校では毎日このサイトをチェックする時間が設けられています。
準備からプレゼントを蒸気船に運び込む様子、上陸、そしてパレードの様子などを動画で観ることができます。ゲームコンテンツなどもありこのイベントがオランダ国民にとってどれだけ大きなイベントなのかが伺えます。
パレードの様子
私が住む街で今年は11月18日に街の中心街(セントラム)でパレードが行われました。
パレードには鼓笛隊や踊り子、スペインから一緒にやって来た女性達、そしてシンタクラースとピート達などがいました。
シンタクラースは白馬にまたがり、ピート達は大きな袋を持って歌い踊りながら歩きます。
ピート達が持つこの大きな袋。
この袋にはシンタクラースの日を祝う伝統的なkruidnoten クラウドノーテンというシナモンやスパイスが効いた丸く小さなクッキー(味は日本でも手に入るロータスクッキーに似ている)やメレンゲ菓子、ラムネなどが入っていました。
ピート達はパレードに集まった人々にこれを配ります。子供を中心にみんなビニール袋や手提げバッグなどの口を大きく広げて持ち、そこに入れてもらいます。
子供達が「ピーツ!ピーツ!」と大きな声で呼んでいたのが印象的。
お菓子を配るピート軍団に続いて葉っぱ付きのにんじんを配るピート達がいました。
子供達はクッキーに、お母さん達はにんじんに、それぞれ手を伸ばしていたように思います。
そしてその人参をもらった瞬間そのままかじり出すからまたすごい。あちこちからボリボリ聞こえます。
お菓子用の袋を持参し忘れた我が家は、いつも使うエコバッグを差し出したわけですが、雨が降る中ピート達は容赦なく裸のままのクラウドノーテンを入れてきます。
「個包装じゃなくてそのまま入れるのか!」と衝撃を受けましたが大丈夫です。
気になるのは最初だけです。
すぐ受け入れられます。
シンタクラースのお菓子
10月中旬頃からスーパーや雑貨屋、パン屋などあちこちで売り始めるシンタクラースのお菓子。
これらは期間限定の販売。
パレードでも配られる定番のクラウドノーテンは1kg単位で売ってるし、これまた定番のイニシャルチョコレートはシンタクラースのSとピートのPが主流ですが他にもA〜Zも揃ってるし♪や★などの記号もあるし、伝統的な豚のマジパンや靴型のチョコレートなどバラエティーに富んだかわいいお菓子をあちこちで買うことができます。
シンタクラースパッケージもとても可愛い。
ピートの顔
さて、少し話が変わりますが、これまでもたくさん出てきているピート。
みんな顔が黒いですね。
黒いというより黒く薄汚れたといった感じです。
これにはわけがあり、ピートは本当は黒人。
昔は黒人に似せるようにしっかりと塗っていたようですが、近年「差別的だ」という理由で
「煙突をくぐってきてススで汚れてしまった」
という設定に変えられました。
シンタクラースの日は暖炉の前に靴を置きます。その靴ににんじんを入れ、横には水を入れたお椀を用意します。
にんじんと水はシンタクラースが乗る馬のためのもの。
シンタクラース達はこれらを受け取りプレゼントを置いていきます。
この時に汚れてしまったということですね。
余談ですが日本でこのような問題が起こった場合、あっという間に「黒くする」という発想自体がなくなりそうですが、この「ススで汚れたことにする」と完全に無くすわけではなくストーリーも残そうとするオランダの発想はさすがです。
この対応にはオランダ国内でも賛否があるようで「元々のストーリーを守るべき派」と「このご時世設定を変えるのは当然派」に分かれています。
夫の社内でも二つに分かれており、子供のイベントでそんなカリカリしなくても…といやいやアウトでしょ!とで話が盛り上がったそうな。
ちなみにある年のオランダ調査では「黒人のままでいくべき。変える必要はない」という声がほとんどを占めていたなんて話も。
でも実際これが原因でシンタクラースイベント中に事件が起きたこともあるらしいので難しい問題ですね。
話は戻り、サンタクロース同様シンタクラースも暖炉と関係が深いのです。
上陸から12月5日まで
11月半ばに上陸したシンタクラース達はその日だけパレードをして12月6日の帰るまでを静かに過ごすわけではありません。
上陸から12月5日のシンタクラースの日当日までの間、街中やオランダのあちこちにあるショッピングモールなどに出没します。
中には住宅街で歩いていたなんて目撃証言も!
まさに神出鬼没!
我が家も週末にいつものショッピングモールへ食料品を買いに行ったらいきなり後ろからピート達が楽器を弾きながら現れ、さらに歩くとシンタクラースが写真撮影に応じていたり(馬はなし)、あまりに自然に普通にさりげなくいるので驚きました。
ピートが肉屋に入っていったのにも驚きです。なにしに行ったんだ…!
特にイベントが行われているわけでもなくただ普通にモール内をうろうろ。
子供が近寄ると歌ってくれたり、親達とは世間話をしていたりとなんとも自由。
私も嫌がる息子を無理矢理連れてパシャリ。
良い記念になりました。
この日はモールの駐車場端で無料汽車が走っていたり、ちっちゃなシンタクラースイベントって感じだったのでしょうね。
ちなみに上の写真は野外のモールですが、我が家近所の小さめ室内モールにはすぐ目の前に子供がよく遊んでいる遊具付きの広場があり、
「この後あの広場で何かイベントをやったりするの?」とピートに尋ねたところ
「しないよ!だって寒いじゃん!」と返ってきました。
学校にもやってくる
先日、学校の全体ホールにボランティアで飾り付けをしてきました。
学校もシンタクラース一色!!
生徒達も我が校にやってくる12月5日が楽しみなようです(^^)
ついでに私も楽しみ(^^)
遠い異国の地で初めて体験する国民的大イベント。
オランダに来なかったら知る由もなかったシンタクラースとピート達。
彼らがスペインに帰るまで目が離せません。
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