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映画記録「Summer of 85」

「僕が死んだら、墓の上で踊れ」

1985年、フランス、水面が眩しい海辺の街。
16歳のアレックスと18歳のダヴィド、二人の青年の、友情を超えた愛のお話。

美しい恋愛には、儚さや脆さが付き物というのは通説的なことで、愛が朽ちてしまう最悪の瞬間が不意に訪れる…という展開はよく見るが、この映画では「終わる」こと、つまりダヴィドの死を初めから明示して物語が始まる構成だった。
ダヴィドの死後、アレックスは「あなたが愛したのは彼じゃない、自分が創り出した幻想よ」と指摘されるが、まさに過去(=幻想)と現在(=現実)とを行き来するような構成が、ダヴィドおよび彼との恋愛の「幻想」の度合いを強めているように見える。

文学好きのアレックスが、胸の内を曝け出すために、彼との間に何が起こったのか、彼の死後何をしたのか、タイプライターで「物語」として綴るのだが、ダヴィドはアレックスが綴る物語の中にしか出てこないんではないか…と本当に思ってしまう。
本当に彼はいたのか…。

何にせよ、誰が見てもダヴィドは「イケてる男」のデフォルトのような存在。
最高にイカした男を作れと神様にオーダーしたら、生まれてきそうなタイプ。
「お前に飽きた」とか言うタイミングもシナリオ通りのようで、完璧過ぎて、なんというか人間味に欠ける。
アレックスの初々しさ、感情の豊かな人間らしさゆえ、それとの対比も相まって、ダヴィドの人間性が見えにくい。

でもやっぱり、二人の一夏の純愛は、海のきらめきに負けないくらい輝かしくて。
うっとりと見惚れてしまった。




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