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現役ドラフトってどななん?

(2022/12/9加筆 3511文字)

 12月9日(金)にNPB初の試みである「現役ドラフト」が行われます。
10月の「プロ野球ドラフト会議」は新人の選手を獲得するために行われる会議で、ドラフト(draft)は「人を選び取る事(選抜)」という意味です。
ちなみに生ビールのドラフトはDraught beerで、draughtは(液体を)注ぎ出すこと、樽出しと言う意味です。すみません関係ないです。
※ドラフトビールをdraft beerとも表記します。

目的は「飼い殺しからの救済」

 現役ドラフトとは、各球団の支配下登録された選手を他球団が指名し、自球団の支配下に置く(契約する)ことが出来る新たなシステムです。
目的は「出場機会に恵まれない選手に移籍によって機会を与える」となってオリます。
分かりやすく言えば、絶対的レギュラーとポジションがかぶっていて、他球団であればレギュラーになれる力があるのに出場出来ない不運な選手が救済されるということになります。
 実は過去にも何度か同様の制度が試されていますが、うまく機能せずに立ち消えになったりしています。
今回の現役ドラフトはメジャーリーグの「ルールファイブドラフト」を参考にしているそうです。
ルールファイブドラフトはメジャーのオールスターに出場した選手も多く輩出してオリ、飼い殺しになっている選手の救済となっていることが分かります。
※「ルール5」はMLB規約第5条に規定されていることが由来で特に数字に意味はありません。1条校みたいなものですね。

 すみません、報道見て分かりにくいなあと一生懸命書いていたのですが今NPBの現役ドラフト制度規定を見つけました。
こういうルール原文には珍しく非常に分かりやすい文章です。
まずこちらを読まれて、疑問があれば以下をお読み下さい。

現役ドラフト実際の手順

 手順を説明します。
まず各球団は、12月2日の午後3時までに自球団のドラフト対象選手2名以上をNPBに提出します。
ただし下記の選手は対象外となります。

  • 外国人選手

  • 複数年契約選手

  • 年俸5000万円以上の選手(1人に限り5000万円以上1億円未満も可)

  • FA権を行使したことのある選手

  • FA資格選手

  • 育成選手

  • 前年シーズン終了以降に契約譲渡で獲得した選手

  • シーズン終了後に育成から支配下になった選手

 テレビで華々しく中継されるプロ野球ドラフト会議と違い、現役ドラフトは非公開で行われます。
また球団は対象選手本人に対して通告する義務はありません。
つまり、対象者リストに入っていても、他球団から指名されなかった場合は本人にも分からないままになる可能性もあります。
また、指名された場合、選手本人に移籍を拒絶する権利はなく、拒絶した場合は任意引退となります。

 全球団は対象選手リストから自球団が獲得希望する選手を選び、会議当日に議長に通知します。
全球団の獲得希望数の順に暫定指名順位を決定します。
※獲得希望数は自球団の対象選手に対する他球団の希望の総数です。
同数の場合は今年のドラフト会議2巡目の指名順。
ざっくり言うと今季リーグ戦下位球団からの指名順です。
最も多い希望数を自球団の選手が集めた球団が第一位の指名権を獲得し、先ほどの投票で獲得希望をした選手を自動的に獲得。
指名された選手を保有する球団が次に指名権を獲得し、それを繰り返して12球団が指名し終えるまで続けます。
球団による指名は先ほど提出した獲得希望選手をそのまま指名しますが、指名する前にその選手や同球団所属の他の対象選手が他球団に指名されていた場合は対象指名リストから未指名の選手1名を指名します。
既に「指名を行った(終えた)球団」の選手が指名された場合は、次の指名権は「指名された球団」ではなく、まだ選手が指名されていない球団の中で先ほどの暫定指名順位が最も上位の球団が獲得します。
これを12球団全てが行うまで繰り返します。
1巡目で全球団が必ず1人指名し、1人指名されることになります。
※既に選手が指名された球団の選手を指名することは出来ません。11番目に指名する球団は自動的に12番目の球団の選手を指名し、12番目の球団も自動的に1つだけ残った未指名の球団の選手を指名することになります。
 2巡目は希望する球団のみで行われます。
移籍するのは15名程度との予測もあり、2巡目の参加球団は少なくなりそうです。
現役ドラフトは9日13時に始まり、当日中にNPBが全球団まとめて発表することになっています。

現役ドラフト結果

 9日17時頃、現役ドラフトの全球団獲得選手がNPBから発表されました。
バファローズさんからは大下誠一郎選手がロッテに移籍となりました。
獲得したのはヤクルトの渡邉大樹外野手です。

2巡目は希望する球団のみで実施することになっていましたが、実施されませんでした。
 Twitterでも多く現役ドラフト会議の公開を望む声がありましたが、公開すると移籍しなかった選手も自分が対象選手リストに入ったことを知ることになります。
人的補償プロテクトリストもそうですが、球団から「絶対に必要な選手ではない」と判断された事実を選手に突きつける必要はないと思います。

 現役ドラフトに関しては以上ですが、森選手との契約が決まり近々発表される西武球団に対する「補償」についても説明させていただきます。

フリーエージェントの「人的補償」

 今季、多くの有名選手がFA権を獲得することが話題となりました。
バファローズさんも大物選手の加入がありましたね。
その時に発生するのが「金銭補償」「人的補償」です。
FAによって選手を獲得した場合、その選手の「ランク」によってはFA選手所属元球団が「人的補償」を要求した場合、必ずそれに応じなければなりません。
ランクは選手の旧年俸(今年度の年俸)によって決まります。
チーム内での年俸が1〜3位の選手がAランク、4位〜10位の選手がBランク。11位以下の選手はCランクとなります。(外国人選手含まず)
Cランクの選手の移籍には金銭・人的補償は伴いません。
≪金銭補償≫
Aランク:旧年俸の50%
Bランク:旧年俸の40%
≪人的補償≫
ランクA・Bとも、28人のプロテクトリスト以外の支配下選手から、指名された一人の選手を与える必要があります。
プロテクトリスト」は支配下選手(一軍・二軍を合わせた70人)の中から28人、人的補償で出したくない選手を選んだ名簿です。育成選手は含みません。
プロテクトリストはFA選手獲得球団が作成してFA選手所属元球団に提出しますが、非公開です。
つまり、「実際に指名された選手」以外は自分がプロテクトリストに入っていたかどうかは選手自身にも分かりません
 また、所属元球団が人的補償を選ばない場合はプラスして以下の金銭補償が発生します。
Aランク:旧年俸の30%(総額80%)
Bランク:旧年俸の20%(総額60%)
 森友哉選手の場合は年俸2億1千万円とされているので、人的補償を伴う場合は1億500万円、伴わない場合は1億6800万円の金銭補償が発生します。
綺羅星のようにタレントが並ぶバファローズさんの場合、とても28人のプロテクト枠では選手を守れないと思います。
プロテクト選手の予想報道を見ても、小木田さん、中川さん、西野さん、我らが山足さん、大下さん、元さん、そしてT−岡田さんの名前がプロテクト外として挙がっています。
このクラスの選手を獲得出来るのに、わずか6300万円しか補償金を惜しんで西武が人的補償を選ばない可能性は低いと思いますし、渡辺GMも早い段階で人的補償を選ぶと示唆してオリます。
※ちなみに制度上はポスティングを表明された吉田選手、トレード獲得した石川捕手もプロテクト外なら指名が出来ると言われています。
発表と同時期に契約が締結されたとすると、既にプロテクトリストは西武に提出されているかもしれません。

正尚さんの恩返し

 プロテクトリストの提出期限は「NPBによる公示後2週間」なので11月28日公示の森選手に対する人的補償プロテクトリストの提出期限は来週明けです。

 吉田選手はレッドソックスとのスピード契約により、球団が護れる選手を一枠増やしたことになります。
チームの去り際にここまで見事な恩返しをされた選手は記憶にありません。

 現役トレード、人的補償でそれぞれ1人ずつ、2人の選手がチームを去ることになります。
球団からの年俸での評価以上に、現役ドラフト対象選手に選ばれるかどうか。プロテクト枠に入るのかどうか。の判断は選手にとって厳しいと思います。

チームを去られる選手の皆さまに、幸多からんことを。





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