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北山猛邦「『アリス・ミラー城』殺人事件」考察(ネタバレあり)

引用、ページ数は文庫のものです。

【登場人物】

鷲羽(わしば):探偵。大学院生。

観月(みづき):探偵。ダッフル・コート、黒いブーツ。関西より西で有名。

古加持(こかじ):探偵。塹壕コート。およそ三十代半ば。

无多(ないだ):探偵。二十歳前後。

入瀬(いるせ):无多の依頼人。二十歳前後。

ルディ:招待主。イギリス人と日本人のクォーター。

海上(うみがみ):探偵。元刑事。

窓端(まどはた):探偵。

堂戸(どうと):世話係。

山根(やまね):探偵。三十代前半。

アリス:探偵。

以下は名前のみ

白角(しらすみ):アリス・ミラー城を立てた人物。

【固有名詞】

アリス・ミラー城:白角が江利ヵ島に建てた城

アリス・ミラー:鏡の国に行けるという鏡?

江利ヵ(えりか)島:日本海に浮かぶ東北の島

【年代について】

p.141 「(略)『迷路館の殺人』と『Xの悲劇』を知ってるか?(略)」

北山猛邦『「アリス・ミラー城」殺人事件』

綾辻行人「迷路館の殺人」の刊行は1988年9月である。そのため、舞台は1990年代と推測する。

【チェス盤初期配置】

チェス盤の初期配置での登場人物との対応

数字は殺された順。(p.435~の台詞より)

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チェス盤初期表示

なお、入瀬は終盤で兵卒(ポーン)から女王(クイーン)に、无多は兵卒(ポーン)から騎士(ナイト)に昇格する。

【駒の動き】

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駒の動き

【小ネタ解説】

登場人物の名前、及び島の名前はすべてルイス・キャロル「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」の登場人物をもじったものになっている。

 鷲羽  :(鷲の羽を持つ)グリフォン(不思議の国)
 観月  :みづき⇒三月⇒三月兎(不思議の国、鏡の国)
 古加持 :こかじ⇒こじか⇒小鹿(鏡の国)
 无多  :ないだ⇒ダイナ(不思議の国、鏡の国)
 入瀬  :いるせ⇒(一文字前にずらして)アリス(不思議の国、鏡の国)
 ルディ :ルディ⇒トゥイードルディ(鏡の国)
 海上  :うみがみ⇒うみがめ⇒海亀(不思議の国)
 窓端  :まどはた⇒マッドハッター⇒帽子屋(不思議の国、鏡の国)
 堂戸  :どうと⇒ドードー(不思議の国)
 山根  :やまね⇒ヤマネ(不思議の国)
 アリス :アリス(不思議の国、鏡の国)
 白角  :(白の角を持つ)一角獣(鏡の国)
 江利ヵ島:えりか⇒elica⇒alice⇒アリス(不思議の国、鏡の国)

「あのイギリスの有名な孤島殺人」(p.23):アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」のこと。

「ようこそ『アリス・ミラー城』へ!
And Welcome queen's guests(そして女王のお客様に)
With thirty-times-three!(三の三十倍の歓迎を!)」
(p.27):
鏡の国のアリスでアリスが女王になった時のコーラス「And welcome Queen Alice with thirty-times-three!(そして女王アリスに三の三十倍の歓迎を!)」のもじり。

久生奈々(p.35):中井英夫「虚無への供物」の登場人物。

『ギリシャ棺の謎』(p.75):エラリー・クイーンの国名シリーズ第四作。

ある奇術師兼探偵小説家(p.89):泡坂妻夫のこと。

『黒死館』(p.91):小栗虫太郎「黒死館殺人事件」の舞台。

『流氷館』(p.91):島田荘司「斜め屋敷の犯罪」の舞台。

十戒(p.95):ノックスの十戒 - Wikipedia のこと。

『迷路館の殺人』と『Xの悲劇』(p.141):それぞれ綾辻行人、エラリー・クイーンの作品。どちらも同様の殺人方法が用いられている。

「(略)あの可愛そうな少女と仔鹿みたいにね。」(p.172):「鏡の国のアリス」の名なしの森でアリスと仔鹿は名前を失くす。

フレドリック・ブラウン(p.195):推理小説家。「不思議な国の殺人 (Night of the Jabberwock)」

エラリー・クイーンの短編はお好きですか?(p.242):「世界短編傑作集4」所収の「キ印ぞろいのお茶会の冒険」のことか?

「(略)人形殺しとはな。犯人は場所を間違えたんじゃないのか? ここに線路は走っちゃいないぞ」(p.335):高木彬光「人形はなぜ殺される」のこと。

『女王は大小にかかわらず、すべてのトラブルをただ一つの方法で解決するのを覚えておいでですか? "彼の首を刎ねよ!"』(p.361):「九尾の猫」でのエラリー・クイーンの台詞。

【城シリーズのゆるいつながり】

城シリーズは特に明言されていないが、ゆるいつながりがありそう。

切断機(p.18):ギロチン式⇒「『ギロチン城』殺人事件」との関連? さすがに強引すぎるか。

血で大きな七芒星が書かれていた(p.256):「『クロック城』殺人事件」、「『瑠璃城』殺人事件」にも七芒星が出てくる。

「(略)私の計画に賛同してくれている人間が世界中に十一人いるの。(略)」(p.446):「『クロック城』殺人事件」の十一人委員会と関係が?