台湾ひとり研究室:翻訳編「#47最終局面でやった確認作業の話。」
迷いに区切りを付ける
読む→訳す→読む→推敲する→指摘を受ける→読む→練り直す→読む→整える……
1冊の翻訳は、おおよそこんな流れになっています。読んでは直し、また読んでは直す、この繰り返しです。そしてこの直しは際限がありません。あとは「翻訳者がどこで終わりとするか」を決めるのみ。
直しながら(あ、この件は調べてなかった)という項目を調べ、修正を確定していきます。この段階で調べるのは、翻訳時に調べきれなかったものばかりです。最初に読んだ時には気にならなかったけれども、読んでいるうちに(これってどうなんだろう)という疑問が出てきて、調べてみると
!!!!!
となることがありました。うへえ、今ごろこんなことがわかるなんて!みたいな。原稿を整えていく作業は、以前は彫刻だといいましたが、なんていうか夏前の草刈りというか、ローラーをかけるというか、そんなイメージになってきています。仕上げだからかな。
最後の詰めは対面で。
そんなこんなを経て《大港的女兒》の翻訳作業も本当に最終段階になりました。先日は、それでも残っていた疑問について、直接、ネイティブチェッカーの詹さんにお目にかかって訊ねました(参照記事)。
「この指摘部分ですが『○○○○』だとどうですか?」
「『△△△△△△』みたいなことなんですよ」
「ああ、そういうことか!」
……こんなやりとりを何度も繰り返し、長らく抱えていた疑問をひとつずつ解消していきました。
実際、直訳だとどうしても意味が取れない、何が言いたいのかわからない部分というのがありました。完全に、私の持つ言葉の量を超えてしまっているんですよね。
自分が何語の言葉を持っているのか数えたことはありませんが、それを超える領域になるので、打つ手がなくなった感がある。手元の武器がなくなったときに、ハタと途方に暮れる。その領域の途方もなさは、あるいは二言語のあいだで四苦八苦している人にだけに伝わるものかもしれません。
ところが、そうやって悩んでいたことでも、対面でやりとりして「ここ」という的が見えると、ずっと引っかかっていた魚の骨が取れたような、そんなスッキリ感を得ることができました。
翻訳後の文字数を発表!
本書は本編とあとがきで390ページ、文字数にして約14万字ありました。
ついに昨日、ようやく訳稿すべてをひとつのファイルにまとめるところまできました。あ、本編と著者のあとがきだけで、訳者あとがきは先日、なんとなーく方向性を考えてみたものの、まだひと文字も書いていないのですけれども。
翻訳書の注釈は通常、著者の付けていた脚注、訳者として補足した訳注と2種類ありますが、それはまだ文字数に含めていません。Wordのコメントに残していますが、最終的に1本にまとめたところで文書内に通しで戻す作業をしていこうと考えています。
それで。ええ、コホン、ここまでの文字数を発表します。
約20万字でございました。まだ入れ替えがあるので「約」という言い方で恐縮ですが、結構な分量ですよね。最近の実用書、ビジネス書などは8〜10万字と聞くので、ええ、多いですよね。
時代設定としては80年という時間軸で、父と娘の二代記といっていい物語ですので、多くはなるよね、とは思っていましたが、こうなると訳者あとがきは長くなくてよさそうだな、と思っているところです。
それでも、まだ資料に当たらなきゃいけないところがある(!)ので、近々、図書館に行かねば、と思っているところです。本当に大詰めです。
勝手口から見た台湾の姿を、さまざまにお届けすべく活動しています。2023〜24年にかけては日本で刊行予定の翻訳作業が中心ですが、24年には同書の関連イベントを開催したいと考えています。応援団、サポーターとしてご協力いただけたらうれしいです。2023.8.15