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「映画かよ。」の解説かよ。 Ep48 バッド・ティーチャー|成長するキャラたち

(写真は全て駒谷揚さんから提供)

 3シーズン目に入っている、駒谷揚制作・監督によるYouTube短編映画シリーズ、「映画かよ。」。Ep48「バッドティーチャー」が配信されている。

Ep48「バッド・ティーチャー」

 映画脚本のゴーストライターである知里佳(稲葉胡桃)は、オリジナルのハイスクールものを書くため、生徒に化けて高校に潜入取材をしてるという。かつて映画教室の講師として知里佳に脚本のアドバイスをしたミノル(伊藤武雄)は、保護者面談での父親役を依頼されたが、知里佳は当日現れず、教師の柚月(田川恵美子)と二人きりで面談をすることに。何とかごまかそうとするミノルだが、柚月の教育者としての真摯な考えに感銘を受け、知里佳が実は高校生でないとばらしてしまう。知里佳の事情をおもんぱかって、潜入取材のことを秘密にしてくれるという。映画に詳しいミノルをすっかり信用した柚月は、教師を主人公にした小説を書いていて、ミノルに作品へのアドバイスを申し出る。ミノルはいつもと同様に、映画オタクの知識をフル稼働して、教師が登場する数々の映画を薦めるが、知里佳の話では、どうやら柚月は映画の影響を受け過ぎて学校でいろいろと問題を起こしているという…。

 新キャラ、柚月が登場。「映画かよ。」初のハイスクールものをテーマにしたエピソード。しかも、映画オタクにはキュンとくる、このジャンル定番の「潜入もの」の設定。

脚本のためには手段を選ばない知里佳は、豪快さが増した?
新キャラ、柚月先生を田川恵美子が好演。キャラ立ちしていて再登場もありそうな予感

成長するキャラたち

 Ep.12「スクール・オブ・ロック」で、映画教室に通う脚本家志望の高校生として初登場し、フィクションなのに「事実に基づいた話」と宣伝して、周囲を振り回した知里佳。Ep.23「リベリオン」では、才能があふれながらも、大人に強い不信感を抱いている謎の脚本家として再登場した。今はどうやら、ゴーストライターとして、誰もが知る有名作品を手掛けているらしい。その知里佳が、自分のオリジナル作品を書くために高校に潜入していると話すところから話が始まるのだが、「あれ? 知里佳って、そもそも高校生じゃなかたっけ?」と思い、駒谷監督に聞いたのだが、初登場のエピソードが2020年11月リリースだから、ほぼ3年が経っていると言われて、「え、はやっ!」とひとりごちし、時の流れのはやさと、シリーズがずいぶんと長くなってきたことをあらためて思った。

 駒谷監督によると、「『リベリオン』ではすでに高校生ではなかったし、あそこでちょっと道を踏み外した知里佳が、その後、ゴーストライターになったって感じね。いつまでも高校生をやらせるより、卒業した方がいいしね」とのこと。

 これまでも再登場キャラが変わっているというエピソードは確かにあった。シリーズが長くなればなるほど、登場人物が増え、彼らが変貌を遂げていくことで、面白さが加味されていくのが「映画かよ。」の魅力となっていると言えるだろう。

初登場から約3年。物語の中ではゴーストとはいえプロの脚本家となっている知里佳。月日が経つのははやい

 長く続いているとえいば、毎回、あの手この手で、いろいろなテーマに挑戦してきたことに感心する。自主制作という制約があるだけに、毎回ツイストを効かせて面白くするという「らしさ」も定着している。今回は、ハイスクールものだが、普通ならば、知里佳が高校に潜入した姿、柚月の起こす問題が描かれるところだが、「映画かよ。」は、起こっていることの裏側で起こっていること、しかも学校以外の場所での出来事を描き、学校内で起こっていることを見る人に想像させる「裏ハイスクールもの」とでも言うべき作り方をしているのが、いかにも「映画かよ。」らしい。

 「学校を出さずに、いかに先生ものをやるか、というのが『映画かよ。』のチャレンジ魂だと思うところもある。学校だけ出しても、生徒や先生も出したくなるだろうし、そうすると予算が無理だし。かと言って、このテーマは予算がないからダメだといって逃げたくないというか、意地もある」

 ただ、もともと1980年代のハイスクールもの映画にあがこれすぎて、高校生のときに周囲の困惑を押し切ってアメリカの高校に留学したことを知っているだけに、潤沢な予算を使って、どストレートなハイスクールものを撮ってほしいところではあるが…。

 そういえば、当初から、「映画かよ。」は、この作品を見た人が、できればアル・パチーノとか映画界のビッグネームが、自身も出演したいと考えたり、駒谷監督はじめ、キャストに興味を持って仕事を依頼するといったことも狙いとしてある。Ep.1のリリース、2020年3月2日から3年を経て、世界各地の映画祭で取り上げられ、数々の賞も受賞しているが、俳優たちには、広告映像のオファーや、「映画かよ。」を見た人が、キャスティングの際に「あの人は?」と提言して、まとまった話があるそうだ。一方、駒谷監督には、撮り方やプロットの相談はされるので「アピールにはなっている」そうだが、具体的な仕事のオファーはまだのようだ。ハリウッド超大作のハイスクールもの映画の監督依頼をお考えの大物プロデューサーがいらした、お早めに申し出てもらいたい。

 才能がありながらもゴーストライターとして活動する知里佳もそうなのだが、今回、知里佳を助けるために高校生の制服を着て学校に殴り込もうとするものの校門を突破できなかったアミ(森衣里)の姿に、思い通りのハイスクールもの映画を作りたいけれども叶わない悔しさを投影したのかと深読みしたが、どうやら違うらしい。

 シリーズを通じて、しっかり者のイメージがあったアミも、時間の経過とともに、キャラに変化が起き、熱血過ぎて暴走するキャラクターに変わってきている。つまり、主演の一人であるアミも成長を遂げているのだと、駒谷監督はいう。

 「『映画かよ。』のキャラはみんな成長している…、ミノル以外は(笑)」

シリーズ中、最も変化したのは、主演の一人で、いわずもがな駒谷監督の一部を投影しているアミかもしれない。シーズン3では主演の一人だったオトの役割も担うようになった。

「映画かよ。」のリファレンス

【「映画かよ。」公式YouTubeサイト

「映画かよ。」ウィキペディア

【「映画かよ。」note】

駒谷監督はこんな人↓

駒谷揚監督インタビュー(Danro)

「映画かよ。」に関するレビュー↓

トリッチさんによる
カナリアクロニクル」でのレビュー

Hasecchoさんによる
「映画かよ。批評家Hasecchoが斬る。」
YouTube「映画かよ。」のコミュニティーページで展開

おりょうSNKさんによる
ポッドキャスト「旦那さんとお前さん」

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