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楽しい横入り

少し前の話になるが、オミクロン株の猛威で、ブルックリンのある場所でのコロナのPCR検査の会場に長蛇の列ができいてた頃のこと。

開場1時間前から並び、入り口にたどり着くまで約2時間半。列は「PCR+ラピッド」と「PCRのみ」の二つ。自分が並んだ「PCR+ラピッド」は2ブロックにわたるかなり長い列になっていた。

入り口付近では、「PCR検査を受けに来た」と、列を無視して列を整える係に聞く人が5分ぐらいごとに現れる。そのたびに係は列の最後尾に並ぶように指示する。中には何も聞かず、しれっと中に入っていこうとする人、列に紛れ込むチャンスをうかがっている人もいる。もちろん、そのたびに係に注意されている。

若い二人組がいた。しれっと会場に入ろうとして係にとめられる。数分後には列の中で少し間隔があいている場所に移動し、友達を探している様子で電話をしている。それがいかにも紛れ込もうという作戦に見えた。ちょうど係がいない。わざわざ行って文句を言おうと思ったが、アメリカの場合は、ほとんどそういうインチキを許さない。すぐ近くにいた女性が彼らに向かって何かを言うと、彼らはしばしうろうろしたあと姿を消した。

旅行で行ったイタリア・ナポリでSSCナポリの試合を観るために並んでいたときのこと。僕らと前にいる女性3人組の間に、何かを探している体で横入りしてきた男性がいた。僕はむっとして肩をたたき英語で、「なにやってんだよ」と鋭めに言うと、男性は半笑いの顔で去っていった。

それ以後も、列の前方にいる女性グループに話しかけて仲良くなって列に紛れ込もうとする男性二人組、その前の家族の周りをうろうろし、さも家族ぐるみのお付き合いをしているかのような顔をして、同化するお父さんと子供もいた。至るところで横入りが横行していた。まわりは住民ばかりだと思うが、それをとがめる人もいない。中は指定席だから、少し入場が遅れぐらいで何も支障はないということなのだろうか。

最初はもちろんイラついたが、見ているうちに、最初からそこにいる顔をする芸当のうまさに笑えてきてしまった。

ブルックリン。列につかず離れず、ふらふらして、横入りしようとしている女性がいた。係が「ちょっと、横入りはだめだよ」と注意すると、「ダンキンドーナッツにコーヒー買いに行くか考えているんだけど」と反論。コーヒーを買いに行こうとする彼女と、時間がないから引き止める友人が揉めている様子がスキを見て横入りしているように見えたということだろう。

係が「ああ、ごめん。じゃあ、場所を見ててあげるから、僕のドーナッツも頼んでいいかな」と冗談を返すと、寒い中何時間も待ってピリピリした列に並ぶ人たちから笑い声があがり、空気がやわらいだ。

場所が違えば横入り事情は違うものだが、何事もユーモアである程度は解決できる。







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